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情報界のトピックス
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2015 年 58 巻 1 号 p. 78-81

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米連邦通信委員会が新「ネットワーク中立性」規則を承認

米国の連邦通信委員会(Federal Communications Commission: FCC)は2月26日,新しい「ネットワーク中立性」(net neutrality)に関する規則を,3(民主党委員)対2(共和党委員)で承認し,ブロードバンドインターネットを公益事業に再分類して,固定,モバイル両方のブロードバンドに適用する新しい「オープンインターネット命令」(Open Internet Order)を制定した。オープンインターネット命令には,ISP(Internet Service Provider)に3つのことを禁じる重要な方針が含まれる。1)合法なコンテンツ,アプリケーション,サービス,デバイスへのアクセスを遮断すること,2)コンテンツ,アプリケーション,サービス,デバイスのトラフィックを減速させること,3)(追加料金を受け取って)特定のインターネットトラフィックを優先すること,である。Verizon社やTime Warner Cable社のようなISPが,有料の「ファスト(高速)レーン」を提供することは禁じられることになる。

FCCは2010年12月に「オープンインターネット命令」を発表したが,Verizon社はこれを不服として翌年,FCCを相手取って訴訟を起こした。2014年1月,D.C.連邦巡回控訴裁判所は,FCCがブロードバンドサービスを情報サービスに分類している以上,電気通信法(Telecommunications Act)に基づいて,Verizon社やISPが提供するブロードバンドサービスを規制する権限は弱いと裁定した。しかし同時に,規制がなければ,ISPが競争やイノベーションを脅かす可能性があることを指摘し,FCCがそのような規制を施行するための1つの方法として,ブロードバンドサービスを再分類することを提案した。新規則を施行するためには,ブロードバンドインターネットを,固定電話ネットワークと同じく公益事業に再分類することが条件となる。

FCCがケーブル会社や電気通信会社に対して,より弱い規則を制定する方向に傾いていると思われた2014年11月に,可能なかぎり強力な規制を設けることを求めたオバマ大統領は,「ネットワーク中立性」に関するオープンコメントの期間に,FCCが国民や企業などから,400万人を超える手紙や電子メールを受け取ったことに触れ,圧倒的多数が自由で公正なインターネットを支持していると指摘して,FCCの評決をたたえた。知的自由はインターネットの中立性に依存するとして,長年にわたり「ネットワーク中立性」の保護を擁護してきた,米国図書館協会(American Library Association: ALA)と,北米研究図書館協会(Association of Research Libraries: ARL)も評決を称賛する声明を発表した。

FCCのTom Wheeler議長は,発表声明の中で,FCCは米国のISPに公益事業スタイルの規制を課す計画はないと強調したが,ケーブル会社や電気通信会社だけでなく,共和党の議員もただちにこの評決を,政府によるビジネスへの行き過ぎた干渉であり,訴訟が相次いで起きるだろうと非難の声をあげた。ストリーミングビデオのようにWebトラフィックを独り占めするようなサービスを提供するオンライン会社は,インターネットコンテンツを消費者に配信するパイプを拡大・維持するためのコストを負担すべきであるというのが,彼らの主張である。Verizon社は,新しい規則を「時代遅れ」であると非難し,FCCはインターネットに関して,1930年代の規則を押し付けようとしているという声明を発表した。米国のケーブルTV大手のComcast社も声明を発表し,オープンインターネット規則を原則的に受け入れながらも,ブロードバンドインターネットの再分類には反対の意を示した。下院司法委員会の共和党委員21名が,FCCの規則は,「インターネットの今後の実行可能性を脅かす」と主張する書簡を発表したが,米国議会の反応は分かれており,今後の動向は流動的である。

Wheeler議長は,これは米国憲法修正第一項が言論の自由を規制するためのプランではないように,インターネットを規定するためのプランではなく,新しい連邦税や料金をISPに負わせることはないと語った。ISPが法的措置を取るには数週間かかると思われるが,すでに2大ケーブルグループが,FCCを相手に訴訟を起こすことを示唆しており,他のグループや企業がFCCの規制の実施を一時的に妨げるために,規則の停止を求めるかどうか考慮中である。いずれにせよ,「ネットワーク中立性」に関しては,幅広い論議が続くものと思われる。

  • (http://www.fcc.gov/document/fcc-adopts-strong-sustainable-rules-protect-open-internet) (http://www.washingtonpost.com/blogs/the-switch/wp/2015/02/26/the-fcc-set-to-approve-strong-net-neutrality-rules/) (accessed 2015-03-06).

ホワイトハウスが「消費者プライバシー権法」の草案発表

2月27日,米国ホワイトハウスが,インターネット上の消費者プライバシーを保護するための,立法案の討議草案をWebサイトに発表した。「消費者プライバシー権法」(Consumer Privacy Bill of Rights Act[Administration Discussion Draft])として知られるこの立法案は,企業が集める個人情報に対して,より多くの管理権を国民に与えることを意図したものである。企業は,どのようにデータを利用し,データの目的外再利用を確実に防ぎ,消費者にデータ消去の方法を提供するかについて,明瞭に通告することを求められる。ホワイトハウスは声明の中で,「立法案は,オンラインやオフラインで集められる個人データに,それがどのように共有されるかにかかわらず,良識ある保護を適用し,危険を最小にするための重要なステップを取りつつ,データ分析の便益を最大にできる責任ある慣行を促進する」と述べている。「消費者プライバシー権法」の草案は,2012年に発表されたものの,Edward Snowden氏がアメリカ国家安全保障局(National Security Agency: NSA)による極秘の個人情報収集活動を告発したことが原因で挫折していた。

プライバシー擁護者の中には,立法案はデータ利用ポリシーが,消費者にプライバシーリスクを与えるかどうかを企業自らが定義するなど,あまりにも多くの自由裁量の余地を企業に与える一方,消費者には十分な力を与えていないと不満の声をあげる者もいる。消費者保護団体であるデジタル民主主義センター(Center for Digital Democracy: CDD)のJeff Chester事務局長は,立法案は,消費者のデータをごまかして不当に利用する企業を追い詰める権限を連邦取引委員会(Federal Trade Commission: FTC)から奪うと非難した。これに対してホワイトハウスは,立法案はプライバシーの原則に違反する企業に民事損害を求める権限を,FTCに与えるものであると反論した。Microsoft社は,企業が消費者情報をどのように取り扱うかに関して,消費者の信頼を改善するための最初の一歩として,立法案を歓迎している。業界アナリストたちは,共和党が多数を占める議会で,法案が成立する可能性は低いとみているようである。

  • (http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/legislative/letters/cpbr-act-of-2015-discussion-draft.pdf) (accessed 2015-03-06).

フランスでKindleが違法に

フランス政府は,Amazon社などの電子書籍サブスクリプションサービス(定額制購読サービス)は2011年に制定された「電子書籍価格統制法」に違反していると,2月19日に発表した。Amazon社は,2014年12月11日に,フランス語2万タイトルと英語70万タイトルの電子書籍を対象にしたサブスクリプションサービスを開始した。しかしその2週間後に,Fleur Pellerin文化大臣は,「電子書籍価格統制法」は,電子書籍の販売価格を決めるのは出版社であると規定しており,Amazon社が提供するサービスは法律と矛盾すると思われるとして,フランスの書籍価格設定関連法律のリーガル・オンブズマンであるLaurence Engel氏に,法律上の見解を求めていた。Engel氏は,Amazon社はフランスの法律のもとでは合法ではない,とする法律上の見解を発表した。この見解は競争相手である地元フランスの企業Izneo,Youboox,Youscribeにも適用される。

フィガロ紙によれば,サブスクリプションモデルそのものが違法なのではなく,出版社が自社の電子書籍に限ってサービスを開始することは法的に問題ない。また,カタログに含まれる電子書籍を読むために充当されるクレジットを販売するサービスや,有料ケーブルTVと同様に,特定の出版社と購読契約するために読者に支払いを行わせることは可能と考えられる。Pellerin文化大臣は,上記の見解が当てはまるのはフランスの出版社のみで,自費出版と外国出版社の書籍は,上記の見解の影響を受けないと述べている。

  • (http://the-digital-reader.com/2014/12/23/kindle-unlimited-fire-france/) (accessed 2015-03-06).

Facebook,死後のアカウント管理者を指名する機能追加

Facebookは2月12日,自分の死後のアカウント管理者を設定できる「レガシーコンタクト(Legacy contact)」機能を発表した。ユーザーは生前に,自分の死後にFacebookアカウントを管理する「レガシーコンタクト」を,友人や家族から指名できる。ユーザーが亡くなった場合には,友人などからの申請に基づいてFacebookが確認手続きを行い,該当アカウントを「追悼アカウント」に変更する。その後,レガシーコンタクトに指名されたユーザーは,故人のページにお悔やみのメッセージや葬儀の日時を投稿したり,家族や友人からの新しい「友達リクエスト」に対応したり,プロフィール写真を更新したりできる。これまでも「追悼アカウント」への変更は行われているが,新たな投稿などは行えなかった。また,新たな機能では,レガシーコンタクトは,公開設定になっている写真や投稿などのアーカイブをダウンロードすることはできるが,非公開に設定されているメッセージを見ることはできない。またユーザーは,死後に自分のアカウントを完全に削除するように依頼することもできる。この新機能はまずアメリカで公開し,順次ほかの国にも拡大していく予定(なお,本稿執筆時点では日本ではまだ利用できない)。

  • (http://newsroom.fb.com/news/2015/02/adding-a-legacy-contact/) (accessed 2015-03-06).

Google,インターネットの経済貢献度調査分析を発表

Googleは2月26日,「インターネットの日本経済への貢献に関する調査分析」を発表した。この調査ではビジネスの種類や産業にかかわらず,インターネットが日本経済全体にどのように貢献しているかを広く検討している。特にスマートフォンの台頭から生まれたビジネス領域を新しく「アプリ経済」(App Economy)と定義し,同領域の日本経済への貢献について詳しく分析している。主な結果として,明らかになったのは次の点である。1)2013年度における日本のアプリ経済の市場規模は約8,200億円。2)2014年時点で56.5万人分の雇用を生み出している。3)2011~2013年度にかけて,年平均成長率90%という高い数値を示した。また,インターネットGDP(狭義のインターネット産業の経済貢献を数値化したもの)は2011年の19.2兆円が,2014年には約23兆円に増加し,運輸業に相当する規模にまで成長したことがわかった。

  • (http://googlejapan.blogspot.jp/2015/02/app-economy.html) (http://innovation-nippon.jp/reports/NRI_Internet%20and%20Japan%20Economy_hi.pdf) (accessed 2015-03-06).

Google,検索アルゴリズム変更でモバイル対応サイトを重視へ

米Googleは2月26日,モバイル環境での検索の普及に対応して,検索アルゴリズムの変更を行うことを発表した。4月21日以降,Webサイトがモバイルフレンドリー(モバイル環境でも見やすい)であるかどうかを,検索結果ランキング表示の判断基準に加えるとした。この変更は,世界中の全言語によるモバイル検索に適用され,検索結果には大きな影響を与えるとしている。Webサイトの担当者に向けては,自サイトがモバイルフレンドリーであるかどうかの確認サイトの利用など,アルゴリズム変更に備えるよう勧めている。

  • (http://googlewebmastercentral.blogspot.co.nz/2015/02/finding-more-mobile-friendly-search.html) (accessed 2015-03-06).

紙の本と電子書籍の併売サービス,認知度が課題

電子書籍を扱うBookLiveは3月5日,「紙の本と電子書籍の併売サービスに関する利用実態調査」の結果を発表した。全国の20~50代の男女約2,200人を対象に実施した調査では,「紙の本を買うと電子書籍がもらえるサービス」の認知度は全体の4割強。利用経験者は約10%であることがわかった。利用経験者の約7割は対象作品と気づかずに購入しており,認知度の低さを指摘している。

  • (http://booklive.co.jp/release/2015/03/051100.html) (accessed 2015-03-06).

紙の本をWebから無料出版できるサービス

3月5日,Webサービスを通じて紙の本を無料で作成し,書店で出版できるサービス「∞books(ムゲンブックス)」がサービスをスタートした。ブログのようなWebサービスから原稿を入力すると,必要な余白設定や文字組み,ページ番号などはすべてシステムが自動的に行う。オンデマンド印刷によってすべて受注生産で作成するため,在庫ゼロの出版が実現できるとしている。出版にかかる費用は無料。今まで本を書きたいという潜在的ニーズがありながら,商業ベースに乗らなかったため出版されなかったコンテンツの出版ができるようになるとしている。∞booksは,KDDI株式会社の行うベンチャー育成プログラム「KDDI∞Labo」の第七期プログラム採択案件。

  • (http://mugenbooks.com/files/2015/03/20150305_pressrelease.pdf) (accessed 2015-03-06).

 
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