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情報界のトピックス
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2017 年 59 巻 10 号 p. 717-718

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人の言葉へと進化したGoogle翻訳

Googleは11月16日,ニューラルネットに基づく機械翻訳システムを導入したGoogle翻訳を,日本語などを対象に提供開始したと発表した。日本語の他に対象となったのは,英語,フランス語,ドイツ語,スペイン語,ポルトガル語,中国語,韓国語,トルコ語。新しいシステムでは,文章をパーツごとではなく,1つの文として扱うことで,コンテンツを把握して,より正確な訳語候補を見つける。さらに語順を調整することで,文法的により正しく,「人の言葉に近い」翻訳ができるとしている。同時に,企業やアプリケーションの開発者向けに,このニューラルネットに基づく機械翻訳システムのAPIも公開されている。

Internet Archive,カナダにバックアップ構築へ

Webアーカイブサービス「ウェイバックマシン」(Wayback Machine)などを運営する米国の非営利団体「Internet Archive」は11月29日,アーカイブ保存強化のため,海外にデジタルコレクションのバックアップとしてInternet Archive of Canadaを構築する計画をブログ上で発表した。この発表の背景には,トランプ次期大統領が選挙期間中に,ISISによる若者の勧誘を防ぐために「インターネットの一部をシャットダウンすべきだ」と発言したことがある。同団体はブログ上で,「米国国民は11月9日(共和党のトランプ候補の勝利が確定した翌日)の朝,新政権が大きな変化をもたらそうとしていることを知った」とし,エジプトのアレクサンドリア図書館が戦争などで失われたことを例に挙げて,「われわれのような長期的な存続を目指す機関は変化に対応できる設計でなければならない」と述べている。そのうえで,Internet Archive of Canadaを実現させるための寄付を広く呼びかけている。

中国で新サイバーセキュリティー法案が可決,検閲強化の懸念も

中国の国営通信社である新華社は11月7日,新しいサイバーセキュリティー法案が第12期全国人民代表大会常務委員会で可決されたと報じた。新しい法律は2017年6月に施行される予定。新しい法律の目的として,個人情報の保護強化と,インターネット上での不正への対処を挙げている。具体的には,テクノロジー企業に対して,実名を含むユーザーの個人情報の登録,禁止されているコンテンツの検閲,犯罪捜査への技術的支援と協力,ユーザーに関するデータの中国国内サーバーへの保存などを義務化している。この法律に対しては,条項の表現にあいまいな部分があり,ネット検閲の強化につながることが懸念されている。また,企業に求められている「技術的支援」についても,政府による監視への協力を意味する可能性も指摘されている。さらに外資系IT企業も法律の対象となることから,対応が求められている。

新しいサイバーセキュリティー法について,人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は,「インターネットに対する検閲や監視,その他の統制を強化する退行的な措置」であると批判。ユーザーのプライバシーについては,企業による個人情報の保護の面では考慮されているものの,治安当局によるネットワーク監視やサイバー犯罪捜査をめぐっては,適切なプライバシーの保護が組み込まれていないと指摘しており,「この法案が可決したことは,重罪に問われることからユーザーを守る手段がなくなったことを意味する」としている。

2015年の特許出願数,中国が1位

世界知的所有権機関(WIPO)は11月23日,2015年の特許出願情報に関する報告書「World intellectual property indicators」を発表した。同報告書によると,全世界における2015年の特許出願件数は約290万件で,6年連続の増加となった。前年比では7.8%の増加で,2014年の4.5%よりも高い伸びを示した。この増加の背景として挙げられたのが中国からの出願数の増加で,前年比18.7%増の約110万件で1位となった(2位アメリカ,3位日本)。海外への出願が最も多かったのはアメリカ(約23.8万件)で,前年から6%増加した。一方中国は,ほとんどが中国国内での出願だった。ただし,中国から海外への出願も過去20年にわたって徐々に増加しており,現在は約4.2万件で,フランス(約4.6万件)とほぼ同規模となっている。

CiNii Booksが国会図書館デジタルコレクションなどと連携

国立情報学研究所(NII)は11月30日,大学図書館所蔵の書籍情報検索サービス「CiNii Books」に,「国立国会図書館デジタルコレクション」との連携機能を搭載したと発表した。この連携によって,国立国会図書館デジタルコレクションの合計約300万件の資料のうち,約76万件のデータがCiNii Booksとひも付けられ,CiNii Booksの検索結果画面からアクセスできるようになる。このような連携は,米国のHathiTrust Digital Libraryとの間でも11月2日から実施している。HathiTrust Digital Libraryは,米国の大学図書館を中心とする図書や雑誌の電子化プロジェクト。今回の連携により,HathiTrust Digital Libraryの約28万件へのリンクがCiNii Booksの検索結果画面に表示されるようになった。

「信ぴょう性低い」医療情報サイトが全記事公開停止に

インターネットサービス企業であるDeNAは11月29日,同社が運営していた医療情報サイト「WELQ」について,掲載記事をすべて非公開としたことを発表した。WELQはDeNAが2015年10月にスタートした,「ヘルスケアに関するキュレーションサイト」で,医療や健康についての検索上位に表示されることが多かったが,専門家による監修がされていないとみられる記事がほとんどであることや,他のメディアからの無断転載が多いことなどが指摘され,信ぴょう性の低さが問題視されていた。同社は発表の中で,今後は医師や薬剤師などの専門家による監修体制を速やかに整えるとともに,社内に管理委員会を設置し,記事のチェック体制を強化するとしている。報道によれば,東京都の担当部局もこの件を問題視しており,同社担当者から話を聞くことや,同様のサイトへの対応も検討しているという。

 
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