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情報界のトピックス
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2016 年 59 巻 6 号 p. 426-427

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米国微生物学会,Webサイトへのインパクトファクター掲載を中止

米国微生物学会(ASM)は7月11日,同学会が発行する学術論文誌8誌のインパクトファクター(IF)をWebサイトに掲載したり,宣伝に利用したりすることを今後行わないとする方針を発表した。ASMは,本来の目的ではない,雇用や研究資金配分,昇進などの決定に,IFが使用されていることを指摘している。また,IFが高い論文誌は,受理論文数を少なくすることで独占主義的な印象を与えてしまっており,そうした動きは,研究コミュニケーションの遅滞を招き,科学界全体に損失を与えていると主張している。ASMは,今回の決定の目的はIFを重視するゆがんだシステムへの加担をやめることであり,ほかの論文誌も続いてくれることを期待するとしている。

トムソン・ロイター,知財・サイエンス事業を投資会社に売却

トムソン・ロイターは7月11日,同社の知的財産・サイエンス事業をオネックス・コーポレーションとベアリング・プライベート・エクイティ・アジアの投資企業2社に35億5,000万ドルで売却することで合意したと明らかにした。売却される製品ポートフォリオには,Web of Science,Thomson CompuMark,Thomson Innovation,MarkMonitor,Thomson Reuters Cortellis,Thomson IP Managerが含まれている。トムソン・ロイターは,売却で得た純益のうち約10億ドルを自社株の購入に,残額を債務返済と他事業への投資に充てる予定だ。

ドイツ経済学中央図書館,研究データセンターを結ぶプロジェクトを開始

ドイツ経済学中央図書館(ZBW)は7月21日,ドイツ国内の研究データセンターをリンクする「GeRDI」(Generic Research Data Infrastructure)プロジェクトを開始することを発表した。ドイツ国内のあらゆる分野の研究者が研究データの検索・利用を行えるよう,国内の研究データセンターを仮想的にリンクすることを目指す。GeRDIの第1フェーズは3年間の予定で,キール,ミュンヘン,ドレスデンにある3機関にパイロットプログラムを設置。これらのプログラムをリンクして,生物科学,海洋科学,経済学といった多様な分野の研究データを利用できるようにする。この第1フェーズは,ドイツ研究振興協会(DFG)から300万ユーロの研究資金を受けている。次の第2フェーズで,ドイツ国内の他の機関にもプロジェクトを拡大する。GeRDIプロジェクトは,欧州委員会が計画中の「欧州オープンサイエンスクラウド」(EOSC)にも貢献するものである。EOSCは,欧州全体の研究者や科学技術専門家に対して,分野や国境に関係なく,データの共有や利用が行える仮想環境を提供することを目指す取り組み。現在は,ハイレベルな専門家グループによって,ロードマップの設計を準備している。

Facebook,Wi-Fi通信用無人機の試験飛行に成功

Facebookは7月21日,高度上空を長期間飛行してインターネット接続を提供する高高度無人飛行機「Aquila」の初の試験飛行に成功したと発表した。Aquilaは,いまだにインターネット接続を持たない全世界の40億人にインターネットアクセスを提供することを目指すInternet.orgの取り組みの一環として,FacebookのConnectivity Labが開発をすすめている。Aquilaのカーボンファイバー製の翼幅はボーイング737よりも広い。搭載するのはWi-Fi通信用機器のみのため,胴体を持たない全翼機である。最大直径60マイルのエリアを,通常の航空機よりも高い巡航高度6万フィートから9万フィート(約1万8,000メートル~2万7,000メートル)で最大3か月ノンストップ飛行し,翼の表面を覆うソーラーシステムの電力を利用したレーザー光により,地上に向けて通信用の電波を送る計画だ。今回の試験は,実際よりも低い高度で行われたが,予定を大幅に超える96分の飛行に成功した。今後はさらに実験を重ねて,プロジェクトの実現を目指していく。

日本学術会議,オープンサイエンスに関する提言を発表

日本学術会議は7月6日,「オープンイノベーションに資するオープンサイエンスのあり方に関する提言」を発表した。同提言は,日本学術会議オープンサイエンスの取組に関する検討委員会において,「研究データのオープン化」と「データ共有」のあるべき姿を検討した審議結果をとりまとめたもの。オープンサイエンスの論点整理を行ったうえで,1)研究分野を超えた研究データの管理およびオープン化を可能とする研究データ基盤の整備(クラウドを活用した高効率・高信頼なデータ保存システム,小規模研究機関に対応した廉価なデータ保存を可能とする共有リポジトリサービスなど),2)研究コミュニティでのデータ戦略の確立(対象となるデータの見極めなど),3)データ生産者およびデータ流通者のキャリア設計(著作者貢献バッジの導入や論文への記名など)の3点を提言している。

大学図書館,国立情報学研究所等が,「オープンアクセスリポジトリ推進協会」を設立

国立情報学研究所(NII)は7月27日,大学図書館界全体でオープンアクセスを推進するための団体「オープンアクセスリポジトリ推進協会」が同日設立されたと発表した。設立の背景として,世界各国・地域で公的研究資金の助成機関によるオープンアクセスの義務化が進む中,日本でも機関リポジトリ設置機関数が590を超えて世界第1位となり,政府などを中心にオープンアクセス・オープンサイエンスについての取り組みが進んでいることを指摘。このような流れの中で,大学図書館として,研究成果の情報発信を普及・定着させ,機関リポジトリの意義を高めるための取り組みを効率的に推進するため,大学図書館全体としての活動の場として同団体を設立するとしている。大学図書館,NII,NIIの共用リポジトリサービス利用機関などにより構成され,設立時には376の機関が参加した。

 
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