情報管理
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巻頭言
巻頭言 『情報管理』の役割
中村 道治
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2015 年 58 巻 1 号 p. 1

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2015年度を迎えるにあたり,科学技術振興機構(JST)を代表して一言ご挨拶を申し上げます。『情報管理』の刊行にあたっては,日ごろより多くの読者の皆さまに支えていただき,また執筆者や編集委員の皆さまには多大なご尽力をいただき厚く御礼申し上げます。

本誌は,JSTの情報事業を背景に,科学技術情報の生産から整備,流通,活用に至る「情報のサイクル」の活性化を通じて科学技術情報基盤の整備に寄与し,半世紀あまりにわたり科学技術の進展に貢献してきたと自負しています。

私たちは今日,科学技術の新たな可能性の時代を迎える一方で,多くの挑戦すべき課題に直面しています。とりわけ,先進国,新興国を問わず世界中で研究開発が活発に行われ,日々生み出される科学技術情報は質,量ともに飛躍的に増大して,新たな発見や発明につながっています。私たちは,まさに興奮するような知識創造社会を迎えつつあります。そのため,研究者が必要な学術論文を自由に閲読できる環境づくりが重要であり,電子ジャーナルのオープンアクセス化に向けて,JSTでは関係機関と連携しつつ改善策を検討していきます。

また,情報通信技術の進歩により膨大なデータの収集と解析が可能になった結果,データ駆動型科学が新たな研究様式として,材料,エネルギー,医療・創薬,食料,防災,地球環境などさまざまな研究分野で進展し,競争力の新たな源泉になろうとしています。これを推進するためには,公的資金で行われた研究により得られたデータを社会で広く共有する文化を育てる必要があります。

さらに,科学技術イノベーションの創生において,自然科学と人文社会科学の協調や市民参加による「科学と社会の共創」の重要性が,世界的に認識されるようになりました。分野横断的な研究(Trans-disciplinary Research)の推進です。自然科学者だけでなく,人文社会科学者,市民,企業経営者,行政などイノベーションにかかわるさまざまな関係者が利用可能な「イノベーション情報基盤」を構築することが新たな課題です。

これらに応えるためには,技術,システム,制度,倫理,人材など多様な観点で,関係者が知恵を出し合うことが必要です。また,国内に閉じず,国際的な連携のもとに取り組むことも重要です。『情報管理』は,このための議論の場を提供することにより,わが国の科学技術イノベーションの進展に貢献していきたいと考えています。これからも,皆さま方のご理解とご協力をお願いする次第です。

  • 科学技術振興機構
  • 理事長 中村 道治

 
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