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JDreamIIIの紹介とサービス連携
長谷川 均
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2014 年 57 巻 1 号 p. 22-28

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著者抄録

株式会社ジー・サーチは2013年4月からJDreamIII科学技術文献情報データベースサービスを開始した。JDreamIIIは独立行政法人科学技術振興機構より提供されていたJDreamIIの後継サービスである。サービスの移管にあたり,利用者の資産を継承し,確実にサービスを移行できることを最優先に開発コンセプトをまとめた。既存の利用者向けにJDream IIとの高い互換性をもち,詳細な条件を設定できる検索インターフェースと,エンドユーザー向けにインターネットの検索エンジンを意識したシンプルな検索インターフェースを提供している。また,当社独自の機能として,JDreamを補完する他のサービスとの連携機能を搭載するなどの工夫を行っている。サービス開始当初,搭載を見送った機能を含め,検索機能,管理機能,サービス連携機能を強化したJDreamIII R2.0の提供を2013年11月5日より開始した。

1. はじめに

JDreamIII(ジェイドリームスリー)は2013年4月1日より株式会社ジー・サーチが提供を開始した日本最大級の科学技術文献情報データベースサービスである1)。ご存じの方も多いと思うが,独立行政法人科学技術振興機構(JST)から提供されていたJDreamIIの後継サービスとなる。JDreamIIIの開発と運用にあたり,JSTと緊密な連絡を取りながら進めた結果,大きな混乱もなくJDreamIIの利用者を移行することができ,現在に至っている。

本稿ではJDreamIIIの開発経緯と機能強化について紹介する。

2. JDream移管の経緯

当社は2012年4月にJSTとの間で,文献情報提供事業に係る提供業務を当社に移管する契約を締結した2)。移管の経緯は次のとおりである。

2010年4月26日に実施された政府の事業仕分けの際,JSTが対象機関となり,JDreamサービスを含む「科学技術文献情報提供事業」は「事業の実施は民間の判断に任せる」との判断が下された。そして,同年12月に閣議決定された「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」では,「科学技術文献情報提供事業」については,「2011年度中に引受け手となる事業者の選定を開始し、2012年度中に民間事業者によるサービスを実施する」ことが記載された3)。これを踏まえ実施された「科学技術文献情報提供事業に係る提供業務の事業者公募」の結果,当社が優先交渉権者として選定され,事業契約を締結した。なお,移管対象は情報提供サービスの部分であり,データそのものは引き続きJSTが作成しており,データの継続性と品質が維持されている。

3. JDreamIIIの開発コンセプト

JDreamIIIの開発にあたり,最も困難だったのは開発期間が限られていたことであった。移管が決定してから,実際のサービス提供までに残されていた期間は1年に満たなかった。限られた時間の中で間違いなく移行するため,利用者の資産を継承することを最優先に開発のコンセプトをまとめた。ここでいう資産の継承とは,具体的にはJDreamIIでご利用いただいていた保存式とSDI(Selective Dissemination of Information,予約提供サービス)式がJDreamIIIで利用できることを指すが,それにとどまらず,JDreamIIに関する利用者のノウハウがそのままJDreamIII検索サービスでも活用できることであり,JDreamIIとの高い互換性が必須であると考えた。

その一方で,初めて利用する人でも直感的に操作できるサービスでないと,利用の裾野が広がらないことも事実である。当社は1991年から「G-Searchデータベース事業」を開始し,新聞・雑誌記事,企業情報を中心としたG-Searchデータベースを提供してきた。さらに2000年より海外のDialogなども扱っている。コンシューマー向けサービスと専門家向けサービスの両方を取り扱っていたため,それぞれの利用者がサービスに求める機能に違いがあり,それに適するインターフェースは大きく異なると考えていた。そのため,JDreamIIIを提供するにあたり,どのようなインターフェースにするのかは社内でも意見が分かれた。検討を重ねた結果,既存ユーザー向けにはJDreamIIと高い互換性をもつ「アドバンスドサーチ」,エンドユーザー向けにはGoogleライクな「クイックサーチ」を用意することとなった。

3.1 高精度な検索が可能なアドバンスドサーチ

JDreamIIでは2つの検索モード(シンプルモードおよびコマンドモード)が用意されていたが,JDreamIIIではこの2つを統合し,「アドバンスドサーチ」として提供することになった(1参照)。

図1 JDreamIII アドバンスドサーチ

アドバンスドサーチには,2つの入力ボックスが用意されている。画面上部のコマンド入力ボックスには直接検索式を入力する。JDreamIIで利用できる論理演算子,近接演算子,フィールドコードをサポートしており,検索結果は集合として保存される。JDreamIIと高い互換性を維持しているため,コマンドモードの利用者にとっても違和感なく検索を進めることができる。

一方,コマンド入力ボックスの下には,検索キーワードとそれに組み合わせるフィールドコードをプルダウンメニューから選択する「追加条件入力ボックス」を用意した。これはJDreamIIのシンプルモードを意識したものである。コマンド入力ボックスと追加条件入力ボックスはそれぞれ独立して利用できる。どちらを使っても検索可能であるし,検索結果は集合として保存される。そのため,どちらの検索ボックスを使うかは,検索中に切り替えることもできるし,両方のボックスにキーワードを入力した場合にはAND検索となる。いつもコマンドで利用している人でも,普段使わないフィールドを検索するときは,追加条件入力ボックスでプルダウンからフィールド選択する,といった利用方法が考えられる。

3.2 エンドユーザー検索を強力に支援するクイックサーチ

クイックサーチは,JDreamIIIで新たに導入した検索インターフェースで,初めての利用者でも直感的に操作できることを目指した。Googleに代表されるインターネットの検索エンジンを意識した,入力ボックスが1つ用意されているだけのシンプルな構成である(2参照)。

図2 JDreamIII クイックサーチ

利用者層を考慮し,「ファイル」や「検索フィールド」を意識させないようにデザインした。検索対象分野はファイルではなく,技術分野をプルダウンメニューから選択する。また,クイックサーチでは,レコード全体を対象とした検索が行われるため,利用者はフィールドコードを意識しなくてよい。

一方,このような検索インターフェースでは,ありふれた用語を入力するとヒット件数が膨大になってしまう。そこで,クイックサーチでは[絞り込み条件]ボタンを用意し,発行年,原文献の言語,抄録の有無などの条件を指定して絞り込む機能を追加している。

このように利用者層が異なることを前提とした2系統の検索インターフェースを用意したが,実際にサービスを開始すると検索ファイル(JSTPlus,JMEDPlus)によって利用方法がかなり異なることがわかった。

1は2013年4~11月までのアドバンスドサーチ,クイックサーチの検索回数の割合であるが,JSTPlusではクイックサーチの利用が多く,JMEDPlusでは圧倒的にアドバンスドサーチの利用が多い。この結果からJSTPlusでは研究者・技術者自身による検索が多く,JMEDPlusでは検索専門家がコマンドやフィールドコードを駆使した検索を行っていることが推測できる。

表1 検索ファイル別検索インターフェース利用比率
検索ファイル アドバンスドサーチ クイックサーチ
JSTPlus 44.9% 55.1%
JMEDPlus 86.7% 13.3%

4. JDreamIII R2.0登場

JDreamIIIの開発は非常に短納期の開発であったにもかかわらず,幸いなことに大きな混乱もなく,JDreamIIの利用者を引き継ぐことができた。その一方,搭載を見送らざるをえなかった機能も多く,サービス開始以来,利用者より多数の改善・機能追加のご要望をいただいた。

比較的開発規模が小さいものについては毎月のメンテナンスで対応を行っており,その中には全国で開催したJDreamIII発表説明会等で多数のご要望をいただいた「拗音(ようおん)・促音の同一視検索(例:フィルムとフイルム)」や「Internet Explorer 10への対応」が含まれる。これまでの機能改善履歴についてはWebサイト(http://jdream3.com/jd_room/kaizen/)でお知らせしている。

搭載を見送った機能を含め,利用者の要望をサービスに反映するために,大規模な改修を行い,2013年11月5日よりJDreamIII R2.0(リリース2.0,以下R2.0と記載)として提供を開始した。R2.0の開発にあたり重点をおいたのは以下の3点である。

  • •   検索機能の強化(検索ツールとしての完成度を上げる)
  • •   管理機能の強化(管理者の負担を軽減する)
  • •   サービス連携の強化(ジー・サーチならではの付加価値を提供する)

R2.0で追加・変更された機能の一覧を表にまとめたが,特に重要なものについて紹介したい(2参照)。

表2 JDreamⅢ R2.0の変更点
対象サービス 概要 内容
検索機能 クイックサーチにダウンロード機能追加 クイックサーチおよび科学技術文献速報Webにダウンロード機能を追加
クイックサーチのタイトル一覧表示項目設定 クイックサーチのタイトル一覧に表示する項目を管理画面で設定可能
ダウンロード形式追加 ダウンロード形式にWord形式,PDF形式を追加
ダウンロードファイル名変更 ダウンロードファイル名を“JDDL+14桁数字”に変更。数字部分はダウンロード実施時刻(年月日時分秒)となる
追加条件ボックスのプルダウンメニュー追加 ・追加条件入力ボックスを3行に拡張し,入力ボックス間の演算(AND,OR,NOT)の指定機能を追加
・名称を「フィールド選択入力」に変更
検索履歴の表示エリア拡張 アドバンスドサーチの検索履歴表示エリアを拡張し,視認性を向上
回答表示条件入力ボックス新設 検索画面に回答表示条件入力ボックスを新設
集合番号3桁化 集合番号の上限を999に拡張(申し込みにより個別に設定)
ログアウト時の料金表示 検索終了(ログアウト・ファイル選択に戻る)時に料金表示を行うように変更
管理機能 複製・再配布/ネットワーク利用申込機能 ・複製・再配布/ネットワーク利用申込機能を追加
・SDI設定時,回答表示時に同時に申込む方法と管理画面から後日申し込む方法が利用可能
クイックサーチの検索分野初期値設定 環境設定にクイックサーチの検索分野初期値を追加
検索IDごとの環境設定 1つの管理者ID配下に複数の検索IDが紐付いている場合,検索IDごとの環境設定が可能
サービス連携 連携サービス追加 翻訳サービス連携(2013年11月),ProQuest Dialog(2014年1月),Mobile Library(2014年2月)

4.1 検索機能の強化

主にアドバンスドサーチを中心に強化を行っている。サービス開始以来,JDreamIIとの比較で,多くの方に指摘いただいた部分を中心に,検索ツールとしての使い勝手向上を目指したものである。追加条件入力ボックスの拡張と表示条件入力ボックスの新設により外観が変わっているが,コマンドボックス位置などの基本的なレイアウトの変更はない。また,新機能も従来の選択肢に追加する形にしており,操作手順の変更を強いられることがないよう考慮している(3参照)。

図3 JDreamIII R2.0 アドバンスドサーチ

4.1.1 追加条件入力ボックスの拡張と名称変更

追加条件入力ボックスを3行に拡張し,行間の論理演算(AND,OR,NOT)も指定可能にした。個々の入力ボックス内での論理演算も,直接演算子を入力することにより可能である。この強化により,追加条件入力ボックスだけで複雑な検索が可能になったため,名称も「フィールド選択入力」と改めた。

4.1.2 検索履歴表示エリアの視認性向上

検索表示エリアについては,表示行数を10行に拡張するとともに,長い式は1行に収まるようにカットして表示するように改めた。従来は,長い式を折り返して表示していたため,表示できるL番号がかなり少なくなってしまうことがあったが,今回の変更により,視認性が大幅に向上した。検索履歴全体の確認は,「履歴表示」リンクをクリックし,新たに開いた画面に完全な検索履歴を表示する点は従来と同じである。

4.1.3 回答表示条件入力ボックスを新設

こちらも利用者からの要望が多かった項目で,回答表示を行う際,直接表示条件を入力できるボックスを新設した。検索結果を表示する際,画面を移動する手間を省くことができる。もちろん,L番号をクリックし,表示条件指定画面へ移動する操作方法も引き続き利用可能である。

4.1.4 ダウンロード機能の強化

ダウンロード形式にWord形式とPDF形式を追加した。両形式ともファイル形式の特性を活かし,ハイライトおよびリンクに対応している。全文へのリンクが提供されている場合,Word/PDFファイル上でリンクをクリックして全文へアクセスすることができる。また,改ページオプションを利用するとレコードごとに改ページが挿入されるため,一件一葉で印刷することができる。さらにクイックサーチにもダウンロード機能を追加した。利用できるファイル形式はアドバンスドサーチと同様である。

4.2 管理機能の強化

管理機能を強化し,検索IDごとの環境設定機能と複製・再配布/ネットワーク利用のオンライン申込機能を追加した。

4.2.1 検索IDごとの環境設定機能

従来,同じ管理者ID配下の検索IDは,すべて同じ利用環境に設定されていたが,R2.0では検索IDごとに環境設定が可能になった。そのため,検索IDごとにデータベースの初期値(接続時に自動的に選択される検索ファイル)や複写連携の利用可否を設定することができる。たとえば,機関内でJDreamIIIを開放している場合,利用者に開放するIDは複写機能をオフにすることが可能である。

4.2.2 複製・再配布/ネットワーク利用のオンライン申し込み機能

JDreamIIIから出力したレコードをコピーし,社内で配布したり,サーバーに保存し,複数人で利用する場合,複製・再配布/ネットワーク利用の申し込みが必要である。従来,所定の申込用紙で利用いただいていたが,紙ベースでのやりとりの煩わしさがあった。今回,オンラインで申し込むことが可能になり,手軽に申し込みができるようになった。申し込み方法は2通りあり,1つは,回答表示やユーザーSDIの設定の際,同時に申し込む方法である。回答表示条件を設定する画面に,複製・再配布/ネットワーク利用オプションの項目が追加されているので,必要部数(ネットワーク利用の場合は利用人数)を指定する。たとえば,ユーザーSDIを特定のグループ全員に配布したいような場合などを想定している(4参照)。

図4 複製・再配布/ネットワーク利用申し込み(同時申し込み)

2つめは,管理者メニューから,ファイル,件数,部数を指定して,後日,申し込む方法(現行の申込用紙を利用する方法に相当)である(5参照)。

回答表示やSDIの結果から必要なものだけ選び,共有することができる。実際に共有したいレコード数分だけを申し込むことができるので便利である。JDreamIIIから出力した回答を社内で配布・共有する場合,このオプションを活用していただければ幸いである。

図5 複製・再配布/ネットワーク利用申し込み(後日申し込み)

4.3 サービス連携の強化

JDreamIIIの検索IDで,当社が提供する他のサービスをシームレスに利用する「ID連携機能」は当社ならではの機能であり,サービス開始と同時に「G-Search」データベースサービスとの連携を提供している。今回連携先として海外のデータベースサービスである「ProQuest Dialog」とドキュメントデリバリーサービスである「Mobile Library」,そして翻訳サービスを追加した。いずれもJDreamIIIを補完するサービスであり,IDの管理も簡単になるので管理者の負担も軽減される。

JDreamIIIの検索画面に連携先へのリンクが用意されているので,連携サービスオプションが設定されていれば,認証画面を経ることなく,連携先サービスへ移動することができる。ProQuest Dialog連携の実際の例を示す(6参照)。

図6 ProQuest Dialog連携

5. 今後の機能強化について

R2.0によりサービス連携先を追加し,JDreamIIIの検索IDで国内外のサービスが利用可能になったが,さらに密な連携を目指した強化を予定している。サービス連携を謳(うた)いながらも完成度としてはID「連係」の段階であり,本来,われわれが目指している「連携」に近づけていきたいと考えている。今後もJSTと緊密に連携し,継続的に利用者のニーズを取り入れて,機能追加や利便性の向上に努めていく所存である。

参考文献
 
© 2014 Japan Science and Technology Agency
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