最近,30年後の未来が頻繁に取り上げられています。2月12日発行の『R25』に掲載された石田衣良氏「空は、今日も、青いか?」では,「技術的特異点の向こう側」と題して,30年後を話題にしています。難問を一緒に考えてくれる相棒として人工知能に期待する一方で,労働形態に大変革が起こる可能性にも触れています。
1月3日から2月8日に全5回で放送されたNHKスペシャル『NEXT WORLD 私たちの未来』をご覧になった方も多いかと思います。「技術的特異点=シンギュラリティ(singularity)」すなわち,「汎用人工知能が実現し,その知能が人間を超える時点」以降の世界を描いた番組でした。2045年問題とも呼ばれるシンギュラリティは,いまや現実的な問題として注目を集めています。情報処理学会『情報処理』1月号は,「人類とICTの未来:シンギュラリティまで30年?」の特集を組んでいます。
2045年なのかどうかはともかく,遅くとも今世紀中に人工知能が人間を超えることは確実のようです。当然,社会構造に大きな影響が出るでしょう。雇用の問題は深刻です。人間は何をして,どう生きていくのかという根源的な問題を突き付けられます。
山口高平教授(慶應義塾大学,人工知能学会前会長)は,「サンフランシスコの病院では、忙しくて最新手術事例を調べられない臨床医に代わって医学論文のデータベースを意味リンクで調べる『医療Watson』が活用されています。このように、ただ何かを調べるだけの職業は今後なくなっていくでしょう」(『エンジニアtype』,2014年10月)と述べています。情報に関連した職業に就く者として,人間にしかできないことは何なのか考えさせられます。
松原仁教授(公立はこだて未来大学)は,人工知能学会会長就任挨拶で「人工知能の発展は人間の敵ではなく必ずや人間のためになるはず」と述べています。前向きに考えたいものです。
連載「インフォプロによるビジネス調査―成功のカギと役立つコンテンツ」は今号で終了します。ご愛読ありがとうございました。(KM)