今号の冒頭にある「スマートライフケア社会」とは,医療にかかる手間やコスト,病院までの距離を意識することなく,病気や治療から解放され,日常生活の中で自律的に健康を手にすることのできる社会を指しています。そのような社会の実現を目標に据えて,そこを起点に今何をすべきか考える「バックキャスティング的思考」によって導き出されたコンセプトが「体内病院」です。ウイルスサイズのナノマシンが体内を自律巡回し,24時間治療・診断を行うSFの世界を実現しようというプロジェクトです。1月号に引き続きセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムの取り組みをご紹介します。
1月号でもご紹介しましたが,3月に日本でRDA(研究データ同盟)総会が開催されます。1月号では,関連記事として林和弘氏に「オープンサイエンスが目指すもの」をご寄稿いただきました。今号では,関連記事を2件掲載しております。1件が「ビッグデータと個人情報保護法」です。研究データの共有が期待される昨今,そのデータにパーソナルデータが含まれる場合の留意点とともに,個人情報保護法改正の動向もお伝えします。
RDAに関連したもう1件は,「わが国における政府統計のデータシェアリングの現状と課題」です。統計情報に関して弊誌では2011年から2012年にかけて「統計情報活用への招待」15回,その後2013年にかけて「新興地域の統計事情」10回の連載を行いました。今回は政府統計のデータ共有を取り上げます。
2015年9月号で「変体仮名のこれまでとこれから」を取り上げました。今号の「古典籍翻刻の省力化」では,くずし字を含む古典籍が,新方式OCRによる検証実験で高精度の自動テキストデータ化を実現した話題を取り上げます。現代人にとってくずし字を読むのは困難です。くずし字で書かれた文章を現代通用の文字に置き換える作業(翻刻)の省力化を図る最新技術について解説します。(KM)