情報管理
Online ISSN : 1347-1597
Print ISSN : 0021-7298
ISSN-L : 0021-7298
集会報告
第21回情報活動研究会 「使いこなそう!国立国会図書館のウェブコンテンツ」
中村 文胤
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2014 年 57 巻 1 号 p. 55-56

詳細

  • 日程   2013年11月8日(金)18:30~20:00
  • 場所   田辺三菱製薬株式会社 本社ビル
  • 主催   情報活動研究会(INFOMATES)
  • 後援   一般社団法人情報科学技術協会(INFOSTA) 独立行政法人科学技術振興機構(JST)情報企画部 情報知識学会関西部会
  • 協力   株式会社サンメディア

  • 話題提供者:水野 翔彦 氏 国立国会図書館関西館 電子図書館課
  • 参加者数:28名(運営委員9名含む)

第21回研究会は,国立国会図書館(以下,NDL)のウェブコンテンツを取り上げた。「リサーチ・ナビ」や「NDL-OPAC」,「レファレンス協同データベース」は頻繁に利用するものの,新しいサービスが提供される中,全体を把握するには至っていない。情報専門家としてもっとNDLのサービスを知り活用していこうという趣旨である。NDL関西館の水野翔彦氏を講師に迎え,NDLが提供する電子情報について,俯瞰的な説明,個別のウェブサービスの違い・使いこなしについて講演していただいた。講師の水野氏はPORTA(デジタル情報の検索サイト),Dnavi(データベースのリンク集)をはじめとする電子図書館事業に2010年から携っておられる。

(1)NDLが提供する電子情報・ウェブサービスの俯瞰的な説明

NDLが提供する電子情報は,NDLが作成した固有のデータベース等と外部機関の情報があり,NDL固有の情報は,調べ方案内・リンク集のような参考情報,二次情報である目録情報,所蔵資料を電子化した一次情報データからなる。NDLが提供するウェブサービスは多岐にわたるが,「調べる」「探す」「使う」の3つの切り口で理解すれば使いやすい。そして,前述のデータベースを使いこなすコツは,①そのデータベースの目的が「調べる」「探す」「使う」のどれか,②各コンテンツの中身は何か,③データベース同士のデータの流れ・リンク関係はどうなっているか,がポイントとなる。2012年から正式公開されたNDLサーチはこの3つのカテゴリーに加え,外部機関のウェブサービス情報も検索できるもので,APIも公開されており外部サイトからも利用できる。

(2)個別のウェブサービスの紹介

「調べる」には,リサーチ・ナビ,レファレンス協同データベース(以下,レファ協),国会関連のデータベースが含まれる。リサーチ・ナビは調べ方案内など「何をどう調べたらいいか」のヒントを提供する窓口として利用する。レファ協は,全国の図書館の調べもの相談事例や調査の手掛かりを収録している。レファ協は個別に具体的な事例についての情報を集積する点で,リサーチ・ナビと異なる。国会関連のデータベースは,帝国議会から現在に至るまでの会議録,法令の改廃履歴・審議過程の情報を提供している。

「探す」には,NDL-OPAC,Web NDL Authorities(以下,NDLA)が含まれる。NDL-OPACはNDL所蔵資料の検索・申込みのためのシステムであり,点字・録音図書の全国総合目録も収録している。NDLAは,NDLが維持管理する典拠データ(同義名の集積の根拠)を検索・提供するシステムで,一種の人名辞書としても利用できる。

「使う」には,NDLデジタル化資料,インターネット資料収集保存事業(WARP),電子展示会が含まれる。

NDLデジタル化資料は,NDLのデジタルアーカイブで,所蔵資料をデジタル化したものに加え,もととなった資料が外部にあるものも収録されている。このデジタル化資料を種類ごとに公開するサービスに,インターネットでも閲覧可能な資料だけを公開する近代デジタルライブラリーや,歴史的音源を公開する歴史的音源(れきおん)がある。資料の総数は約226万点に及び,うち約47万点がインターネットでも公開されている。歴史的音源は公共図書館へも配信されており2013年11月現在125館で利用できる。

WARPは,インターネット上の電子雑誌・公共機関等のウェブサイトの情報を収集保存して提供する。日常生活にインターネットが不可欠なものとなる中,インターネット上でしか流通しない情報が増加する一方で,しばしばインターネット上の情報は保存されない。その点,WARPは社会保険庁のような廃止された政府機関や,もともと設置期間が限定されていた国会の事故調査委員会などのウェブサイトのバックアップとなりうる。公的機関については原則すべてのウェブサイトを収集し,民間については承諾が得られたものを収集している。収集頻度は対象によって月1回から年1回と異なり,更新ごとに自動で行われるわけではないことに注意する必要がある。電子展示会は,わかりやすい解説を加えてNDL所蔵のユニークな資料を紹介するサービスで,有名人の写真をコレクションする「近代日本人の肖像」などがあり,各種ウェブサイトや出版物などに利用されている。

(3)おわりに

講演で紹介された「絶版等資料」の公共図書館等への配信が2014年1月21日から開始された。3月現在,NDLからデジタル画像として送信された約131万点に及ぶ資料が,全国58館の公共図書館・大学図書館等で閲覧等できるようになった。電子化のメリットをフルに活用した新しいサービスが,またひとつスタートした。

講演終了後,数多くの質問・意見・要望が会場からあがったが,そのひとつひとつに丁寧に応対される水野氏の姿勢は,まさに利用者の意見を前向きに取り入れ,常にサービスを改善していくNDLの取り組みそのものと感じられた。NDLのサービスの発展がますます楽しみになった。

(INFOMATES運営委員 中村 文胤)

 
© 2014 Japan Science and Technology Agency
feedback
Top