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リレーエッセー
つながれインフォプロ 第23回
和田 拓真小西 道人木村 到牧野 雄二
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2015 年 58 巻 7 号 p. 560-563

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1. ヴィアックスICT研究部会とは

ヴィアックスでは,現在,公共図書館67館の受託運営を行っている。ヴィアックスICT研究部会(以下,ICT研究部会)は,最新の情報技術や情報サービスを調査・研究し,それらを担う人材を育成するとともに,図書館サービスへの活用について研究し実践することを目的とした勉強会である。また,ヴィアックスでは社員研修の一環であり業務として研究部会に取り組んでいる。2010年に発足し,弊社が受託運営する図書館司書を中心に毎年20名前後で活動しており,定例のICT研究部会は年6回開催している。なお,Facebookで活動の様子などを公開している注1)

前述した目的を推進していくため,近年では,その活動を「インプットの活動」(今後の提案に向けて,新しい情報技術や情報サービスについて学ぶ活動)と「アウトプットの活動」(ICT研究部会として継続して行うもので,部会活動の成果を出していく活動)との組み合わせにしている。本稿では,ICT研究部会について「2. インプットの活動」と「3. アウトプットの活動」に分け,紹介していきたい。

2. インプットの活動

定例の勉強会において,新しい情報技術や情報サービスについて学ぶためのワークショップを行っている(1)。部会員が講師を務めるほか,図書館でのICT活用にかかわる外部の有識者を招くなどもしている。この活動は部会員が勤務する図書館サービスの充実化に着実につながってきており,その中から3つの事例を紹介する。

図1 定例勉強会でのワークショップの様子

2.1 立川市柴崎・上砂・多摩川図書館の事例

立川市の柴崎・上砂・多摩川図書館のWebサイト注2)は,単なる広報だけではなく,Webでの図書館サービス機能を充実させている(2)。

当Webサイトでは,立川市での所蔵資料だけではなく,外部の資料も検索できる「OPACプラス」や,Fujisan RSSとGoogle Feed APIを利用した,受け入れ中の雑誌最新号の目次情報を自動で表示する「雑誌目次速報」などを中心に展開している。WordPress注3)を利用し,機能の追加や,柔軟なデザイン変更などもできるものとしている。

担当としても,ICT研究部会でのワークショップで実際にプログラムを書いた経験などから,今後の図書館に求められる情報サービスに対する好奇心が高まったことで,必要な知識を身に付けることに役立っている。

図2 立川市柴崎・上砂・多摩川図書館のWebサイト

2.2 江戸川区立松江図書館の事例

江戸川区立松江図書館では,2014年10月に謎解き探検「ホーンテッド・ライブラリー ~カボチャ怪人Jからの挑戦状~」と題したティーンズ世代を対象にした図書館探検ツアーを開催した。このツアーでは,ICT研究部会で体験したAR技術注4)を使ったアプリも活用した。

当ツアーは,参加者に問題集を配り,「謎(問題)」を解きながら,図書館を脱出することを目指すものである。この「謎(問題)」はすべて図書館に関するものであり,「館内を実際に巡りながら,楽しみつつ図書館のことをもっと知ってもらおう」ということを目指し企画されている。

使用したのは,「ビジョンベース型(マーカー&マーカーレス型)」と呼ばれるものである。事前にターゲットに使用する画像と,閲覧用アプリ経由で見たときに表示する画像(今回,前者はカボチャのイラスト,後者は数字の画像)を準備し,専用のフリーソフトで設定などを行い,QRコードを作成する。画像(カボチャのイラスト)とQRコードを紙に印刷して,書架などに貼り付けておいた(3)。

参加者には1人1台のタブレットPCを貸与し,ツアーの説明では閲覧用アプリの使用方法について実演を交えながら解説した。

開催にあたっては,プログラミングなどの専門知識が必要ではないため,AR技術をどのような形で組み込んでいくかを決めることができれば,容易に活用できると感じた。

なお,2015年7月に実施した児童向け「たんけんツアー」でも同様の手法を活用し,同年11月予定の2回目のティーンズ向け探検ツアーでもさらに活用したいと考えている(4)。

図3 探検ツアーで使用したカボチャ画像とQRコード
図4 探検ツアーの様子

2.3 中野区立図書館の事例

中野区立図書館のWebサイト注5)では,所蔵検索に併せてWebで公開されている複数の電子資料のサービスを検索し閲覧できる「OPAC&電子ブックサーチ」を提供している(5)。ICT研究部会員を中心に導入作業を行い,ICT研究部会で同システムについて学ぶなどしながら,2014年7月にサービスを公開した。

「電子図書を読む」と「電子雑誌・新聞(記事)を読む」機能があり,トップページの検索窓にキーワードを入れ,それぞれ4つのサービスの検索結果を表示できる。前者では,青空文庫,近代デジタルライブラリー,Google Books,Project Gutenbergを,後者は,CiNii Articles,Google Scholar,新聞社のWebサイトの横断検索,中野区報などの横断検索の結果を表示する。

なお,中野区立中央図書館では,館内限定の電子書籍閲覧サービスや,国立国会図書館デジタル化資料送信サービスなども提供している。システム担当として,これらの機能の紹介も含めた「情報検索講座」を,レファレンス担当と共同で利用者向け講座として毎年数回開いている。今後も,ICTが急速に進展する中,利用者自らが自身の問題を解決できるようサポートしていくことが,今後の目標であり課題と考えている。

図5 中野区立図書館のWebサイト

3. アウトプットの活動

公共図書館が実施すべき情報リテラシー支援として,ICT研究部会が発足当初より提案し実施しているタブレットPCでの講習会が人気であり,継続して行っている(6)。タブレットPCを30台ほど,会社として所有しており,部会員が中心に講師をしている。

また,他の活動も含め,継続して実施しているものについては,グループ分け(現在は2班)をし,内容の充実化等を目指している。「情報リテラシー支援班」では,タブレットPCでの講習会を中心として,各館で開催していけるような環境づくり(教材作成や,その共有など)や,講習会で扱う内容の充実化を進めている。機器の体験や情報検索だけでなく,電子書籍や写真をテーマにしたものも企画し開催している。「PC困りごと支援班」では,図書館における機器やソフトの使い方などにかかわる,ちょっとした困りごとの支援のためのマニュアル作成などをしている。公共図書館員の中にはICTに苦手意識をもつ者も多くいる現状に即した活動である。

図6 タブレットPCでの講習会の様子

4. 今後のICT研究部会

今後も継続して,公共図書館でのICT活用のため,底上げのスキルアップや体制の構築を目指していく。アウトプットの時間で触れた情報リテラシー支援も,より効果的なものを目指し「+(プラス)楽しむ」をテーマに,サロン形式での実施なども検討している。

また,公共図書館では,情報サービス機関として求められている,ディスカバリなどのサービスシステムの提供に向けた活動や,提供できるデータをオープンデータとして提供することなど,検討すべき課題が多くあるが,取り組みが遅れているのが現状である。これまで「つながれインフォプロ」で紹介されてきた他の勉強会の活動も参考にさせていただきながら,ICTを活用した公共図書館のサービス充実のため,活動していきたい。

執筆者略歴

執筆者集合写真:左から木村到氏,小西道人氏,和田拓真氏,牧野雄二氏

  • 和田 拓真(わだ たくま)

区立図書館の責任者を経て,31歳で現在の責任者(館長業務)になる。部会に2年目より参加し,タブレットPC講座の講師を行う。勤務するまで図書館利用経験はゼロだったが,ICT研究部会で目覚める。黒人音楽大好きなドラマーの一面もある。

  • 小西 道人(こにし みちと)

大学卒業後,大学図書館・大学院図書室を経て,2013年4月に株式会社ヴィアックスに入職。現在は江戸川区立松江図書館チーフとして勤務し,主に庶務,行事,資料管理を担当。まれにおはなし会で絵本を読んでみたり,図書館経営について考えたりしている。

  • 木村 到(きむら いたる)

中野区立中央図書館 システム部門 業務副責任者。都内公立図書館(主に一般書,児童書担当)を経て,2013年より現職。主に利用者対応と図書館システムの保守運用を担当している。

  • 牧野 雄二(まきの ゆうじ)

筑波大学図書館情報専門学群を卒業後,茨城県結城市ゆうき図書館勤務を経て,現在は株式会社ヴィアックス図書館事業本部勤務。ICT研究部会には事務局メンバーとして参加している。

本文の注
注1)  VIAX ICT 研究部会. https://www.facebook.com/viaxictrg, (accessed 2015-08-13).

注2)  立川市柴崎・上砂・多摩川図書館ホームページ. http://www.viax-tachikawa-lib.jp/, (accessed 2015-08-13).

注3)  WordPressとは, オープンソースで提供されているブログシステム/CMSである。詳細については, 以下を参照。

https://ja.wordpress.org/

注4)  Augmented Reality, 拡張現実。

注5)  中野区立図書館. https://www3.city.tokyo-nakano.lg.jp/tosho/index.asp, (accessed 2015-08-13).

 
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