2014年の11月号にも,ノーベル賞受賞のことを書きました。本年は,大村智氏の生理学・医学賞と梶田隆章氏の物理学賞のダブル受賞という明るいニュースが届きました。弊誌のコンテンツが登載されているJ-STAGEには受賞者の論文が多数収録されています。ごらんください。
今号の「科学技術の変容と21世紀のビジョンと思考力」をお読みになって,違和感をもった方もおられるかと思います。なぜ弊誌が過去の政治リーダーのメッセージに言及する記事を掲載するのか,と。実は,弊誌は以前からこのような記事を掲載していました。上記の記事は,1990年代から歴史を振り返り,今を考える複数のシリーズを弊誌に執筆された有本氏による寄稿です。
「科学技術関係者は日常に流されることなく転換期を自覚して,自らの社会的役割と責任について,歴史的,社会的,哲学的な思考を深める必要がある」。この有本氏の言葉は,過去から学ぶ記事を弊誌が掲載する理由でもあります。
今号も「人工知能」に関連する記事を掲載しました。松尾氏の記事は,ディープラーニングに焦点を当てています。長尾氏の記事は,言語処理に伴う困難について説明しています。日頃感じている困難が,言葉を扱ううえで避けられないものだということがよくわかります。
「スマートな農業」は,情報科学技術が問題解決に不可欠な例として取り上げました。昨今よく目にする「データ駆動型科学」が鍵になります。
「国際情報オリンピック(IOI)」は,情報関連の実務者にもまだ十分知られていないようです。2018年のIOI日本開催に向けて,情報オリンピックの取り組みがより広く知られ,次世代の育成に結びつくことを望みます。
科学や医学の難しいことは専門家に任せておけばよいという時代から,市民ひとりひとりが問題に向き合い考える時代へと変わっています。情報に関連した基礎となる知識を,わかりやすく伝えたいといつも考えています。(KM)