情報管理
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座談会
3i研究会「情報を力に変えるワークショップ」(後編) メンバーが語るその活動と魅力
伏見 祥子本田 瑞穂大久保 武利山中 とも子真銅 解子中村 栄
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2014 年 57 巻 4 号 p. 251-256

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本記事は,2014年3月6日(木),科学技術振興機構東京本部で行った座談会を収録し,弊誌編集事務局で編集したものである。前編は『情報管理』2014年6月号に掲載した。

インフォプロに求められるもの

中村:ここからは少し観点を変えた話に移りたいと思います。現在この研究会に参加して,情報調査,解析にどっぷり漬かっていただいていると思いますが,インフォプロの皆さんは,このような活動から何を得て,どういう方向に向かっていきたいと思っているのかをお聞きしたいと思います。

「サーチャー」という言葉がありますが,最近では「インフォプロ」というような言葉も出てきて,われわれに求められるものも随分変わってきていると感じています。そのあたりのご意見を聞かせていただければと思います。今回,この会に参加された動機も,皆さんに求められているものの表れだと思うのですがいかがでしょうか。

本田:「インフォプロって何ぞや」というお題は「私はどうなりたいんだろう」と置き換えて考えざるをえないのですが,実際には「会社が儲(もう)かるにはどうしたらよいのか」を調査や知財を通じて提供していきたいと考えています。そこから先となるとアイデアが出てこないのですが。

基本的に調査に関する高い専門性は求められていますが,「問われていることに確実に答えていく」ことの積み重ねが重要で,信頼されるインフォプロはそれをベースにしていくものなのかなと思っています。そのうえで研究者や事業部の方,知財部員,調査の担当者の方々の信頼をもとに活発にコミュニケーションがとれる形にすると,融合した素晴らしいアウトプットができるのではと思っています。

これまで調査といえば,言われたことをそのまま返すような一方通行のイメージがありました。しかし,この3i研究会に参加したことで,複雑に人と人が絡みあい,何かを成しえていくような感じをもちました。そういうことが実現できる人がインフォプロかなと。抽象的ですが自分の仕事に置き換えると,そういうことができる人を育てるとか,仕組みを提供するとか,そういうところなのかなと思っています。すみません,ちょっと漠然としていて。ずっとインフォプロって何だろうと考えながらこの場に来たのですけれども,言葉にするとなかなか難しいですね。

中村:議論のきっかけとなるようなよいご意見だったと思います。それでは伏見さんは,いかがですか。

伏見:私も「インフォプロに求められるもの」に対して,どう答えてよいのか悩みました。Aグループで活動している中で,サブリーダーの方が,まるでインフォプロのロールモデルのような,とても素敵な方で彼女を目指そうかなと思っています。

中村:目標ができたということですか。

伏見:彼女の素晴らしいところがインフォプロに求められる要素なのかなと思いました。

中村:具体的に,それはどんなところですか。

伏見:スキル面でいうと,さまざまな情報の調査とか活用の経験もおありで,どこからどのようなデータが取得できるのか,いわゆるサーチャーとしてのスキルの基本を知っていて,さらに財務データも読みこなせる,そしてプレゼンの見せ方もうまい。それから先ほど本田さんも言われたように,インフォプロはいろいろな方とのコミュニケーションも必要になってくると思うのですが非常にいいタイミングで「これをやっておいたら」と言ったり,問い合わせを出したりといったコミュニケーションができる。

中村:具体的な話が出ましたね。そのあたりで何か追加の意見はありませんか,山中さん。

山中:今はインターネットが普及し,データベースもエンドユーザーにとって使いやすくなっており,誰でもある程度は情報を簡単に収集することができる時代になってきました。以前は,情報検索はサーチャーに依頼して,そしてサーチャーは検索するだけでよかったのですが,時代が変わり情報環境の変化とともに情報担当者の業務も進化しなければなりません。中村さんもおっしゃったように,今は大量のデータを使って分析できるので,Webにもマップ例が溢れています。それらを所長クラスが見ると,マップを描けば次に進むべき場所が見える,と錯覚してしまう気がします。

伏見氏と本田氏

中村:過度な期待ですよね。

山中:そうですね。ただ単にマップソフトを使って機械的に解析を行っても「あ,そう」と冷めた感じで興味をもってはもらえない。魅力的な解析を行うには,特許,文献だけに偏ることなく目的に合わせた独自の情報を付加して組み合わせることで,活用できる情報の価値が出てくるのではないかと思います。

本田:10年前や20年前と今とでは,情報の量,質,あり方がごっそり変わってしまいました。昔は,検索ツールって限られたものだけで情報量も少なく,言われたことを言われたとおりに「はい,どうぞ」と提出すればよかったのですが,現在は,以前の100倍や1,000倍もの情報量に対して,ただ出すだけでは駄目だということですね。特許マップにまとめたとしても,ただのマップだと,先ほどのように「出した気はするけれど言われたことに応えているだけ」の延長線でしかなくて。それよりはもっとプラスαの知恵が入ったものを求められているのだろうな,という気はします。

大久保:私はインフォプロと言えるほどの知識や経験もないので,研究者という立場からインフォプロに求められるものをイメージしてみました。インフォプロと呼ばれる方たちは情報の収集に関するプロで,かつ情報の活用に関してもプロだと思っています。そして,研究者の依頼で必要な情報を探してくれるだけでなく,情報の収集方法や情報の活用方法を教えてくれたり,提案したりしてくれるプロであり,情報に関するコンサルタントみたいなイメージでしょうか。研究者は情報検索やデータベースなどの情報に関しては基本的に素人です。自分の研究に関する情報は集められても,それ以外の情報に関してはどのように集めるのかがわからない,という人も多いです。研究者から情報に関する相談を受けたら,研究の背景まで理解して,たとえば「このデータベースを使えばこんな情報が見つかりますよ」とか,「このツールを使えば,こんな動向がつかめますよ」という,情報そのものより,その情報の在りかや情報の活用方法を提案してくれるインフォプロの方が身近にいると心強く感じます。私の場合,自分が少しでもそのような役割を担うことができるようになれないかと,この研究会に参加しています。

中村:研究者のお立場からの大変よいご意見をいただきました。実はこういった解析業務は本来研究者自身がやるべきだと思っています。諸説あると思いますが,たとえば知財の方が特許マップを作成して提供されているところもあると思いますが,私はそれでは駄目だと思っているんですよね。

大久保氏と山中氏

本田:私も同意見です。

中村:研究者が研究の方向性を考える中で,こういったこと(情報解析)もやっていかなければいけない,そうしなければ「研究者失格」というのが私のポリシーなんです。ただし,大久保さんの発言にあったように,研究者は調査に関しては素人ですし,ツールについても十分な知識がない,そのあたりを後押しするのがわれわれインフォプロの役目ではないかと思っています。

両者の間には大きな溝というか,知識の乖離(かいり)がありますよね。そこを研究者の目線に合わせて,「つなぐ,橋渡しをする」のがインフォプロの役割なのではないでしょうか。先ほどの伏見さんの目標になる人ができたという話は,インフォプロとして,コミュニケーション力が必要だということをまさに言い当てたご発言だったと思います。この会がそういうインフォプロを育成していく1つのきっかけになれば,と考えています。

インフォプロの育成

中村:INFOSTAはインフォプロの育成が1つのミッションになっていますよね,真銅さんはどんなふうにお考えですか。

真銅:INFOSTAがやっていることは,育成に関して言いますと,研修会やセミナーの開催,JSTとの共催のシンポジウムでの研究発表とか,あとは会誌を通じて行っています。それ以外では,主に昔のサーチャー試験,今年から検索技術者検定という試験名となりましたが,これをもって皆様に,調査能力,検索能力についてステップアップのチェックの機会を提供しています。それとOUG(Online Users Group,日本オンライン情報検索ユーザー会)といって,いろいろな情報検索ツールを使った検索技術の向上のための分科会がテーマ別に4つ(化学分科会,ライフサイエンス分科会,インターネット/ビジネス分科会,特許分科会)あります。そのほかに研究活動としてはSIG(Special Interest Groups,専門部会)があり,こちらは理論および技術の研究を深めようというもので5つ(技術ジャーナル部会,パテントドクメンテーション部会,分類/シソーラス/Indexing部会,Webサイト研究会,ターミノロジー部会)の部会があります。会員有志がそれぞれテーマごとに集まって研究しています。ただ現状はなかなか研究活動が広がっていかない。活発なところもあれば,「教える人」と「教わる人」が固定してしまっているところもあります。また,特許なら特許,化学なら化学といった分野で振り分けをするので,どうしても参加者が広がらないことが悩みです。今回3i研究会を立ち上げて,もっと広く企業の方々が実際に困っていることをシミュレーションして解決していく学べる場が設けられたので,今後きっと多くの皆様のお役に立てるのではないかと思っています。

中村:今まで,INFOSTAはインフォプロの基礎となる部分,いわゆる検索のスキルを中心にサポートしてきて,今度は応用問題といいますか,まさに実務に役立つところをサポートされるわけですね。

座談会風景

真銅:そうですね。そういった場を提供して,皆さんで楽しんでいただきたいと。

中村:それによって,さらにインフォプロが育っていくと。

真銅:そのとおりです。個人的な考えですけど,インフォプロというのは,立場ではなくて技術要素だと思っています。情報の取り扱いについて知っている人がインフォプロなのです。結局,どんな場合にどのような情報が必要か,それをどうやって手に入れるかといったことについて何となくでも頭の中が整理されていて,使い方がわかっている。「わかっていること」と「わからないこと」がきちんと理解できている。ですから,情報担当部署の人でなくても,調査をしたりレポートを作成したりする方にはインフォプロ的要素が求められています。

この要素というものは普遍的なものだと思っています。社会の中で活動していくうえでの普遍的要素。インフォプロのスキルを身につけて,情報交換を欠かさず,自分の立ち位置と全体像を把握していれば,どこへ行っても活躍できる人材になるのではないでしょうか。

中村:おっしゃるとおりです。インフォプロという言葉は広い意味で使われるべき言葉だと思います。「橋渡し」の話が出ましたが,大久保さんのような研究者がいて,知財の実務担当者がいて,そして情報担当,といった業務分担をしている企業って多いですよね。知財と情報が一緒になっているような企業もあると思います。そのあたりの分業をどうするかですが,三者のセクショナリズムというのか,分担を明確にしてしまった時点で成長が止まってしまう気がします。たとえば,今回のようにこの3i研究会で取り扱うテーマでアウトプットが導き出せるような人というのは,今言った3つの領域に足を踏み入れていかないとスムーズに事が運んでいかないと思います。本田さんのように,いろいろな業務を経験されている方は,相手の領域の業務もわかりますから,かなり有利だと思います。

本田:そうですね。

中村:今回の3i研究会は,そういう知識を総動員してやっていかないと,満足な結果が出てこないと思います。その中の一部のスキルしかもっていない方がメンバーとして集まっているわけですが,グループ全体だったらそれは実現可能ですよね。だから異業種,それから異分野の人たちが協力することで,それを自分のものとして(1人でできることを目標として)学びとっていく。この研究会がそういった意味でインフォプロの育成に役立てばいいなと考えています。

これから5月まで研究会の活動が続いていきます。最初に話が出ましたが,この会の目的は「最後までやり切ること」です。結果を最後までまとめていただくこと,アウトプットを口頭で発表すること,何かに投稿すること,を通して,最後までやり切っていただきたいと思っています。リーダーの方にはグループをゴールまで導いていただくことをお願いして本座談会を締めたいと思います。

真銅:INFOSTAでは,2014年12月にJSTと共催する「情報プロフェッショナルシンポジウム」で発表し,最終レポートを『情報の科学と技術』に掲載されることを期待しています。

中村:結果をまとめることによって理解が一段階深まると思います。成果発表は口頭発表と論文掲載という2通りです。PowerPointの資料は見栄えは美しいのですが,論理のつながりが明確にならないので,きちんと文章にしてまとめることが必要だと思っています。この会ではぜひそこまで頑張っていただきたいと思っています。皆様よろしくお願いいたします。

座談会を終えて

各グループリーダーの皆様,当日は有意義なご意見をありがとうございました。本座談会後3月20日に3i研究会の中間発表会を開催しました。発表会には情報解析分野の複数名の識者をお招きして,各グループの検討結果を聞いていただきました。「シナリオの適正さ」「必要な情報・解析手法」の観点からかなり突っ込んだアドバイスをいただくことができました。

中間発表会の様子(2014年3月20日)

これらの貴重なアドバイスを生かして,研究会メンバーの皆様には当初設定したゴールイメージに沿った有意義なアウトプットを出すところまでやり切ること,これらの成果を業界にしっかりと発信していくことを期待しています。

また,こういった研究は継続が大切だと思っています。こういった研究を繰り返し行っていくことにより,シナリオ設定の勘が醸成され,その後の解析プロセスのセンスが磨かれていきます。今期の参加メンバーが次期参加メンバーをリードしていく,そのような形で3i研究会が発展していくことを望んでやみません。

今年度は,第2期ワークショップの事前ガイダンスが2014年7月17日に開催されます。詳細はhttp://www.infosta.or.jp/posts/3iguidance2014/をご覧ください。本稿を読んで興味をもたれたインフォプロの皆様,インフォプロを目指す皆様の本研究会への参加をお待ちしております。

(研究アドバイザー 中村 栄)

 
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