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国際基督教大学図書館のサービス:利用者教育を中心に
紀平 宏子
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2015 年 58 巻 9 号 p. 657-665

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著者抄録

国際基督教大学図書館では,提供する資料やサービスの利活用を促進するべく,1970年代から積極的に利用者教育を行ってきた。近年では,ターゲット層ごとに内容と難易度に差をつけた複数のプログラムを用意することで,多角的なサポートを行っている。本稿ではそれらを,レクチャーや講習会など「Face to Faceで行う利用者教育」と,リソースガイドやパスファインダーといった「Webを活用した利用者教育」の2つに大別し,その概要を紹介する。

1. はじめに

国際基督教大学(以下ICU)は1953年,日本で初めてのリベラルアーツ・カレッジ1)として建学された。現在,在学生は約3,000人で,建学以来の少人数教育を今もなお貫いている。教育の特徴である「バイリンガル教育」を実現させるため,4月入学生は1・2年次にリベラルアーツ英語プログラム(English for Liberal Arts Program,以下ELA)を通じ,日英どちらで開講される授業にも対応できる力をつけていく。さらに,2年次の終わりに31の専修分野(メジャー)の中から自分の専門領域を1つもしくは複数決定するメジャー選択制度により,学問分野の垣根を越えた学びが可能となっている。

ICU図書館は建学とともに設置され,以来学生の学びの中心に位置し続けてきた。リベラルアーツプログラムの自己点検報告書(2005年)注1)に「図書館を利用した教育はICUのリベラル・アーツ・カリキュラムの中核をなす」と記されているように,図書館は,当校のリベラルアーツ教育を支える重要な存在である。建物の構造としては新旧2館(主として紙媒体の資料を所蔵する「本館」と,コンピューターやグループワークのためのエリアで構成された「ミルドレッド・トップ・オスマー図書館」)を渡り廊下でつなぐかたちで構成されている。蔵書数約80万冊のうち約46%を洋書が占め,配架は和洋混配である。図書の利用率は高く,学生の年間平均貸出冊数51.8冊2)は全国平均8.5冊3)の約6.1倍となっている。

ICU図書館の特徴的なサービスとして,貸出冊数が無制限な点に加え,リザーブブック制度がある。これは教員が指定した講義関連図書の貸出期間を短縮し,広く受講生が利用できるようにする仕組みである。

また企画展示に力を入れており,テーマに沿った図書を3,4週間ごとに本館1階特設コーナーに展示している。2014年6月には図書館に納品されて以来貸出回数が0回の本を集めた展示「誰も借りてくれない本フェア」がSNSを中心に話題となった。

ICU図書館は1994年から論文や雑誌・新聞記事のデータベースを導入し,予算を多く割いてきた。しかし近年は価格の上昇が顕著で,値上げされたデータベースに関しては前年度以上の利用がないと必然的に費用対効果が下がる状況となった。一方で,これまで紙媒体で提供されてきた雑誌が相次いで電子化される中,学生や教員の研究にはデータベース活用スキルが必要不可欠となっている。そこでICU図書館ではデータベース利用率および活用スキルのアップを目的として,利用者教育をさまざまな形で展開することとなった。本稿ではそれらを「Face to Faceで行う利用者教育」「Webを活用した利用者教育」の2つの切り口から紹介していく。ICU図書館は一般公開はしていないが,サービスの一端をここに記すことで読者の皆さんの参考になればうれしく思う。

2. Face to Faceで行う利用者教育

2.1 「ELAでの情報探索レクチャー」

ICU図書館では1970年代から利用者教育を実施してきた。たとえば学生に対する情報リテラシー教育として,4月入学生必修のELAの授業の一部には「情報探索法」を組み込んでいる。具体的には1年生に年間2コマ,2年生に1コマ,図書館員が講師を務める「ELAでの情報探索レクチャー(以下,ELAレクチャー)」の受講を義務付けている。それぞれのレクチャーで取り扱う内容は1の通りである。この3コマのレクチャーを通じ,学生たちは紙媒体の資料だけでなく,データベースを用いた新聞,レファレンスブック,統計,そして雑誌論文の探索法を身に付けていく。またアカデミックライティングに役立つWebツールやサービスなど,図書館提供のリソースに関する知識も深めていく。

「ELAレクチャー」の特徴としてまず挙げられるのは,講師を常勤の全図書館職員で担当している点だろう。レクチャーはメイン担当・サブ担当の2人1組で実施されるが,館長を除く12人が交代で担っている。もちろん中には日常的にデータベース管理に直接携わっていない職員もいるが,当館に関していえばこの仕組みは非常にうまく機能しているように感じている。なぜならレクチャー講師を担当することで,日進月歩のデータベース機能や情報収集テクニックをキャッチアップできるからである。加えて,レクチャーというリアルな現場を通じて学生のITスキルやニーズを把握することは,よりよい図書館サービスを提案・提供することに役立つ。全員がそれぞれレクチャーの準備をすることの負担は大きいが,文献探索に関する知見を共有し,利用者の現状を理解しているということが,総合的な図書館職員力の維持につながっていると感じている。

なお,レクチャーの内容は実践的なものになるよう設計している。ELAではリーディングやディスカッションの題材として人種差別やプロパガンダなど社会的問題を取り扱うが,図書館レクチャーの演習問題でも授業と連動したテーマを扱う。ELAで使用するキーワードを使って一度論文や記事探索のデータベース演習を行うことで,学生が後々1人で検索する際に容易に応用できるようにするのが狙いだ。

また講師から学生への一方的なレクチャーにならないよう,グループワークが必要な問題を用意している。たとえば,データベースの検索結果から問題を出し,グループごとに解答を発表してもらうことでレクチャーに双方向性が生まれる。ICUは1コマ70分制のため,短時間の中,かなり盛りだくさんな内容となっているが,昨今の学生はITスキルの能力が高く,のみ込みが早いため,ほとんど後れを取らずについてきてくれるのは非常に頼もしく感じる。

毎回「ELAレクチャー」後にはアンケートを実施しているが,満足度は高い水準を保っている。2015年春学期に実施した最新のレクチャーのアンケートでは「本日紹介したデータベースは,これからのELAでの学びに役に立つと感じましたか?」という質問に対して,「とてもそう思う」が75%,「そう思う」が22%という結果であった。自由記述欄では「今後のライティングに活用していきたい」という意見が多くみられ,これらのレクチャーからELAでの学びへと,動線が確立していることがうかがえる。

表1 「ELAでの情報探索レクチャー」の概要
タイトル 対象 内容
アカデミックライティングのための資料収集法1 1年生 OPACの操作方法,レファレンスブック・新聞データベースの使い方,ライティング支援ツールやサービスの紹介
アカデミックライティングのための資料収集法2 1年生 雑誌論文データベースの使い方,ライティング支援ツールやサービスの紹介
Research Writingのための図書館レクチャー 2年生 二次文献情報データベース・リンクリゾルバの使い方,文献情報管理ツールの紹介

2.2 「月例データベース講習会」

一方で前述のアンケートでは「個別のデータベースの検索方法についてさらに深く学びたい」というコメントが毎回少なからず見受けられる。そこで2014年2月から新たに「月例データベース講習会」をスタートした(1)。研究分野の別なく全般的に使えるデータベースの紹介をする「ELAレクチャー」に対し,この講習会では1つのデータベースをじっくりと掘り下げていく。具体的には月1回,データベース提供元から講師を派遣してもらい,学生は図書館内にあるマルチメディアルームで実際にコンピューターを操作しながら検索方法を学ぶ。ICUには毎週火曜日の4限にコンボケーションアワーと呼ばれる全学的に授業がない時間帯があるため,「月例データベース講習会」はこの時間に開催し,関心を持つ学生・教員は誰でも参加できるようにしている。また取り上げるデータベースは特定の分野に偏らないように配慮し,講習会で配布された資料や実際の映像は後日学内者専用サイトにアップするなどフォローアップに力を入れている。

当館では2014年2月から2015年3月までの間に計17回の講習会を実施し(2),各回の参加人数の平均は約31名であった。任意参加の講習会としてこの数字はかなり多いようで,講師からしばしば驚かれる。講習会後のデータベース利用率の変化を分析したものが2である(データベース利用率は大学の学年暦と呼応して月ごとに顕著な変動がみられるため,比較は「データベース講習会実施後3か月のセッション数を前年度の同期間と比較する」というかたちを取っている)。比較すると多少の差はあるにせよ利用率は総じて上昇しており,講習会開催の効果を感じている。

アンケート結果もポジティブなものが多い。「講習会に参加してよかったですか」という質問に対し,昨年度は「とてもそう思う」54%,「そう思う」44%という結果を得た。また自由記述欄でも「もっと早く来ればよかった」「これからも積極的に参加したい」といったコメントが多く,参加者の高い満足度を確認できた。参加者を分析すると学部生8割,大学院生1割,残りが教職員となっているが,こういったさまざまなステータスの参加者におしなべて満足感を与えられているのは非常にうれしく感じる点である。

図1 「月例データベース講習会」の様子(2014年6月)
表2 「月例データベース講習会」の参加者数
図2 「月例データベース講習会」後の利用率の変化

2.3 「ゼミ・クラス向けレクチャー」

このほか,図書館では教員からの個別の依頼に応じ,授業ごとにカスタマイズしたレクチャーを随時実施している。これは特定の授業を履修する学生に向けて専門性の高い論文データベースを複数紹介するもので,基本的に講師は図書館職員が担当する。「ELAレクチャー」「月例データベース講習会」そして「ゼミ・クラス向けレクチャー」の性質の違いを3にまとめてみた。それぞれ異なるターゲットに向け,難易度にも差をつけて提供することを意識している。

授業の開講言語によっては担当する図書館職員も英語でレクチャーしたり,資料を作成する必要があり,準備にかなりのパワーを必要とする。しかしこれらのレクチャーは翌年以降のリピート率が高く,ニーズにこたえられている手応えを感じる。

参加者は基本的には授業の受講者のみだが,席に空きがあればそれ以外の参加者も歓迎する教員が多く,過去には「月例データベース講習会」とコラボレーションするかたちで開催するケースもあった。たとえば図書館学の授業でディスカバリーサービスの説明を行った際には,受講生以外の学生も数多く参加し盛況となった。今後もフレキシブルな参加形態をとることが可能なレクチャーについてはこれを推進し,より多くの利用者に門戸を広げることで,データベース活用を促進していきたいと考えている。

また教員からの依頼を待つだけでなく,図書館からの働き掛けも検討している。現在,31のメジャーごとに「特に活用を勧めたいデータベース」のリストを作り,簡単な説明とともに教員に配布することを計画中である。教員に授業で紹介してもらったり,アドバイジー(卒業論文指導学生)と共有してもらうことで契約データベースの利活用を促すのが狙いである。

表3 3種類の講習会の比較表
タイトル 対象 難易度 主な担当者 取り扱う内容
ELAレクチャー 1・2年生 初級 図書館職員 複合分野の資料を収録した
データベース
月例データベース講習会 全学年 中級 提供元スタッフ 個別のデータベース
ゼミ・クラス向けレクチャー 全学年(授業受講者) 上級 図書館職員 特定の専門分野に役立つ
複数のデータベース

2.4 ICU図書館スカベンジャーハント

そのほか,広い意味で利用者教育の範ちゅうに入るものに,毎年春に実施している「ICU図書館スカベンジャーハント(3)」がある。これは館内あらゆる所に図書館に関するクイズを掲示し,最も多く正解したグループに「選書権」を贈呈するものだ。3人以下のグループ・個人が参加可能で,入賞者は後日大型書店で行う選書ツアーにて,ICU図書館に納品される本を自ら選ぶことができる。学年を問わず知的探究心の強い学生に人気のイベントであり,今年で4回目の実施となったが年々参加者数は増加の傾向にある。

スカベンジャーハントでは図書館サービスや情報探索法に精通していないと上位入賞は難しいため,参加者は必然的にそれらに関する知識が増える。ある意味「エンターテインメント型利用者教育」といえるだろう。またこのイベントには利用者教育の側面とともに,図書館への親和性の増加という目的も隠されている。とかく堅い印象をもたれがちな図書館だが,こうしたイベントを実施することで「なんとなく楽しい場所」という印象を利用者に与えることができればと期待している。スカベンジャーハントには「図書館のイメージ変化」と「図書館に関する知識の増加」を通じ,その利用のハードルを下げるという意図が込められている。

図3 スカベンジャーハントのポスター

3. Webを活用した利用者教育

ここまで硬軟取り混ぜた「Face to Faceで行う利用者教育」について紹介してきたが,ICU図書館では自主学習をサポートするため,以下に紹介するいくつかの仕組みも用意している。キャンパス外にいるときや,図書館閉館時にもすぐに必要な情報にアクセスできるよう,それらの仕組みの多くはWeb上で提供されている。

3.1 Moodleを使ったフォローアップ

前章で紹介した「1・2年生向け情報探索法レクチャー」「月例データベース講習会」「ゼミ・クラス向けレクチャー」の3種類については,当日配布した資料をすべてeラーニングプラットフォームの「Moodle」上にアップしている。MoodleはID・パスワードで管理されているため,学内限定で講義資料や課題の授受が可能であり,ICUでは多くの授業でこのシステムを利用している。図書館レクチャーにおいても,何らかの事情で参加できなかった学生や,自宅で復習をしたい学生に対するフォローアップとしてこのシステムを活用している。

また「月例データベース講習会」に関しては講師の了承を得たうえで内容を撮影し,映像をMoodle上にアップしている。資料と同様,フォローアップ学習に活用できるほか,開催回数を重ねた今では映像アーカイブとしての厚みも増してきている。

Moodleの利点は各資料や映像へのアクセスログを容易に把握できる点である。ファイルにアクセスした利用者数やステータスを分析することで,それぞれの講習会がどのような層に需要があるのかわかる。たとえば2014年秋~冬にかけて3回開催した「Word講習会」は実際の総参加者数が161人と盛況だったが,Moodleの配布資料にアクセスした人数も多く,81名に上った。さらにステータスを確認するとその大半が4年生であることが判明した。

これまで卒論執筆者に向けてWordのテクニックを体系的に教える場がなかったこともあり,この講習会が彼らの受け皿になったことがデータから明らかになった。このようにMoodleから得られるデータは,講習会に実際に参加するアクティブな利用者以外の「潜在的利用者」のニーズを把握するうえで非常に貴重なデータとなっている。

3.2 資料探索チャート

ICU図書館ではWebサイト上で3種類の資料探索チャート(「データベース探索チャート」「雑誌記事・論文の探し方チャート」「図書の探し方チャート」)4)を提供している。いくつかの質問に答えると利用者に最適なリソースを提案してくれるというもので,ブラウザ上で使える簡便なスクリプト言語「JavaScript」を用いたシンプルなつくりだが,その分,微調整や改修が容易になっている。

  • •   「データベース探索チャート」:ICU図書館が契約するデータベースを探索するためのチャートで,目的の資料の形態・分野・言語を選択していくと複数のデータベースが提案される仕組みである。さらに提案されたデータベース名をクリックすれば実際にアクセスできるようになっている。
  • •   「雑誌記事・論文の探し方チャート」「図書の探し方チャート」:目的とする資料の書誌情報の有無を問う質問を起点として,ディスカバリーサービスの活用や他館資料へのアプローチ方法などを紹介・提案する内容となっている。

各チャートの作成はチームを組み,複雑な分岐を模式化したフローチャートを完成させた後,実際のプログラミングを行った。チームで取り組むことで分類の正確性や妥当性が保持され,また複雑化した情報の整理が容易になった。

想定している利用者は主として1・2年生である。前章の「1・2年生向け情報探索法レクチャー」のアンケートで「膨大なリソースの中からどれを選べばいいのか検討がつかない」というコメントが多くみられたことを受け,資料探索の入門編として作成した。これを足掛かりとして図書館が提供する資料・サービスの全容をつかむことができれば,後は徐々に応用を利かせて探索のフィールドを広げていけるだろう。

3.3 リソースガイド・リスト

上記の「探索チャート」以外にも,当館のWebサイト上には学習に役立つリソースガイドやリストがいくつか用意されている。

  • •   「学習のための基本図書」5)主に大学入学直後の学生向けコンテンツで,「図書館の使い方」「インターネットでの情報の探し方」など,状況別に参考になる図書をリスト化したものである。
  • •   「メジャー別推薦図書」6)主に1・2年生向けに,31のメジャーのエッセンスがわかる入門書を紹介したリストである。専修分野選択の際の参考となる図書を,各メジャーの教員から選書してもらい作成した。
  • •   「日本語学習者のためのウェブサイト」7)9月入学生を想定したもので,Webブラウザに追加すると漢字にルビが振られるアドオンや,文字の書き順をアニメーションで見せるサイトなど,日本語初学者の学習に役立つWeb上のリソースを紹介している。

このほか,当館のWebサイトで採用しているWordPressというブログシステムに特殊な機能を追加し,「データベース検索」8)「パスファインダー」9)の2つを提供している。前者は「データベースを探すデータベース」ともいえるもので,契約・フリーを問わず100種類以上の有益なデータベース,Webサイトをキーワードで検索するシステムである。ある程度目的のデータベースが決まっている利用者を想定したつくりになっているため,どちらかといえば上級生向きかもしれない。また後者の「パスファインダー」は「メジャー別推薦図書」の発展版といえる内容で,専修分野ごとに図書,雑誌・論文,契約データベース,レファレンス資料など,役立つリソースをまとめている。紙資料ならば請求番号を,データベースならばリンクをクリックすれば直接アクセスできる。

3.4 文献情報管理ツール比較表

そのほか,学習や研究に役立つツールについてのガイドもWeb上で提供している。文献情報管理ツールは有料・無料含めさまざまなものが提供されているが,利用前にその違いを正確に把握することは難しい。そこで当館では契約をしている「RefWorks」,無料で利用できる「Mendeley」「Zotero」の3つの文献情報管理ツールの特徴を1つの表にまとめ,Webサイト上で公開することにした10)。具体的には,対応OS,アカウント容量,出力スタイル数,PDFメタデータ抽出の可否などを一覧にして比較したほか,それぞれのツールの強みもまとめている。

1年次からELAを通じて論文作成法を徹底的に指導されるICUの学生にとって,文献情報管理ツールは必要不可欠なものであるが,個人によって求める機能や重要視するポイントが異なるため,この比較表が自身に最適なものを選ぶ材料になればと考えている。

4. おわりに

ここまでICU図書館が実施する「Face to Faceで行う利用者教育」「Webを活用した利用者教育」の具体的事例を紹介してきた。利用者に向けてさまざまなアプローチからサポートを行っているという自負はあるが,一方で課題も多く感じている。たとえば「月例データベース講習会」に参加した学部生のうち,約7割が3・4年生であり,1・2年生の参加者は少数派であることがアンケート結果からわかっている。早くからデータベースの使用法を理解していればその分,大学における研究生活は豊かなものになる。アンケートの自由記述欄で「もっと早く参加しておけばよかった」という声が多く聞かれるだけに,今後いかに1・2年生に向けて訴求していけるかが課題である。また「月例データベース講習会」に関していえば,2年目以降が正念場になる。つまり講習会実施によって一度上昇したデータベース利用率を,どのように維持・向上するべきかを考えなければならない。他部署や教員との連携など周りを巻き込みつつ,勢いを持続させていく必要があるだろう。

図書館に勤務していて日々感じるのは,資料やデータベースは「購入したら終了」ではない,ということである。むしろ購入・導入がスタートで,それらを利用者にいかに使ってもらうかが職員の腕の見せどころであると感じている。決して安くはない買い物だけに,利用者にはこれらのリソースを使い尽くしてほしい。そのためのサポートを今後も惜しみなく続けていきたいと考えている。

執筆者略歴

  • 紀平 宏子(きひら ひろこ)

大学院卒業後,教育系出版社に就職。eラーニング等,デジタルデバイスを活用した教育を展開する部署に4年間勤務した後,2010年より現職。パブリックサービスグループに所属し,レファレンス業務,利用者教育,データベース管理,Webサイト・システム関連業務などに携わる。

本文の注
注1)  2005年,ICUは米国リベラル教育学会に「リベラルアーツプログラム自己点検報告書」を提出。実地視察を経たのち,ICUは世界基準に適合したリベラルアーツプログラムが行われていることが認証された(2005年から10年間有効)。https://www.icu.ac.jp/about/info/selfstudy.html

参考文献
 
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