この3月まで過去の記事をJ-STAGEに登載するための確認作業をしていて,いろいろ考えさせられることがありました。
30年以上前の本誌に「資本金1,619億円」という数字がありました。ところが次の号に,「161億円の誤りでした」という訂正記事が掲載されているのです。J-STAGEのリンク機能によって,元記事と訂正記事は相互参照できるので,Web版を見れば正しい数字がわかります。しかし,冊子の記事掲載号だけを見たならば,1桁違う数字を正しいものと信じてしまうことでしょう。しかもこの記事の執筆者は当該組織の方なので,信頼性は高いとみなされるはずです。訂正データは,ただ存在するだけでなく,元の記事とリンクして初めて意味をもつのだと思います。Web版のリンク機能の素晴らしさを実感した次第です。
弊誌の記事を引用するときに,PDFや全文HTMLのURLではなくDOIを使用するのは,まず書誌ページを開いて,前述のように訂正があれば併せて読んでもらうためです。PDFしか見ないなら,紙の時代と同じです。せっかくの相互参照を使わない手はありません。引用,被引用もさることながら,編集担当としてはこのリンク機能の重要性を意識しています。
5月号の福井先生の特別講演の中で,Web世論に関するリテラシーが足りないという話が出てきます。Web世論に関するリテラシーだけでなく,私たちはエビデンス(事実)に関するリテラシー自体,不十分ではないのか,という疑問も湧いてきました。信頼性の高い情報であっても,「ウラをとる」作業なしにうのみにするのは危険です。
事実の確認に有効なレファレンスツール「ジャパンナレッジ」を今回取り上げました。ここでもリンク機能が生かされ,連携が広がっています。
文字通り「桁違い」の間違いが過去の本誌にあったことを申し訳なく思います。数字,年月日,固有名詞の事実確認は特に注意して,抜けがないよう努めています。今回,過去の誤りを見て,さらに心して取り組まなければと思いました。(KM)