2015 年 58 巻 6 号 p. 479-480
カーリルってなんて軽いのだろう。
それが私のカーリルの第一印象だった。サクサク動いて軽い。それ以上にデザインと色(黄色+水色,検索中は魚が泳いでいる!?)が軽い! このカーリルを作った人に会って,ぜひ話を聞いてみたい。そんな願いがかなって,「第27回情報活動研究会」注1)の運びとなった。
当日会場にお越しいただいた株式会社カーリルの代表取締役吉本龍司氏を見て,一目で納得した。ずいぶんと若く(32歳),思い描いていたスーツ姿の社長とはまったく異なり,Tシャツとラフな服装で登場された。そして40名のオーディエンスへのフレンドリーで非常にわかりやすい講演内容。カーリルのミッションは,日本の図書館をもっと楽しくすること,これがすべてを物語っているように感じられた。
カーリル1)とは,2010年3月に始まった日本最大の図書館蔵書検索サイトである。複数の図書館をまとめて検索でき,全国6,600館以上の図書館に対応しているにもかかわらず,民間企業(株式会社カーリル)が運営している。また公共図書館の93%を網羅している。
吉本氏は高校1年の時,地元の郷土史をデジタル化したのをはじめ,高校3年のときにドキュメンタリーを作成し,その後起業された。カーリル以前には地元岐阜県中津川市の子育て支援サイト「子育てマイページ」で防災メールシステム,予防接種や乳幼児健診のスケジュールサービスのWebサイトや携帯を使った行政サービスを行っていた。その打ち合わせのために図書館に行ったところ,図書館サービスがあまりにも使われていないということを初めて知ったそうだ。
カーリルが誕生するまではたったの2か月。吉本氏はじめエンジニア数人で新しいWebサービスを作ろうと地元中津川で開発合宿したところ,100~200ほど出てきたアイデアのうち,普段はまったく使われていない図書館サービスに絞り,24時間程度でユーザーインターフェースを試作,2か月後にはサービスをリリースしたという。それがまたポップで可愛いデザインでわかりやすく,楽しく,使いやすくてとても動作が速い。吉本氏は子どものころ,地元の図書館に通ったことがなかったのだという。図書館サービスの既成概念がなかったからこそ,このような柔軟で自由な発想に至ったのではないかと推測した。
カーリルのネーミングは発表の前日に決定したそうだ。それまではカリールだったという。
課題(ライセンス,社会的合意の形成,オープンデータ思想,amazon未収録本,ISBNが無いあるいは間違っている本等)もあるがそれらを乗り越えて発展している。現在は図書館に位置情報サービスを加えたhaika projectという書架案内図,配架図サービスを実験中で,haika projectが完成すると本を探せる図書館になるそうである。スマホで,読みたい本が全国どこにあるかがすぐにわかり,借りに行った図書館内で迷子になることもなく,すぐに目的の本に巡り会えるとは素晴らしい。
さらに図書館のビッグデータの分析を研究中とのことだった。今後ますます新しいアイデアで図書館を楽しく便利にしていただきたいと感じた。
情報活動研究会(INFOMATES)では,毎回楽しい話題のテーマを紹介していますので,ふるってご参加ください。
(住商ファーマインターナショナル株式会社,INFOMATES運営委員 仲美津子)