2016 年 59 巻 2 号 p. 136-138
RDA(Research Data Alliance:研究データ同盟)は,欧州委員会(EC)と米国国立科学財団(NSF: National Science Foundation),オーストラリア国立データサービス(ANDS: Australian National Data Service)を通じたオーストラリア政府の支援により2013年3月に設立された。研究者とイノベーターが技術,分野,国・地域を超えてデータを共有し,社会の大きな課題を解決するための国際的なコミュニティー型会合として,半年に1度世界各地で総会を開催している注1)。科学技術振興機構(JST)は,日本でのデータシェアリングに関する議論喚起の役割を担っている。
アジア地域で初開催となる第7回総会を,東京に誘致した(図1~図3)。342名の参加者があった。
基調講演の他,52の分科会が開催され,データシェアリングにおける諸問題解決のための議論が行われた。日本からの参加者は各分科会での議論に多数参加した。他,パネルディスカッションでのファシリテーション,分科会での成果報告,および基調講演を行うなど,日本人研究者が議論を主導する場面も散見された。
基調講演では,喜連川優氏(国立情報学研究所所長)が,ビッグデータによってもたらされるものの具体例を課題と実施内容を挙げて紹介した。リサーチデータ(ビッグデータ)は社会の役に立ち,社会に変化を与えることができると結論付けた。
また総会期間の前後に,日本の研究・出版コミュニティーをオーガナイザーとしたサイドイベント9件(うち7件は,JSTからの企画呼びかけにより開催希望が示されたもの)が開催された。
今後のRDA総会の開催予定は以下のとおりである。
第8回RDA総会:2016年9月 米国・デンバー
第9回RDA総会:2017年4月 スペイン・バルセロナ
第10回RDA総会:2017年9月 中国(予定)
データシェアリングに関するこれまでのわが国での議論は,ポリシーメーカー,図書館,研究者等,セクター別で行われることが多かったが,今次のRDA総会でわが国のデータシェアリングに関するステークホルダーが一堂に会した。このことにより議論主体の特定と,コネクションづくりができたため,今後の議論の活性化が期待される。
RDA総会を通じてわが国のコミュニティーが海外コミュニティーとの接点を構築したことで,今後は海外での取り組み状況を視野に入れた議論が期待される。特に,RDAでの議論はデータシェアリングに関する標準化につながる可能性が高いと思われ,わが国のコミュニティーもRDAをはじめとする海外での議論に積極的に関与していくべきであり,今次のRDA総会を日本で開催したことの意義は大きい。
RDA総会を契機として,日本コミュニティーをオーガナイザーとした併催イベントの開催,NII(国立情報学研究所)・NDL(国立国会図書館)・JST共催による事後イベント「研究データとオープンサイエンスフォーラム~RDA東京大会における議論を踏まえた研究データ共有の最新動向~」(3月17日)が開催されるなど,わが国のデータシェアリングに関係するコミュニティーの活動が活性化した。
第7回RDA総会に先立ち,データにかかわるプロフェッショナルと研究者に向けた「データシェアリングシンポジウム」をJSTが主催,そして産業技術総合研究所,情報・システム研究機構,情報通信研究機構,物質・材料研究機構,理化学研究所の共催で2月29日に開催した。参加者は480名だった。このシンポジウムも紹介する。
テーマは,「科学の発展への起爆剤~データ駆動型科学の推進に向けて~」。午前中の基調講演では,切り口を国・地域・国際機関に据え,日本・NSF・EU・OECD等におけるオープンサイエンス,オープンアクセス,データシェアリングに関する方針および取り組み状況について,原山優子氏(総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)議員)(図4),ジェームス・F・クロセ氏(NSFコンピュータ科学工学局局長),ジャン=クロード・バーゲルマン氏(EC研究・イノベーション総局/科学政策・フォーサイト・データ・ユニット長),カッセージ・スミス氏(OECD-GSF事務局長)等から講演が行われた。
午後のセッションでは研究分野へと切り口を移し,地球物理・材料科学・ライフサイエンス・人工知能等の分野の研究者から,データシェアリング・データ駆動型科学へのこれまでの取り組みから得た知見・問題点について紹介があり,最後に講演者によるラウンドテーブルセッションを行った。ラウンドテーブルセッションでは,研究データのオープン化と共有に対する賛否について研究者の立場から熱い議論が交わされた。
当初,研究者および図書館員の参加が多いと見込んでいたが,民間企業からの参加者も多く見られたことから,広範なステークホルダーにとってデータ駆動型科学は関心と期待が高いことが示された。
(科学技術振興機構 藤平俊哉)
・恒松直幸, 加藤斉史, 大濱隆司, 村山泰啓. 集会報告:研究データ同盟(Research Data Alliance)第2回総会. 情報管理. 2014, vol. 56, no. 10, p. 724-727. http://doi.org/10.1241/johokanri.56.724.
・恒松直幸, 浅野佳那. 集会報告:研究データ同盟(Research Data Alliance)第3回総会. 情報管理. 2014, vol. 57, no. 3, p. 208-212. http://doi.org/10.1241/johokanri.57.208.
・杉本樹信, 中島律子, 佐藤重幸, 遠藤裕子. 集会報告:研究データ同盟(Research Data Alliance)第6回総会. 情報管理. 2016, vol. 58, no. 10, p. 794-796. http://doi.org/10.1241/johokanri.58.794.