Journal of Information Processing and Management
Online ISSN : 1347-1597
Print ISSN : 0021-7298
ISSN-L : 0021-7298
Relay essay
Building networks among info pros (30): The Japan Association for Searchers
Tomoko HARADA
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2016 Volume 59 Issue 6 Pages 404-407

Details

はじめに

海外の商用データベースを対象としたコンピューターによるオンライン情報検索システムであるDIALOG(当時のデータベース提供機関は米国ロッキード社)が,初めてわが国に導入されたのは1979年12月であった。当時は,現在のようなネットワーク環境はなく,電話回線を通信回線として使用するもので,今日のように誰もが気軽に検索できる環境ではなかった。それまで印刷物を使用したり,1970年代半ば以降に始まった国内のオンライン情報検索システムであるJOIS,PATOLIS,NEEDS-IRなどを使用したりして調査業務を行っていた。その後,企業図書館や自然科学分野の大学図書館では,国内外のオンラインデータベースを使用した調査業務が主流となり,その実務を担当するサーチャーが活躍していた。

DIALOGが利用できるようになって5年が経過した1985年に,社団法人(現在は一般社団法人)情報科学技術協会(INFOSTA)がデータベース検索技術者認定試験(通称サーチャー試験)を開始した。この試験の合格者が集まって設立されたのが,ここに紹介するサーチャーの会である。

サーチャーの会の設立経緯

サーチャーの会は,「データベース・フェア ʼ87東京」の開催期間中の1987年11月26日に,データベース・サーチャーの会という名称で設立された。情報検索に携わる人々が,互いに切磋琢磨したり,親睦を深めたりする情報交換の場が必要であると考え,筆者を含む合格者8名が発起人となり,設立総会開催に至った。1985年度と1986年度の2級と1級の合格者計270名中120名が入会して本会が発足した。この様子は,讀賣新聞全国版の1面を使って「日本が変わる 高度情報化時代 データベース・サーチャーの会 情報の海の水先案内人」として大きく紹介された1)。この記事によってデータベースやサーチャーという言葉が一般の人々にも知られることになった。まだカタカナ職業の珍しい時代であった。しかし,その後全国規模での活動が難しくなり,1991年以降,東日本地区の「データベース・サーチャーの会」と西日本地区の「インフォ・スペシャリスト交流会」に分かれ,それぞれの地区に密着した活動をしていくことになった。

このような状況下で東日本地区の「データベース・サーチャーの会」は,1992年以降,会員対象に行った名称募集の結果,1位に選ばれた「サーチャーの会」注1)という名称に変更され,現在に至っている。

サーチャーの会の会員

会員資格は,設立当初はデータベース検索技術者認定試験の1級・2級の合格者であったが,試験名称の変更注2)に伴い,情報検索基礎能力試験,情報検索応用能力試験,検索技術者検定の各合格者も該当することになった。さらに2007年度からは,サーチャーの仕事に関心や興味のある人,これから試験を受験したいと考える意欲ある人も会員の推薦があれば入会できるようになった。

会員数は,2016年4月現在135名であるが,毎年その年度の会費納入をもって会員とみなしている。

筆者のように発足時からずっと会員である人々もいる一方,仕事の異動,転勤,定年を迎えた等々の理由から退会される人々もいる。この会は基本的に情報科学技術協会が実施する試験の合格者の会であるため,新会員の入会数も試験の合格者数の推移に影響を受ける。会員数は1996年度の437名をピークにこの20年間で徐々に減少傾向にある。

会員の専門分野は幅が広く,特許,医薬,食品,化学,科学技術,ビジネス,マーケティング,図書館情報学等が挙げられる。勤務先も企業の情報部門,知的財産部,企業図書館,大学図書館,公共図書館,専門情報センター,データベースプロデューサー,ベンダー,また資格と経験を生かして個人で起業されている方等,多岐にわたっている。

サーチャーの会の活動

サーチャーの会は,会長,副会長各1名を含む幹事11名が中心となって運営している。筆者は2004年度から2014年度まで第三代会長を務めた。活動としては,総会を年1回,定例会を年3~4回開催している。さらに会員希望者が自由に参加できる分科会,見学会,親睦会も開催している。また,Webサイト(1)からの情報発信と会員向けニュースレター(2)の発行を行っている。

2014年度以降開催した定例会のテーマを,最新開催分から順に1に示した。これまで定例会を93回開催し,その内訳は,講演会74回(3),グループ討議16回(4),その他となっている。前回の定例会情報はニュースレターで,過去の定例会情報は配布資料も含めてWebサイトの会員ページで見ることができる。他に,ニュースレターには会員相互の人的ネットワークを促進するための“サーチャー玉手箱(SearcherNet)”のコラムもある。会員からの投稿記事で,自分の仕事紹介やインフォプロとしての意気込みなどがつづられている。

分科会活動は,会員が400名を超えていた1995年に始まり,一時は7分科会が活発に活動していたが,それらの使命を終え,2015年度から新たな取り組みとして会員限定の検索技術者検定1級試験対策勉強会が発足した。

最難関である1級試験の対策については,検定公式のテキストがなく,表立った勉強会が近年では実施されていない。受験の準備が難しく,それが受験者減,会員減およびサーチャー業界の先細りの一因となっているとも考えられる。この問題を解決するための一助として,2015年10月に,第1回の勉強会を行った。1級合格者である幹事が論文試験対策のためのオリジナルテキストを作って説明するとともに,過去問等を題材として出題予想を行った。参加者は少なかったが,多くの意見が交わされた。2016年1月には,二次試験でのプレゼンテーション対策を中心とする第2回の勉強会を行った。その結果,2名の合格者を出すことができた。

2016年度は,5月に第1回を開催し,試験の概要とそれに向けた勉強法について議論する場とした。9月下旬には論文試験対策を中心とする第2回,1月下旬にはプレゼンテーション対策を行う第3回を実施する予定である。この勉強会では,受験者同士の「学び合い」の精神を大切にしている。

最近では見学会を年1回開催している。2013年度にアサヒビール茨城工場(茨城県守谷市),2014年度に日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所図書館(千葉県千葉市),2015年度に国立国会図書館東京本館(東京都千代田区)で開催した。さらに2016年度は,9月に東京工業大学附属図書館大岡山本館(東京都目黒区)で開催する予定である。アサヒビール工場見学会は,情報検索の仕事から離れて会員相互の親睦を深めることが中心であった。JETROアジア経済研究所図書館の見学会では,研究所の紹介,地域別所蔵資料の概要および利用方法の説明,図書館見学ツアーを約2時間で実施した。国立国会図書館見学会では,一般閲覧者のエリアと新館書庫エリアの見学ツアー,および質疑応答などを約2時間実施した。見学会は,平日の夜にはなかなか参加できない会員に対して,サーチャーの活躍現場を尋ねる会に参加できるようにしたいと企画された。見学会は基本的には土曜日午後の開催を考えているが,見学先の都合もあり,平日の午後3時以降に開催されることもある。

以上の活動を通じて,会員相互の知識向上や情報交換を図ったり,定例会や見学会後の親睦会で交流の輪を広げたりしている。

図1 サーチャーの会Webサイトのトップページ
図2 サーチャーの会ニュースレター
図3 定例会(講演会)の様子
図4 定例会(グループ討議)の様子
表1 2014年度から2016年度における定例会のテーマ
回数 開催年月日 形式 講演者 テーマ
93回 2016. 6.16 講演 林 和弘 オルトメトリクスの理想と現実,これから
92回 2016. 2.26 講演 小川 悟史 特許出願状況調査
91回 2015.10.28 講演 冨井 俊行 学術情報の利用と文献・著作権管理の最新動向
90回 2015. 6.29 講演 津田 英隆 ビジネス情報と科学技術情報を繋ぐと何が見えるか
89回 2015. 2.26 グループ討議 みんなで話そう!マイブーム
88回 2014.10.29 講演 丹 一信 どうしたらサーチャーを増やせるのか?:司書課程の現場からイロイロと考えてみる
87回 2014. 6.24 講演 牧野 和彦 海外ビジネス情報のコツと情報源について

(敬称略)

おわりに

サーチャーの会は,2017年11月に30周年を迎えるが,設立当初の精神は今でも変わらない。現在幹事を中心に30周年記念行事を企画中であり,会員からのロゴマーク作成や企画アイデアも募集中である。ICT環境の進展に伴ってサーチャーを取り巻く環境も大きく変化している。誰でも手軽に検索できる時代だからこそ,インフォプロとしての実力を発揮できる時代である。試験の合格者であるが未入会の方,1級にチャレンジしたい方,本会に興味をもたれた方は,ぜひ一度非会員でも参加できる定例会に参加されてみてはいかがでしょうか。また,サーチャーの会に関する詳細は,Webサイトおよび過去の紹介記事2)3)4)も参照していただければと思う。

執筆者略歴

  • 原田 智子(はらだ ともこ) 

鶴見大学寄附講座教授,鶴見大学名誉教授。1986年度データベース検索技術者認定試験1級合格。1994年度からサーチャーの会幹事。国際医学情報センター勤務時代の情報検索実務経験を,学生教育,社会人リカレント教育に活かし,社会で活躍できるインフォプロの養成に力を入れている。

本文の注
注1)  サーチャーの会:http://www.searcher.gr.jp/

注2)  「データベース検索技術者認定試験」は,2003年度からは「情報検索能力試験」の名称に変更になり,新しい内容で試験を行っていた。さらに2014年度からは出題範囲を見直し,「情報検索基礎能力試験」は「検索技術者検定3級」,「情報検索応用能力試験2級」は「検索技術者検定2級」,「情報検索応用能力試験1級」は「検索技術者検定1級」に変更された。

参考文献
  • 1)  大津彬裕. 日本が変わる 高度情報化時代 データベース・サーチャーの会 情報の海の水先案内人. 讀賣新聞. 1988-01-11, 夕刊, p. 9.
  • 2)  原田智子. サーチャーの会. 医学図書館. 2005, vol. 52, no. 4, p. 351-352.
  • 3)  原田智子. 特集, インフォプロ:過去・現在・未来:「サーチャーの会」の設立から現在まで, そしてさらなる前進へ. 情報の科学と技術. 2009, vol. 59, no. 5, p. 208-213.
  • 4)  原田智子. 談話室 第31回「サーチャーの会」. 専門図書館. 2013, vol. 257, p. 35-39.
 
© 2016 Japan Science and Technology Agency
feedback
Top