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情報管理
Vol. 58 (2015) No. 4 p. 306-308

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http://doi.org/10.1241/johokanri.58.306

リレーエッセー

つながれインフォプロ 第21回

ししょまろはんとは

「ししょまろはん」注1)とは,主に京都府立図書館で働く図書館司書で構成された業務外の自主学習グループである。代表の是住久美子の呼び掛けによって2013年6月に結成され,現在は16人が所属している。当初は京都府立図書館の正規職員と非常勤嘱託職員のみがほぼ同数所属していたが,現在は国立国会図書館関西館や京都府内の学校図書館に勤務する者もメンバーとなっている。

活動日や活動場所は,明確に固定されてはいない。話し合いたい議題や目新しい情報があればメーリングリストで共有され,それぞれのメンバーが必要に応じて集まりを呼び掛ける。昼休みや終業後など,ごく気軽に集まりが開催できるのは,メンバーの多くが同じ職場にいるグループならではの利点だろう。

発足理念についても確固たるものがあるとは聞いていないが,メンバーの1人である筆者としては,「京都の司書が集まって,みんなの役に立ってうちらの勉強にもなる面白いこと,できひんかな?」というようなものだと理解している。自主学習グループと名乗ってはいるものの,勉強やディスカッションの場というよりは,個々の「できひんかな?」を「やってみよ!」にする実験の場としての意味合いが大きい。実際の活動からそれぞれが学び,そして得た知見を共有することで,結果的に司書としての研鑽(けんさん)が行われている。

メンバーによって活動へのかかわり方もまったく異なり,後述の「京都が出てくる本のデータ」のためにひたすら本を読んでデータを作成する者,図書館やオープンデータに関係するイベントに参加して情報収集を行う者,Twitterなどを利用してWebでの発信を行う者(1),デザインや広報を担当する者など,個々の関心や能力を生かして活動を行っている。現在も,ししょまろはんの中ではいくつかの活動が行われ,また企図されているが,本稿ではその中でも核となっている3つの活動を紹介したい。


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図1 ししょまろはんTwitter https://twitter.com/shisyomaro_han

京都が出てくる本のデータ

丸善には檸檬(れもん)が置かれ,鴨川デルタではホルモーが行われ,至るところで殺人事件が発生するのが,小説の中で描かれる京都である。ししょまろはんでは,京都が舞台になっている小説や漫画等のデータを作成し,「京都が出てくる本のデータ」注2)として公開している。メンバーが実際に京都の登場する本を読み(2),図書の書誌,作品に出てくる土地の位置データ,お勧め度や内容の簡単な紹介文,さらにWeb NDL Authorities注3)の著者名の典拠URIを加えて作成している。データはししょまろはんメンバー共有のGoogleスプレッドシートに蓄積し,メンバーの誰もが気軽に編集できるようになっている。

「京都が出てくる本のデータ」はLinkData.org注4)の機能を用いてRDF形式に変換し,クリエイティブ・コモンズライセンスCC-BY(著作権表示を主な条件として,改変や営利目的での二次利用も許可する)でオープンデータとして公開している。現在1,200回以上ダウンロードされ,スマートフォン用アプリ「ご当地なび」注5)のコンテンツとしても組み入れられた。ししょまろはんには今のところアプリを開発できるようなメンバーはいないが,作成したデータをオープンデータとして公開することによって,より多くの人々にアプリという形でデータが活用されることとなった。このような広がりは,まさにオープンデータの長所と可能性を示しているといえよう。


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図2 「京都国際マンガミュージアム」で京都が出てくる漫画を探すメンバー

京都レファレンスマップ

ししょまろはんが作成しているもう1つのオープンデータがある。それが「図書館員が調べた京都のギモン 京都レファレンスマップ」注6)である。国立国会図書館の「レファレンス協同データベース」に蓄積されたデータの中から京都に関する事例をピックアップして,URLと質問文を引用し,位置情報等を付与してデータを作成している。

たとえばパソコンやスマートフォンでその地図を開くと(3),あちこちにピンが立っている。その中から京都御苑に立つピンをクリックすると,「明治初期に京都御所内にあった京都博物館について知りたい」という文などが掲載されたタグが表示される。御所の中に博物館があったの? と,さらにタグ内のDB-URLをクリックしてみると,1875(明治8)年4月に京都府営の博物館が京都御所の旧米蔵を借りて開館していたこと,約8年で閉館してしまったが,所蔵品が現在の京都国立博物館に引き継がれていること,その歴史がどういった資料に記されているかなどがわかる。


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図3 京都レファレンスマップ

京都まち歩きオープンデータソンへの協力

「まち歩きオープンデータソン」とは,参加者が史跡や観光スポットを歩き,得た情報をオープンデータにするイベントで,本連載の第18回(情報管理. vol. 57, no. 12)で日下九八さんが紹介している「ウィキペディアタウン」注7)と,フリーの地理情報データを作成する「OpenStreetMapマッピングパーティー」を組み合わせたものである。ししょまろはんは京都で開催されるこれらのイベントで,図書館での地域情報の調べ方の案内,著作権についてのレクチャー,関連資料の提供などを行っている。

おわりに

京都府立図書館の入り口付近にあるベンチを見て,目を輝かせてはしゃぐ人々がいる。その人々の目に映っているのは,ありふれた青いベンチではなく,アニメ『けいおん!!』のキャラクターが座り,話し,ドラマを繰り広げたベンチだ。創作作品のファンが作品に関係する土地を探訪する――いわゆる「聖地巡礼」をしている人々は,みな,とても生き生きとしている。

聖地巡礼に限ったことではない。ある知識を得ることによって,毎日のように通っている道が,いつも何気なく目に入っているはずの風景が,急に豊かな色彩を帯びて見え始めることがある。情報によって土地が物語をもち,意味をもつ。土地自体には何の変化もなくとも,知ることによって見る目が変わり,そこに価値とさらなる興味が生まれる。興味とは「もっとそれについて情報を得たい」という感情で,情報を求める人々をサポートするのは,まさにインフォプロの本分であろう。「京都が出てくる本のデータ」も,「京都レファレンスマップ」も,「まち歩きオープンデータソン」への協力も,ある情報と土地とをつなぎ合わせてそのデータを発信し,世界と共有する試みといえる。私たちは「情報の需要」を探すだけでなく,発信することで自らそれを作り出すこともできるのだ。

知識を得て,興味をもつことで,私たちが生きる世界はもっと輝いて見え始める。ししょまろはんの活動が,その一助となることを願っている。

執筆者略歴

  • 柴田 祥衣(しばた さちえ)

ししょまろはんメンバー。京都府立総合資料館歴史資料課を経て,京都府立図書館に勤務。現在は新聞に関するレファレンス等の業務を行っている。

本文の注

注1)  ししょまろはんラボ. http://libmaro.kyoto.jp/

注2)  京都が出てくる本のデータ. http://linkdata.org/work/rdf1s1294i

注3)  Web NDL Authorities. http://id.ndl.go.jp/auth/ndla

注4)  LinkData.org. http://linkdata.org/

注6)  図書館員が調べた京都のギモン 京都レファレンスマップ. http://linkdata.org/work/rdf1s1534i

注7)  日本で開催されたウィキペディアタウンのアーカイブ

http://ja.wikipedia.org/wiki/プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン/アーカイブ

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