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年頭所感
年頭所感
濵口 道成
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2016 年 58 巻 10 号 p. 727

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明けましておめでとうございます。本誌をお読みの皆様方,日本の各地で,健やかな新年を迎えておられることと,お慶び申し上げます。私儀,昨年10月1日をもって,科学技術振興機構理事長を拝命いたしました。中村前理事長の改革路線を引き継ぎつつ,JSTの発展に貢献していく所存でございます。この場をお借りし,改めてご挨拶させていただきます。旧来と変わらず,ご指導ご鞭撻(べんたつ)のほどお願い申し上げます。

さて,本年は日本の科学技術政策にとって,大きな節目となる年であります。なぜならば,本年4月より,第5期科学技術基本計画の期間が始まるからであります。今期の科学技術基本計画は第4期までと大きく異なる特徴を持っています。それは,「大変革時代」を予見しつつ,「イノベーションの創出とIoTや人工知能」に焦点を当てているからです。それではなぜ今,イノベーションの創出とIoTがわが国の政策の根幹となってきているのでしょうか。

ヒントは,ピーター・ドラッカーにあります。彼の名著『イノベーションと企業家精神』において,ドラッカーはイノベーションを可能にする7つの契機について述べています。この7つの契機のうち,4種は企業の内部要因として,「予期せぬこと,不調和やギャップ,ニーズ,産業構造変化」を指摘していますが,残り3種は企業外の要因,すなわち「人口構造の変化,認識の変化,新しい知識」を挙げています。

21世紀に入り,15年がたちましたが,人類社会は今大きな転換点にさしかかっています。世界各地で発生するテロや,環境破壊,地球温暖化,食糧危機,資源枯渇など,どれをとっても容易に解決の見つかる課題ではありません。他方,インターネットの爆発的な発展とそれと平仄(ひょうそく)を合わせたロボット,人工知能の開発の進展は,社会の構造を根底から変える強烈なインパクトを与えています。さらにその中で日本は,人類がいまだ体験したことのない「少子高齢化」に直面しています。これらの諸課題の解決法は,従来の延長にあるものではなく,まさしくイノベーションが必要であるといえます。また,ドラッカーの指摘するように,日本の抱えている課題は,イノベーションを可能にする企業外の3要因そのものであり,今日本は最もイノベーションに適した時代を迎えているともいえます。そして,この時代を変革する核にあるのが,まさしく「情報」であるといえます。情報の新時代を描く人材は,日本の未来を開くといっても過言ではないでしょう。本年が,皆様方にとって実り多い年となることを,心より祈念いたします。

  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
  • 理事長 濵口 道成

 
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