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リレーエッセー
つながれインフォプロ 第22回
小林 隆志
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2015 年 58 巻 6 号 p. 471-473

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いつの頃からだろうか。出張等で東京に出かける際に,いわゆる専門図書館を訪問する機会が増えていった。ジェトロビジネスライブラリー,機械工業図書館(現BICライブラリ),自動車図書館,東京文化会館音楽資料室,講道館柔道資料館・図書館,日本サッカーミュージアムのレファレンス資料室などなど。

訪問の目的は当時鳥取県立図書館でスタートしたばかりのビジネス支援事業の情報提供機能を補完するためと,お客さまからいただいた資料相談の回答を調査するためであった。その時の私の印象は,「やはり専門図書館のコレクションはすごい」「これらの資料群を手に取って調べることができる都市部の人たちが羨(うらや)ましい」ということであった。

このある種の情報格差(digital divide)を解消できるように,ここ数年専門図書館と公共図書館の連携構築のためにかかわってきたことを振り返ってみたい。

ある年の全国図書館大会に参加して

某年某月に某市で開催された全国図書館大会の分科会で,事例発表の機会をいただいた。専門図書館協議会が主催するこの分科会では,「館種を超えて絆を結ぶ」をテーマに掲げていた。「公共図書館と専門図書館の連携の必要性について」と題した30分ほどの発表は終了後,無事「めでたしめでたし」となればよかったのだが,この時私には大きな違和感が残ってしまった。

公共図書館中心の分科会は某会館を中心に会場が設定されていた。しかし,大学・高専図書館,学校図書館,そして私の参加した専門図書館のそれぞれの分科会が某会館から1.6キロも離れた別会場に設営されていたのだ。館種を超えた図書館の連携の必要性が唱えられて久しいが,これでは互いの交流どころか発表・討議を聞くこともできなければ意見を交換することもできない。

そもそも,それぞれの図書館は館種ごとの研究組織があり全国規模の大会も行っている。あえて全国図書館大会に分科会を設定することの意義がわかりにくくなってしまう。全国図書館大会の開催は,館種を超えた多くの図書館関係者が集うことに意義があると思う。この人たちが一緒になって現代的な課題について意見交換できる,そんな図書館大会の開催を願っている。

「見つかる図書館」に導く~図書館横断検索のその先へ専門図書館と他館種図書館と利用者をつなぐ新しい試み

これは2014年11月,横浜で開催された「第16回図書館総合展」で,フォーラムに登壇した際のテーマである。一緒に登壇した株式会社カーリルの社長吉本龍司氏は,壇上で「現在カーリル内では,専門図書館の横断検索を構築中である」と報告された。私はこのシステムが世に出ることを心から期待している。

横断検索システムの構築という点では,都市部も地方も関係なく利便性が向上することは間違いないと思われるが,その先の資料を取り寄せて利用することまで考えると,やはり地方の図書館にとってのメリットが大きいように思われる。専門図書館の資料が地方の公共図書館で活用できる環境を整備していくための重要な要素は,地方にいながらにして専門図書館の資料を探すことができることである。飛躍的な利便性の向上は,両者の距離をぐっと近づけてくれるに違いない。

「情報ナビゲーター交流会」の開催

専門図書館と公共図書館の連携を実現するためには,互いのことをよく知ることが大前提で,互いの機能や人を知らずして連携は進まない。それならば互いの図書館を紹介するミニプレゼンと,人がリアルにつながるための名刺交換会をセットにしたイベントを行ってはどうかと,BICライブラリの結城氏とともに企画したのが「情報ナビゲーター交流会」である。

第1回から4回までの参加者の推移は,105名→70名→121名→147名と,2回目こそ減少したが,その後は確実に増えている。第4回(2015年6月13日)(1)に至っては,北は北海道から南は熊本・宮崎まで全国各地から参加者が集まった。これは,専門図書館と公共図書館の交流は確実にニーズがあるということを示している。今後もこの活動を続けて,専門図書館と公共図書館の関係強化に貢献できればと思う。

図1 「第4回情報ナビゲーター交流会」の会場風景

ビジネスライブラリーのこれから「専門図書館と公共図書館の連携が生み出すもの」

2015年6月に「2015年度専門図書館協議会全国研究集会:第4分科会」の研究集会に招かれ,多くの専門図書館関係者の前で,「連携が求められている背景」「連携の意味と新たに生み出される価値について」を述べた(2)。いわば専門図書館の本丸に飛び込んで公共図書館との連携を訴えてきたことになる。

「公共図書館は,公共図書館同士の連携だけでは提供しえなかった資料群を専門図書館と連携することで利用者に供することができる可能性が生まれる。一方,専門図書館にしてみれば,これまで直接来館されるお客さま中心であったサービスが,地方の公共図書館が中継してくれることにより,全国の情報を求めている利用者をターゲットにサービスを展開できる可能性がある。これだけ単純なわかりやすい連携の効果はない。専門図書館の皆さん,ぜひ,全国の公共図書館のサポートをお願いしたい」と訴えた。

専門図書館にしてみれば突然利用が増えたらどうしようという漠然とした不安があるのではと推測するが,おそらく,そんなに急激な変化は起こらない。ある日突然,専門図書館の業務が回らなくなるほど増加することはないだろう。なぜならば最終的に公共図書館の利用者の資料相談の内容が高度化しなければ,専門図書館に相談する事例が発生しないからだ。

利用者に図書館のビジネス支援機能が浸透し,難しい資料相談が持ち込まれるという状況に至るには,当館の経験では10年ほどかかっている。そう簡単には普及しないのである。専門図書館の皆さまには「どうぞ怖がらないで,堂々と全国の公共図書館をサポートする」と宣言していただきたい。

講演終了後の名刺交換の列はいつもより長く続いていた。これは,多くの皆さまの共感が得られたことを証明している。この成果を,2016年に開催予定の「第5回情報ナビゲーター交流会」につなげていきたいと考えている。

図2 「2015年度専門図書館協議会全国研究集会:第4分科会」で発表する筆者

執筆者略歴

  • 小林 隆志(こばやし たかし)

2003年,鳥取県の司書職として採用される。採用初年度から館内でスタートしたビジネス支援事業にかかわり現在に至る。同志社大学嘱託講師。ビジネス支援図書館推進協議会理事,日本図書館協会認定司書No.1043。

 
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