商用オンラインデータベースの発展に伴い,サーチャー同士の相互研究のため1979年に日本オンライン情報検索ユーザー会(Online User Group,以下,OUG)が発足した1),2)。OUGはその後,(一社)情報科学技術協会へ吸収・再編を経て,現在は化学分科会,インターネット/ビジネス分科会,特許分科会,ライフサイエンス分科会の計4分科会が活動している。
ライフサイエンス分科会(以下,本会)は,ライフサイエンス系のデータベースを取り扱う情報検索技術者(以下,サーチャー)の知識・技術の研鑽(けんさん)を主たる目的として活動する研究会である。参加者の所属は,専門図書館担当者,製薬企業の情報調査部門やデータベース製作/提供会社,調査代行業者などさまざまである。
本会は,全員参加を方針としており,メンバー全員が何らかの役割をもって参加している。主査,連絡係,記録係が連絡や管理業務を行う。企画は,3グループに分かれて参加者(メンバー)全員で企画係を担当している。こうすることでテーマ選定もバラエティーに富んだものとなり,より活発な活動となっている。
本会は8月と繁忙期を除き,原則毎月第3木曜日の14時から17時に開催している。活動内容を分類すると講演,見学会,検索演習の大きく3つに分けられる。
講演では,ベンダーの担当者の方に新製品やバージョンアップ情報を説明していただいたり,メンバーの関心が高いテーマ(たとえば,著作権など)について講師を招いて講義していただいている。一般的な説明会や講演では話されないサーチャー向けの専門的な話を聞くことができ,かつ,直接質問できるのがとてもよい点である(図1)。
見学会は,都内近郊の情報機関や専門図書館を訪問し,館内の見学や,利用者向けサービス,利用可能データベースやシステムを紹介いただいたりしている。直接見たり,聞いたり,触れたりと刺激を受ける機会となっている。
検索演習はメンバーが日々の業務で担当した難問や検索技術者検定(旧情報検索能力試験)1級の問題が事前に出題され,検索結果や解答を各自準備し,例会(図2)で順番に発表するという,サーチャーの研究会らしい内容である。準備は大変であるが,ベテラン/初心者の区別がなく同じ問題に取り組むので,知らなかった知識やテクニックを学ぶことができたり,新しい発想に気づかされたりと得るものも大きい。
このほかにも,日ごろの業務で疑問に感じたことなどをメンバーに投げかけて意見を聞くこともでき,情報交換の場としても有益である。
表1は,2013年4月以降の例会の開催内容である。各回の詳細や過去の内容は,Webサイトに議事録が掲載されているので,ぜひご覧いただきたい3)。
会期 | 回数 | 内容 |
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2013年4月 | 311 | 印刷博物館見学 |
2013年5月 | 312 | JDreamIII |
2013年6月 | 313 | STNライフサイエンス系データベースの強化 |
2013年7月 | 314 | NBDCのサービス紹介(昨年度からの変更点を中心に) 「ライフサイエンス新着論文レビュー」「ライフサイエンス領域融合レビュー」の紹介 「Allie」「OReFiL」「TogoDoc Suite」「inMeXes」の紹介 |
2013年9月 | 315 | 著作権について |
2013年10月 | 316 | SLA2013トピックス |
Webサイトのリンク集改修 | ||
2013年11月 | 317 | 剽窃(盗用)の現状と問題解決-Crossrefで採用されたCrosscheckを中心としたiThenticateの紹介 |
リンク集の更新 | ||
2013年12月 | 318 | 検索演習/リンク集の見直し/情報交換(PubMed,その他,ライフサイエンス関連サイトのアップデート) |
2014年1月 | 319 | 病名と対象疾患照合DB,webAPIについて,JAPIC図書館見学 |
2014年2月 | 320 | Wikipediaについて |
2014年3月 | 321 | ProQuest Dialog |
私が本会に参加したきっかけは,上司に「勉強してきなさい」と,背中を押してもらったことである。10年ほど前は,まだオンラインデータベースが主流で,操作も独自の規則(コマンド)がありエンド・ユーザー向きではなかった。私は当時,情報検索の知識として情報検索技術者2級の資格はもっていたが,比較的簡単な検索ばかりで,調査というよりユーザーの代わりに検索しているようなことが多かった。依頼人からのヒアリングができない状況だったため,細かい検索より大きな概念の検索をすることが多く,検索結果をそのまま提供し,文献の選択は依頼者に任せていた。データベースの知識もベンダーが行うセミナーなどで得ている程度で偏っていたのではないかと思う。また業務も情報検索が専門ではなく,ほかの業務もあるため,片手間な感が拭えず,技術がまったく向上していなかった。そんな状況の私が,専門的な検索を行っている人たちの勉強会に参加しても「果たしてついていけるだろうか?」という不安があった。
いざ参加してみると製薬会社のサーチャーやベンダーの方ばかりで,レベルの高さを感じた。最初は見当違いなことを言ってしまいそうでなかなか質問もできなかったが,だんだん雰囲気にも慣れ,打ち解けるうちに質問や発言もできるようになった。その後,2009年10月に主査になり,現在に至っている。
データベースが発達・普及し,通信はモデムからインターネットへ,検索システムは,専用のアグリゲーターを使わなくてもできるようになった。検索業務は,サーチャーという専門家の手を頼らず,エンド・ユーザー自身で行えるようになった。そうなれば,私たちの業務は今までのように“ただ検索するだけ”では通用しない。調査結果を分析し,依頼者へ報告やアドバイスをすることや,さまざまな形態のデータベースから最適なものを選択するための知識も必要となる。そういうことが必要だと思うようになったのも,この会に参加したからだと思う。
自分に足りないもの,必要なものがわかるようになる,それだけでも進歩である。さらに素晴らしいスキルをもった仲間からアドバイスをもらったり,事例を聞いたりすることは自身の業務に役立ち,また参考にもなる。本会への参加と業務の経験,その積み重ねで私のスキルは多少なりとも向上したと思っている。
また参加させてくれる所属組織の方々にも大変感謝している。すぐに成果が出るものではないので,今後も長い目でみて応援していただければ幸いである。
自分自身は,サーチャーとしては未熟で発展途上であるが,よりよいサービスを提供できる優秀なサーチャーを目指して,これからも本会の皆さんと研鑽を積んでいきたい。
最後に本稿の執筆にあたって,ご協力いただいた方々にこの場を借りて深く感謝する次第である。
西内 史(にしうち ふみ)
日本薬学図書館協議会個人会員,(一社)情報科学技術協会OUGライフサイエンス分科会主査。
鳥居薬品株式会社研究所入社。研究所の図書室管理から1999年本社へ異動し,検索業務や著作権処理業務などに携わるようになった。