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図書紹介 『メタデータとウェブサービス』
村上 遥
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60 巻 (2017) 1 号 p. 65

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  • 『メタデータとウェブサービス』
  • 日本図書館情報学会研究委員会編
  • 勉誠出版,2016年,四六判,207p.,1,800円(税別)
  • ISBN 978-4-585-20503-6

2010年にFRBR(書誌レコードの機能要件)を概念モデルとする目録規則RDAが公表されてから7年,日本でも2017年2月,RDAに対応した「日本目録規則(NCR)2018年版(仮称)」の全体条文案が公開された。しかし一息つく間もなく,RDAがFRBR-LRM(FRBRとFRAD(典拠データの機能要件),FRSAD(主題典拠データの機能要件)を統合した新たな概念モデル案,2016年公表)に対応することも発表されている。「メタデータとウェブサービス」を取り巻く変化は止まらない。

本書は,変化を続けるインターネット時代における,情報へのアクセスを支える「仕組み」を概観したテキストである。第1部をメタデータ(情報の記述),第2部をウェブサービス(メタデータの提供方法)として,テーマごとに重要なキーワードや最新動向がコンパクトにまとまっている。互いに関連しつつ複数の専門分野にわたる内容を1冊で俯瞰(ふかん)できるのが本書の魅力だろう。

第1部は,ウェブ上の資源など情報資源の多様化や増加に直面する現代の「書誌コントロール」について,「メタデータ作成基準」「典拠コントロール」「主題目録法」などの視点から概要や最新動向を解説している。FRBR,FRAD,FRSADなど基本的な概念が,近接する概念を用いてわかりやすく解説されているので,アウトラインをつかみたい人にもおすすめだ。第6章「美術館・博物館と文化資源・震災資料に関するメタデータ」で文書館や美術館・博物館のメタデータ記述基準がまとめられている点もありがたい。第2部の欧州最大デジタルアーカイブ・プラットフォーム「ヨーロピアナ」の事例を理解するためにも役立つだろう。

第2部は,「ウェブサービス」におけるメタデータの活用や技術を解説している。第1部で頻出するLD(Linked Data:リンクトデータ)やAPIの技術的側面をよりよく知りたい人は,第3章の「メタデータ利用を支える技術」を参照しながら読んでほしい。

それにしても,情報資源の多様化の中,「分散したプレーヤーといかに連携していくか」は大きな課題だ。

近年は,ディスカバリーサービスのように外部データベースを取り込むだけでなく,CiNiiのAPIの提供や,Web NDL Authoritiesのような典拠データ・件名標目表のLD化など,「外部データと連携する仕組み」を積極的に提供する動きが増している。この動きの魅力は何だろう。本書のヨーロピアナの事例がその答えの一つなのではないだろうか。

ヨーロピアナには,欧州各地のデジタルアーカイブのメタデータがAPIで集約され,オープン化されている。自由に利用できるため,市民や企業がウェブサービスやアプリケーションを作り,新たな価値を生み出すための基盤となっている。このように外部連携の仕組みを提供する魅力は,再活用による相乗効果を生み,最終的にデータそのものの存在価値を高めることにつながる点なのではないだろうか。

本書のまえがきには,「ぜひ積極的にこの変化の中に飛び込んできていただきたい」とある。こうした動きに魅力を感じた方は,本書を片手に変化に飛び込んでみてはいかがだろうか。

(東京外国語大学 総務企画部学術情報課 村上遥)

 
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