情報管理
Online ISSN : 1347-1597
Print ISSN : 0021-7298
ISSN-L : 0021-7298
リレーエッセー
つながれインフォプロ 第32回 近畿病院図書室協議会の取り組み
寺澤 裕子
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2017 年 59 巻 11 号 p. 777-779

詳細

1. 近畿病院図書室協議会について

近畿病院図書室協議会(以下,病図協)注1)は「会員が協力し合い病院図書館を充実させ,医療人への適切な情報提供に寄与し,医療の発展に資する」という目的で1974年京都府に誕生した病院図書館ネットワークだ。2016年10月現在114機関が加盟している(1)。

病院が多く加盟し,地域は近畿地区と周辺地域が中心だが,鹿児島県から埼玉県まで会員が存在する。ほかには賛助会員(4機関)や会誌購読会員(43)を有している。

図1 加盟機関の分布と属性

2. 病図協事業について

病図協事業活動には,研修部,会誌編集部,統計調査部,目録サポートチーム,ホームページワーキンググループ,リポジトリ部の6つがある。

事業は,総会での承認に基づき幹事会と事務局とで連携して進める。事業活動の部長は幹事が務め,会員である部員と一緒に事業を行っている。

(1) 研修部

研修部は,年数回研修会と勉強会を開催する。定期開催は新任者向け勉強会と事例・研究報告会があり,それ以外は部員が知恵を出し合い,さまざまなテーマで開催している。

(2) 会誌編集部

会誌編集部では,会誌「病院図書館」と不定期に図書の発行を行う。会誌は特集を組み,年2回発行している。図書は諏訪敏幸氏の『看護研究者・医療研究者のための系統的文献検索概説』などを発行している。部のマスコットキャラクター“にんげんくん”(2)は,会誌にもたびたび登場する。執筆者へ進呈するクリアファイルや,30巻記念マウスパッドを作り,医学情報サービス研究大会の物販会場で書籍とともに販売している。

図2 マスコットキャラクター「にんげんくん」

(3) 統計調査部

会員図書館の実際を数字でとらえネットワーク全体の動向を把握する統計調査を年1回実施している。隔年で簡易調査と詳細調査を実施しており,質問項目や回答と集計方法は統計調査部で決めている。

(4) 目録サポートチーム

目録サポートチームは,近畿病院図書館協議会所蔵雑誌目録Web版KITOcat利用に関する活動を行っている。KITOcatは2018年度末で終了するため,現在は代替システムの構築・選定を検討している。

(5) ホームページワーキンググループ

ホームページにかかわる活動を行う。保守は株式会社アルファミクスに委託するが,軽微な修正はホームページワーキンググループと各部で行い,タイムリーな情報発信を心がけている。

(6) リポジトリ部

2016年1月にスタートした病図協共同リポジトリ(KINTORE)にかかわる活動を行う。保守・運営は株式会社アグレックスに委託している。現在は本事業を会員間に浸透させる活動が主である。

3. 近図雲と交流会について

病図協には近図雲と交流会という会員に限定したコミュニケーションの場がある。これらは会員外の方の目に触れる機会はないが,なかなか面白い活動なので,簡単に紹介する。

(1) 近図雲(きんとうん)

正式名称は近畿病院図書室協議会会員専用ページといい,ホームページ内に設けた会員専用のSNSページの愛称である。病図協から会員へのオフィシャルな情報伝達や会員同士が相談できる場として2014年3月からスタートしている(3)。

愛称は西遊記の登場人物である孫悟空の術・乗り物である「筋斗雲(きんとうん)」にちなんでいる。距離に関係なく伝えたり助け合えたりする場として,また研修会資料や会員名簿などを置いてアクセス可能にした「近図雲書庫」から“クラウド=雲”を連想して名づけた。

近図雲の利用目的は「病図協から会員への情報伝達を行う」「会員同士で相談し合える場をもつ」ことだ。これらの役割を果たすため会員が必ず参加する,「公式コミュニティ」と「会員コミュニティ」という2つのコミュニティーを設けた。

「病図協から会員への情報伝達を行う」場は「公式コミュニティ」といい,「研修会開催案内」「ホームページ修正情報」など各事業活動や事務局からのお知らせが掲載される。郵送や電子メールでの連絡手段も残しているが,多くがこちらへの書き込みに変わりつつある。

「会員同士で相談し合える」場は「会員コミュニティ」で,会員自身が問題解決あるいは連絡のためにトピックを立て,回答や感想などが書き込まれる。「担当者変更のお知らせ」「各地の研究会・研修会・勉強会情報」などがある。

これらのコミュニティーは,全会員に届く必要があるため,近図雲の利用調査を年1回行っている。2016年の調査では未回答機関は21機関あった。今後も折に触れて利用を呼びかける。

「会員コミュニティ」の利用件数を見ると,2015年4月,9月,2016年4月にピークがある(4)。4月は近図雲の利用に慣れる目的で作った各地の桜情報トピックへのアクセス件数がこのピークを作った。9月に紅葉トピックを立てたが,紅葉トピック以外に外国雑誌契約更新に関するトピックへのアクセス件数が伸びていた。業務に関する問題解決にも役立っていると考える。

図3 会員専用ページ「近図雲」
図4 会員コミュニティの利用件数

(2) 交流会

研修会の休憩時間に「ねえ,こんなときどうしてる?」「うん,うちではね…」と相談する姿をみる。このような気軽な相談の場があればと考え,幹事会を中心に2010年から交流会を行っている。ここ数年は年1回開催し,2016年度で9回目を迎えた。参加対象者は会員機関の図書館担当者と購読会員である。

交流会は都市部の会議室などを借りて休日に行う。お弁当やおやつを食べながら,4~5時間かけて,困っていることや知りたいことを順に話し,参加者からアドバイスをもらうスタイルだ。参加者は30人程度で募るが,参加者が2ケタに届かない回でも制限時間ぎりぎりまで話に夢中になり,慌てて撤収作業を行うのが常だ。

交流会の席で「そのお話,近図雲で話題に上がっていて画像も載っていますよ」という声が出るようになった。研修会や会誌で自己研鑽(けんさん)を積み,交流会や近図雲で復習・発見をし,職場で実践する。そんなサイクルができているのではないかと思う。

執筆者略歴

  • 寺澤 裕子(てらざわ ひろこ)

関西労災病院図書室勤務。ヘルスサイエンス情報専門員上級の資格をもち,近畿病院図書室協議会幹事などを務めている。

本文の注
注1)  近畿病院図書室協議会:http://www.hosplib.info/

 
© 2017 Japan Science and Technology Agency
feedback
Top