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AMED(日本版NIH)創設に向けた新しい指標の開発(7) 米国のファンディング動向
治部 眞里長部 喜幸
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2014 年 57 巻 6 号 p. 395-406

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著者抄録

AMED(日本版NIH)や製薬企業における,政策決定・戦略立案に資するエビデンス提供のため,新しい指標に基づいた医薬品産業の現状俯瞰・将来予測を試みた。今回は,米国の政府機関等を中心に医薬品開発に関するファンディング動向について,事業主体別,疾病別の分析を試みた。

1. はじめに

AMED(日本版NIH)注1)や製薬企業における,政策決定・戦略立案に資するエビデンス提供のため,新しい指標に基づいた医薬品産業の現状俯瞰・将来予測を試みた。

拙著「日本版NIH創設に向けた新しい指標の開発(1)~(3)」においては,各製薬企業が有する研究開発テーマのパイプラインに着目することで,各国の現状および将来における新薬創出力が把握できること1)2),および複数段階にわたる開発プロセスにおいてオープンイノベーションを円滑に進めるためには,中小企業・ベンチャーを中心とする「創薬のラウンドアバウト(円形交差点)」の存在が重要であることなどを示した3)

また,拙著(4)および(5)においては,国際特許分類(International Patent Classifications: IPC)数,被引用特許数,特許が引用する非特許文献数などのパラメーターを用いて導出した「精製特許ファミリー数」が,各国の医薬品産業の基礎研究力を予測するための指標となることなどを示した4)5)

さらに,拙著(6)において,疾病別にみた医薬品の開発状況の分析を行った。がん,感染,神経系疾患に関する医薬品開発が多いこと,米国および英国では,中小企業等が研究開発の中心であるのに対し,日本は大企業が中心を担っていることを示した6)

本稿では,医薬品開発に対して米国の政府,財団並びに企業が,どのような研究助成を行っているか,その動向の把握を試みる。

なお,本稿は著者の私見であり,著者が所属する機関の意見・見解を表明するものでない点に留意願いたい。

2. データベース

本分析においては,前回に引き続きThomson Reuters社のCortellis for Competitive Intelligenceデータベースを使用した。当データベースでは,約5万件の医薬品・パイプラインについての開発情報,約3万5,000件の組織間の契約情報等が収録されている。データ抽出日は,2013年12月11日である。

約3万5,000件の組織間契約情報のうち,本社が米国にあるパートナー(契約元のこと。日本の契約書では「甲」と表記するもの)とライセンサー(契約先のこと。日本の契約書では「乙」と表記するもの)の間の契約情報,18,845件を分析対象とした。

3. データ分析

3.1 組織間契約

1は,組織間契約の詳細な内訳を件数の多い順に示したものである。

図1 組織間契約の内訳

ここに示された組織間契約の項目内容は,1のとおりである。

表1 組織間契約の項目内容
Drug-Asset Divestment ラインセンサーがパートナーに医薬品に関する資産をすべて売却
Drug-Commercialization License パートナーが,医薬品を販売するライセンスをラインセンサーから取得,またはライセンサーがパートナーと協同で医薬品を販売促進することに同意
Drug-CRADA 企業と政府機関がCRADA (共同研究開発契約) を締結
Drug-Development/
Commercialization License
パートナーがライセンサーから医薬品を開発し,商品化(販売)するライセンスを取得
Drug-Development Services サービス企業が,パートナーに医薬品開発サービスを提供することに同意
Drug-Discovery/Design ライセンサーとパートナーが協同または個別に医薬品開発のビジネス戦略を立てて医薬品候補化合物の発見・デザインを行うことに同意
Drug-Early Research/Development ライセンサーとパートナーが医薬品候補化合物を開発するために,専門技術やリソースを協同使用する提携を締結
Drug-Funding 医薬品の開発に向けて資金を提供
Drug-Manufacturing/Supply ライセンサーが,パートナーへの医薬品の製造や供給に合意
Drug-Screening/Evaluation ライセンサーが,パートナーのために潜在ターゲットやあるモデルに対する医薬品候補化合物のスクリーニングや評価することに同意
Paten-Asset Divestment ライセンサーがパートナーに全特許資産を売却
Patent-Exclusive Rights パートナーがライセンサーに属する特許を使用するためのライセンスを独占取得
Patent-Non-Exclusive Rights パートナーがライセンサーに属する特許を使用するためのライセンスを非独占で取得
Technology-Asset Divestment ライセンサーがパートナーに技術に関する全資産を売却
Technology-Delivery/Formulation パートナーがライセンサーの医薬品デリバリーや製剤の技術のライセンスを取得するか,またはライセンサーがパートナーと医薬品の製剤で提携
Technology-Other Proprietary パートナーがライセンサーの技術を使用するか,またはライセンサーと共に技術を使用するライセンスを取得
Technology-Target Validation パートナーが,開発した医薬品の推定ターゲットを評価・検証するために,ライセンサーの技術を使用するライセンスを取得

出典: Thomson Reuters社 Cortellis for Competitive Intelligenceを基に作成

2つの組織間の契約としてもっとも多数を占めるのが,Drug-Funding(医薬品の開発に向けて資金を提供)で,その数は4,436件である。さらにDrug-Development/Commercialization License, Technology-Other Proprietaryと続く。拙著(3)の分析においては,Evaluate社のEvaluate Pharmaデータベースを使用し,2つの組織間契約の分析を行った3)が,このデータベースには,Drug-Fundingが含まれていなかった。今回使用したThomson Reuters社のCortellisデータベースでは,医薬品の開発に向けて資金を受領するDrug-Fundingが含まれている。いかなるパートナーがいかなるライセンサー組織と契約を締結しているのか,組織を拙著(6)の表3の事業主体分類(2)項目に「大学」および「政府機関」を加えて分析した結果が2である6)

図2 パートナーとライセンサーの取引件数
表2 事業主体分類とその説明
事業主体分類 説明
大企業 拙著(3)の「大企業」の定義に含まれる企業。すなわち,新薬を開発および販売する大企業。なお,新薬開発に加えて,ジェネリック医薬品を製造および販売する大企業や有効成分以外の開発も行う大企業もこの分類に含まれる。
中小企業等 次のいずれかに該当するもの。
1. 拙著(3)の「中小企業・ベンチャー」の定義に含まれる企業。すなわち,新薬を開発する企業であり,大企業に属さないもの。なお,新薬開発に加えて,ジェネリック医薬品を製造および販売する中小企業・ベンチャーや有効成分以外の開発も行う中小企業・ベンチャーもこの分類に含まれる。
2. 1983年~2011年において,米国のSBIR(Small Business Innovation Research) 制度に採択されたことのある企業。
ジェネリック企業 拙著(3)の「ジェネリック企業」の定義に含まれる企業。すなわち,新薬開発のための研究を行っておらず,ジェネリック医薬品を製造及び販売する企業。ジェネリック医薬品の製造及び販売に加えて,有効成分以外の開発も行い,かつ,新薬開発を行わない企業もこの分類に含まれる。
製薬関連企業 拙著(3)の「製薬関連企業」の定義に含まれる企業。すなわち,投与経路の改良・剤形の変更など,医薬品の有効成分以外の開発を行う企業。
財団 医薬品開発に対し支援を行っている非営利の私立財団(ビル&メリンダ・ゲイツ財団,マイケル・J・フォックス財団パーキンソン病研究機関など)。
その他 CRO(Contract Research Organization,医薬品開発業務受託機関),私立研究所,病院
判別不明 事業主体が不明の企業

拙著(3)の結果と同様に,中小企業等が中心的な役割を担っていることがわかる。大企業-中小企業等の間および中小企業等同士の取引が多いだけでなく,政府機関や財団も中小企業等との取引が活発である。3は,契約内訳をDrug-Fundingに絞って,パートナーとライセンサーの取引件数を示したものである。

医薬品に関するファンディングにおいては,パートナーとして政府機関および財団が多く,そのどちらもが,中小企業等へファンディングしている件数が多い。続いて大学となっている。米国のファンディングパートナーとして,財団が重要な役割を担っていることは,注目すべきことである。

図3 Drug-Fundingにおけるパートナーとライセンサーの取引件数

さて,政府機関および財団は,Drug-Fundingにおいて,いかなる進捗状況(【ディスカバリー】→【フェーズ1】→【フェーズ2】→【フェーズ3】→【承認前】→【承認】→【市販】)で,契約を行っていたのかを示したのが4である。なお,ディスカバリーには非臨床試験とその前段階の基礎研究が含まれている。

4から,政府機関および財団は,ディスカバリー段階にあるパイプラインを有する中小企業等および大学へのファンディングが多く,政府機関および財団は,基礎研究段階にあるパイプラインに対してファンディングする場合が多いことがわかる。

図4 Drug-Fundingにおける進捗状況別件数(政府機関および財団)

Drug - Development/Commercialization Licenseにおいては,5に示すように,中小企業等がディスカバリー段階にあるパイプラインを有する大学と契約することがもっとも多く,次に中小企業等が中小企業等・ディスカバリー,大企業が中小企業等・ディスカバリーと続く。注目すべきは,中小企業等が大企業・ディスカバリーで取引することである。医薬品研究開発は,リスクが高く,治験等に長期間を要することが多く,経費負担も大きい7)。大企業といえども有力なシーズを優先し,自らの経済環境・経営環境を考慮しながら,シーズの選択と集中をしなければならないと考えられる。シーズの中には,販売ルートの確保が困難なものや,患者数が少なく利益確保が小さいものなどは,基礎研究だけで終了してしまうものも少なくなく,それらを中小企業等がDrug-Development/Commercialization Licenseとして契約していると推察される。

図5 Drug-Development/Commercialization Licenseにおける進捗状況別件数(大企業および中小企業等)

次に米国の医薬品に対するディール情報のパートナー上位20を示したのが,3である。上位3機関は,アメリカ合衆国保健福祉省(United States Department of Health and Human Services, HHS)所管の医学研究機関である。1に示したように,Drug‐Fundingが全体の,約23.5%(18,845件のうち4,436件)を占めているため,米国のFunding機関が上位を占めている。National Institutes of Health(米国国立衛生研究所),略してNIHは,複数の研究所やセンターから構成され,総じて,NIHと呼ばれている。それぞれ研究所やセンターは,個別のミッションのもと,所内活動部門と所外活動部門に分かれている。所内活動部門は,ワシントンD.C.郊外のベセスダにあるNIHの構内の実験室での研究や臨床研究を行っている。所外活動部門では,ファンディングを行っている。NIHの研究所およびセンターについては,注2)を参照されたい。この分析においては,NIHの研究所およびセンターを特定できなかったものに関しては,すべてNIHとしている。

前述したが,米国の強みの1つとして考えられるのは16位と19位にランクされている財団の存在である。16位のThe Michael J. Fox Foundationは,アメリカの俳優Michael J. Foxがパーキソン病の研究のために2000年に設立した財団である。2013年,この財団のファンディング総額は,5,405万8,647ドルにのぼる。19位のBill & Melinda Gates Foundationは,Microsoft社の会長Gates夫妻によって2000年に設立された財団である。グローバルヘルスプログラムでHIV/エイズ,マラリア感染等の研究にファンディングしている。Discovery & Translational Sciencesプログラムが特徴的で,インパクトのある基礎研究を実際のソリューションへと橋渡しする機能をもつ。

表3 医薬品に対するディール情報のパートナー上位20と件数
順位 パートナー 件数
1 National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NAID) 703
2 National Institutes of Health (NIH) 681
3 National Cancer Institute (NCI) 637
4 Pfizer Inc 517
5 US Government 447
6 Merck & Co Inc 376
7 Bristol-Myers Squibb Co 237
8 Eli Lilly & Co 199
9 Abbott Laboratories 175
10 National Institute of Neurological Disorders and Stroke (NINDS) 165
11 National Center for Research Resources 162
12 Genentech Inc 138
13 National Heart Lung and Blood Institute (NHLBI) 126
14 US Department of Defense 110
15 National Institute of Diabetes, Digestive and Kidney Diseases (NDDK) 109
16 The Michael J. Fox Foundation 105
17 National Institute on Drug Abuse 94
18 US Department of Health and Human Services Department (HHS) 90
19 MedImmune LLC 87
19 Bill & Melinda Gates Foundation 87

2014年の米国におけるファンディング額上位10の財団は,1位のBill & Melinda Gates Foundationと7位のFord Foundationを除いて,すべて製薬関連業界である(4)。上位10社中,1位と7位を除いた8社の合計額が,年間約47億ドルである8)。2014(平成26)年度予算の政府案ではAMED(日本版NIH)創設に1,215億円(1ドル=100円で計算すると,約12億ドル)が計上されている9)。しかし,米国の財団の1位を除いた上位9社のファンディング額の4分の1にすぎない。

表4 米国の財団上位10とその年間ファンディング額

6は前述した上位20までの機関の契約内訳ごとの割合を表示している。上位のうちNIH関係の8機関は,Drug-Fundingが大部分を占める。4位から9位まではグローバル企業(5位の米国政府を除く)で,Pfizer Inc, Merck & Co Inc, Bristol-Myers Squibb Co, Eli Lilly & Co, Abbott Laboratoriesと続く。彼らはNIHのようなDrug-Fundingは行わず,Drug-Development/Commercialization Licenseという,パートナーがライセンサーから医薬品を開発し,商品化(販売)するライセンスを取得し,商業ライセンス契約を締結した後,医薬品開発を支援している。12位のGenentech Incは,2009年にRocheの傘下になったので,グローバル企業の1つである。

図6 パートナー上位20機関の契約内容の内訳

一方のライセンサーの上位20の件数およびディールの内訳をみたものが7である。未公表を除き,1位はJohns Hopkins University,2位はNational Cancer Institute,3位はMD Anderson Cancer Centerが続く。上位20のうち,10機関が大学であり,ディールの内訳としては,Drug/Fundingがもっとも多く,次にDrug-Development/Commercialization Licenseと続く。

大学の付属病院および非営利団体であるScripps Research InstituteやMassachusetts General Hospitalは,Drug-Screening/Evaluation(ライセンサーが,パートナーのために潜在ターゲットやあるモデルに対する医薬品候補化合物のスクリーニングや評価することに同意)がもっとも多い。

図7 ライセンサー上位20機関の契約内容の内訳及び件数

3.2 中小企業等へのファンディング

米国において中小企業・ベンチャーに対するファンディングを行っている最大のプログラムが,Small Business Innovation Research(SBIR)およびSmall Business Technology Transfer(STTR)である。このプログラムは,Cortellisにおいても米国Drug-Fundingの4,436ディール中628ディールと,約14%を占めるプログラムである。

SBIRプログラムは,1982年に民間セクターのイノベーションを推進するために創設されたプログラムで,年間外部研究開発予算が1億ドル以上の省庁が,その2.8%をこのプログラムに拠出するように義務づけられている。現在参加している省庁は,農務省,商務省,国防総省,教育省,エネルギー省,国土安全保障省,運輸省,保健福祉省,環境庁,航空宇宙局,全米科学財団である。プログラムは,中小企業を対象に商品化される可能性が高い研究開発をサポートする。3段階選抜方式で,フェーズI,フェーズII,フェーズIIIに分かれ,フェーズIは,フィージビリティー研究に与えられる。研究期間約6か月,15万ドルを超えない範囲で支給される。フェーズIIは,フェーズIの研究をさらに拡張するもので,研究期間約2年,100万ドルである。フェーズIIIはSBIRプログラムでファンディングされるわけでなく,商品化への後押し,米国政府が使用することを目的とした政府調達,ベンチャーキャピタル(VC)の紹介を行っている10)

一方,STTRプログラムは,中小企業と研究所で協同研究される科学および技術イノベーションを推進するもの,あるいは中小企業と研究所の間の技術移転等を推進するためのプログラムで,SBIRと同じく3段階選抜方式のファンディングである。フェーズごとの目的は一緒だが,フェーズIの年数とファンディング額が異なる。フェーズIは約1年,15万ドルが支給される。どちらも市販される可能性が高い研究開発にファンディングされるプログラムで,2000年から中小企業庁によって開始されたものである。現在11の省庁(農務省,商務省,国防総省,教育省,エネルギー省,国土安全保障省,運輸省,保健福祉省,環境庁,航空宇宙局,全米科学財団)がこのプログラムに参加している。中でも16億ドルがNational Institutes of Healthからファンディングされ,これが全体の約40%となっている10)

Cortellisデータベースを用いて,パイプラインを有する米国を本拠地とする企業,大学,1,195機関を対象にSBIR/STTR制度を活用したことがあるかを分析した。http://sbir.govより,SBIR/STTR制度を受領した企業を1983年からすべてダウンロードし,それをCortellisデータベースに突合した。その結果,667機関,約55.8%が過去この制度を活用していたことがわかった。5は,Cortellisデータベースにおいて,パイプラインを有する企業のうち過去SBIR/STTR制度を活用した企業上位10社である。

1位のAmgen Incは,1980年創業のバイオテクノロジ―企業で,SBIR/STTR制度を活用し,その後,売上高が世界ランキング13位にまで躍進した。パイプラインを有する米国を本拠地とする企業の10位以内には,Pfizer Inc, Merck & Co Inc, Eli Lilly & Co, Bristol-Myers Squibb Coとメジャー企業が多い中,Amgen Incは,中小企業等から,約35年で世界に冠たるバイオテクノロジー企業へと成長を遂げたと言える。

SBIR/STTR制度のフェーズIIIにおいては,ベンチャーキャピタルへの紹介が行われており,ベンチャーキャピタルが新しいテクノロジーベースにおけるベンチャー企業の成長に重要な資金源となっていることは間違いない11)。しかし日本のベンチャーキャピタルによるベンチャー企業への投資は,米国に比して数十分の1となっている12)

表5 パイプラインを有する米国企業のうちSBIR/STTR制度を活用した企業上位10
順位 企業名 件数
8 Amgen Inc 138
10 Omeros Corp 109
22 Immunomedics Inc 70
31 Chiron Corp 57
32 ImClone Systems Inc 55
35 Gilead Sciences Inc 49
39 Medarex Inc 45
41 Exelixis Inc 44
65 IDEC Pharmaceuticals Corp 29
65 Immunex Corp 29

出典:Thomson Reuters社 Cortellis for Competitive Intelligenceを基に作成

8は,OECDのScience, Technology and Industry Scoreboard 2013に日本のベンチャーキャピタルの年間投資額および投資融資先社数を加えたものである。日本の年間投資額に関しては,1ドル=100円で換算してプロットしてある。8のグラフからわかるように,ベンチャーキャピタル投資が日本においては少なく,その活性化が重要な課題となっている。米国においては,ベンチャーキャピタル等が投資して,ベンチャーの隆盛を支えていることがわかる。

AMED(日本版NIH)においてもこのように商品化を目的としたファンディング制度やフェーズ制の導入,積極的な政府調達やベンチャーキャピタルへの紹介等が必要と思われる。

図8 日米欧のベンチャーキャピタル年間投資額及び投資融資先社数

4. おわりに

われわれは,医薬品開発に対して米国の政府,財団並びに企業が,どのような研究助成を行っているか,その動向の分析を試みた結果,以下の事項を示した。

  • •   大企業・中小企業等が中小企業等と取引が多いだけでなく,政府機関や財団も中小企業等との取引が活発である。
  • •   米国のファンディングパートナーとして,財団が重要な役割を担っている。
  • •   中小企業等による大企業のディスカバリー状態の取引がある。
  • •   Cortellisデータベースにおいて,医薬品開発を行っている企業のうち,約55.8%が過去SBIR/STTR制度を活用している。
  • •   SBIR/STTR制度のフェーズIIIにおいては,ベンチャーキャピタルへの紹介が行われており,ベンチャーキャピタルが新しいテクノロジーベースにおけるベンチャー企業の成長には重要な資金源となっている。
  • •   日本のベンチャーキャピタルによるベンチャー企業への投資は,米国に比して数十分の1となっている。
  • •   AMED(日本版NIH)においてもこのように商品化を目的としたファンディング制度やフェーズ制の導入,積極的な政府調達やベンチャーキャピタルへの紹介等が必要と思われる。

5. 謝辞

なお,本研究の一部は独立行政法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)「科学技術イノベーション政策のための科学」(プログラム総括:森田朗・学習院大学法学部教授)における研究課題「未来産業創造にむかうイノベーション戦略の研究」(山口栄一・京都大学大学院総合生存学館(思修館)教授,研究期間:平成23~平成26年度)の支援を受けて行われたものである。

本文の注
注1)  医療研究の司令塔をつくる健康医療戦略推進法および独立行政法人日本医療研究開発機構法が2014年5月23日の参院本会議で成立し,日本版NIHの正式名称は「独立行政法人日本医療研究開発機構」(通称AMED: Japan Agency for Medical Research and Development)となった。本稿は,日本版NIHの名称が使用されていた昨年10月から続く一連の論文のため,同機構を「AMED(日本版NIH)」と記載する。

注2)  NIHの研究所およびセンター

NIH Clinical Center  CC  国立衛生研究所・臨床センター

Center for Information Technology  CIT  情報技術センター

Center for Scientific Review  CSR  科学審査センター

Fogarty International Center  FIC  フォガーティ国際衛生科学先端研究センター

National Center for Advancing Translational Sciences  NCATS  国立先進トランスレーショナル科学センター

National Center for Complementary and Alternative Medicine  NCCAM  国立補完代替医療センター

National Cancer Institute  NCI  国立癌研究所

National Eye Institute  NEI  国立眼病研究所

National Human Genome Research Institute  NHGRI  国立ヒトゲノム研究所

National Heart, Lung, and Blood Institute  NHLBI  国立心肺血液研究所

National Institute on Aging  NIA  国立老化研究所

National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism  NIAAA  国立アルコール乱用・依存症研究所

National Institute of Allergy and Infectious Diseases  NIAID  国立アレルギー・感染症研究所

National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases  NIAMS  国立関節炎,骨格筋,皮膚疾患研究所

National Institute of Biomedical Imaging and Bioengineering  NIBIB  国立画像生物医学・生物工学研究所

National Institute of Child Health and Human Development  NICHD  国立小児保健発達研究所

National Institute of Drug Abuse  NIDA  国立薬物乱用研究所

National Institute on Deafness and Other Communication Disorders  NIDCD  国立聴覚・伝達障害研究所

National Institute of Dental and Craniofacial Research  NIDCR  国立歯科・頭蓋顔面研究所

National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases  NIDDK  国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所

National Institute of Environmental Health Sciences  NIEHS  国立環境衛生科学研究所

National Institute of General Medical Sciences  NIGMS  国立一般医科学研究所

National Institute of Mental Health  NIMH  国立精神衛生研究所

National Institute of Minority Health and Health Disparities  NIMHD  国立マイノリティー健康・健康格差センター

National Institute of Neurological Disorders and Stroke  NINDS  国立神経疾患・脳卒中研究所

National Institute of Nursing Research  NINR  国立看護研究所

Nation Library of Medicine  NLM  国立医学図書館

National Institute of Health  CC ; NIH  国立衛生研究所・臨床センター

National Center for Research Resources  NCRR  国立研究資源センター

参考文献
 
© 2014 Japan Science and Technology Agency
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