『アンビエント・ファインダビリティ:ウェブ,検索,そしてコミュニケーションをめぐる旅』のことが編集事務局で話題になりました。2009年に,弊誌の「この本!おすすめします」コーナーで取り上げられたPeter Morville氏の著書です。その後,Morville氏(共著)の『検索と発見のためのデザイン:エクスペリエンスの未来へ』も2012年の「図書紹介」で取り上げました。
同氏が2014年に『Intertwingled: Information changes everything』を上梓し,その翻訳版が2015年に出版されていることを知り,購入しようとしたところ,Kindle版(電子版)のみの発売でした。「図書紹介」の対象として妥当かどうか,考えてしまいました。
Kindle版のみといっても,今ではKindleアプリをダウンロードすれば,AndroidやiOSなどの端末やPCからも読むことができます。ではこれを「図書」とみなしていいのでしょうか。試みにNDL-OPAC,NDL Search,CiNii Books,Webcat Plus で調べてみたところ,いずれにおいてもこの翻訳書『Intertwingled:錯綜する世界/情報がすべてを変える』は検索できません。現段階で電子版のみの本は,「図書」としては扱われていないということです。
ところで,“intertwingled”という言葉は,Ted Nelsonが1974年に『Computer lib』の中で使っています。“Everything is deeply intertwingled.”(すべてが深く錯綜している)と。2015年発行の『Intertwingled: The Work and Influence of Ted Nelson』の序文にそのことが記されており,わたしたちはSpringerLinkで自由に読むことができます。この本は一冊丸ごとでも章単位でもダウンロードでき,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが適用されています。
しばらくすると,eBookは「図書」かという問い自体存在しえない時代が来るでしょう。今は過渡期に違いありません。VUCA(ブーカ)(Volatility:変動性,Uncertainty:不確実性,Complexity:複雑性,Ambiguity:曖昧性)の時代ともいわれる現代。暮らしやすい未来にできますように。(KM)