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情報界のトピックス
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2016 年 58 巻 11 号 p. 872-873

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ビッグデータへのオープンアクセスに関する協定

国際科学会議(ICSU),インターアカデミーパートナーシップ(IAP),世界科学アカデミー(TWAS),国際社会科学協議会(ISSC)の4つの国際的科学組織は2015年12月7日,研究と政策策定の基盤となりつつある大量の「ビッグデータ」へのオープンアクセスを推進するための協定を発表した。「Open Data in a Big Data World」(ビッグデータの世界におけるオープンデータ)と題するこの協定には,科学的プロセスを守り,発展途上国が世界規模の研究に参加することを可能にする,ビッグデータへのオープンアクセスに関する指針が含まれている。同協定は,データ革命によってもたらされる機会と課題を指摘し,これらが世界規模の科学政策全体にとって利益になるとした。具体的には,科学者,出版社,図書館などのステークホルダーが果たす役割を軸とする,オープンデータの実践に関する12の原則を提言している。

人類全体のための人工知能開発を目指す「OpenAI」

2015年12月11日,非営利の人工知能(AI)研究企業「OpenAI」の設立が発表された。金銭的利益を上げることに縛られず,人類全体のためになる人工知能の発展に取り組むことを目指す。設立発表の声明では「人間レベルの人工知能が実現したときには,自己の利益よりも人類全体の利益を優先させるような指導的研究機関が必要になる。OpenAIがそうした機関になることを期待している」としている。

OpenAIの所長には,機械学習の世界的権威であるイリヤ・サツキヴァ氏が就任。共同会長の1人として,電気自動車メーカーのTesla Motorsや宇宙輸送企業のSpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏が名を連ねている。同氏は以前より人工知能の兵器化を憂慮する発言を行っており,2015年1月には,人工知能の安全性に関する研究を行う非営利研究機関に1,000万ドルを寄付している。OpenAIには,マスク氏をはじめとする設立メンバーのほか,米PayPal共同創業者のピーター・ティール氏などの個人や,米Amazon Web Servicesなどの企業が合計10億ドルの資金を提供して支援する。

政治家が削除したツイートを公開するサービスが再開へ

米Twitterは2015年12月31日に公開したブログ記事で,政治家が自身の公式Twitterから削除した投稿内容を公開するサービス「Politwoops」に関して,同サービスを運営するOpen State Foundationなどとの間で合意に至ったと発表した。Twitterは2015年8月に,PolitwoopsからのAPI接続を遮断しており,Politwoopsは実質的にサービスが行えない状況になっていた。

Twitterのブログ記事では合意の内容を明らかにしていないが,Open State Foundationの声明では,TwitterがAPIアクセスの回復に合意し,Politwoopsでの削除ツイートの開示が行えるようになったとしている。Politwoopsは,政治の透明性を推進する目的で,2010年にオランダでスタートし,現在は30か国・地域以上でサービスを行っている(日本は含まれていない)。8月にPolitwoopsが遮断された時には,Open State Foundationのほか,50の人権団体が抗議していた。Twitterの発表文では,「われわれは,Politwoopsのような公共の場での意見交換に透明性をもたらす団体への支援を続ける責任がある」とする,Twitterのジャック・ドーシーCEOの発言を引用している。

書籍・雑誌に軽減税率適用を求める動き

自民党と公明党は2015年12月16日に2016年度(平成28年度)税制改正大綱を決定し,2017年4月に消費税を現状の8%から10%に増税するが,①酒類および外食を除く飲食料品,②新聞購読料は8%に据え置く軽減税率を適用するとした。現時点で書籍・雑誌等が軽減税率の対象外となったことに対して,関連諸団体から抗議の声が上がっている。日本書籍出版協会,日本雑誌協会,日本出版取次協会,日本書店商業組合連合会の出版4団体は同日,声明を発表し,消費税率10%引き上げ時には,新聞と同様出版物にも軽減税率が適用されることを求めた。

同声明では,出版物は「健全な民主社会の基盤となる重要な知的インフラ」であるとしている。日本図書館協会も2015年12月24日に,図書・雑誌への消費税軽減税率の適用についての継続的検討を強く求める声明を発表した。同声明では,公立図書館の資料費(図書・雑誌・新聞等購入費)が減少の一途をたどっており,消費税が10%に上がると,図書館1館当たりの資料費が883万円(2014年)から803万円になり,利用者が手に取る図書・雑誌が減少すると指摘している。軽減税率の対象品目に関する与党内の議論では,有害な出版物を排除する仕組みが課題となっていた。菅義偉官房長官は書籍・雑誌に軽減税率を適用する場合の対象範囲について,「業界で線引きを決めてほしい」という旨の発言をしている(新聞報道による)。ヨーロッパを中心とする,付加価値税を課している国は,多くが書籍・雑誌・新聞などに軽減税率を設定している。たとえばフランスは標準20%に対して書籍5.5%,雑誌と新聞2.1%,ドイツは標準19%,書籍・雑誌・新聞7%,英国は標準20%に対し,書籍・雑誌・新聞0%である。一方,フランスではポルノ雑誌は軽減税率の対象外とされている。

 
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