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集会報告
集会報告 第51回メディアドクター研究会:「情報源としてのプレスリリース:臨床研究の結果をどう伝えるか」
渡邊 清高佐藤 正惠
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2017 年 60 巻 4 号 p. 284-285

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  • 日程   2017年4月22日(土)
  • 場所   帝京大学 板橋キャンパス(東京都板橋区)
  • 主催   メディアドクター研究会

1. はじめに

メディアドクター研究会とは,医療に関するメディア報道のあり方を勉強する会である。

HSP(東京大学医療政策人材養成講座,2004~2008年文部科学省科学技術振興調整費)受講生の医師とジャーナリストを中心に2007年に発足した。現在は隔月の土曜午後に定例会を開催しており,参加資格は特に設けていない。毎回約30~80名の参加がある。幹事長である渡邊清高 帝京大学医学部内科学講座腫瘍内科准教授の他,8名の幹事が交代で定例会の当番幹事を務めている。

2. 定例会について

定例会では,まずそれまでの新聞等の報道の医療健康関係記事を中心に,メディアドクター指標(米国,オーストラリア,カナダ,香港などで用いられている指標を日本に合わせてカスタマイズしたもの)を用いて,全員が記事評価を行う。次にそのテーマの専門家によるミニレクチャーがあり,グループによるディスカッション,夜は交流会という流れである。

テーマは,幹事会でアンケート結果や時事問題から選び,発行元の許諾を得て当日配布している。

ちなみに,2016年度は以下のテーマで開催した。

  • ・がんの早期診断技術に関する報道
  • ・がんの新しい治療薬の期待と課題:免疫チェックポイント阻害薬に関する報道
  • ・HPVワクチンの副作用報道を考える:リスクとベネフィットをどう伝えるか
  • ・薬のリスク・ベネフィットをどう伝える?
  • ・がん検診を正しく知る:エビデンスを報道でどう伝えるか

3. 第51回定例会報告

第51回メディアドクター研究会(第51回定例会)は2017年4月22日,帝京大学板橋キャンパスで開催された。「情報源としてのプレスリリース:臨床研究の結果をどう伝えるか」のテーマの下,28名が参加した。参加者属性は,医療者,ジャーナリスト,政策立案者,患者支援者,司書,学生,翻訳者,出版社,企業・病院広報などで,うち初参加は6名,2回目以上が22名であった。

テーマについて,最近報道されたアトピー性皮膚炎に対する新しい薬剤を用いた臨床試験のプレスリリースと実際の記事を題材に,臨床研究から得られた科学的な根拠(エビデンス)をどのように医療健康情報として伝えていくか,参加者で議論した。

まず初めに,渡邊幹事長からメディアドクターとこれまでの活動についての説明があり,次に新薬につながる研究に関する大学・企業のプレスリリースと新聞2紙の記事を読み比べて評価を行った。多職種によるグループディスカッションは,同じ指標を用いても受け取り方の視点の違いが新鮮で,大変刺激になったという声が多かった。

新年度のスタートラインとして,基本に立ち戻り情報源を吟味することの重要性を再認識した半日だった。

4. プレセミナーについて

これまでの定例会の議論とアンケートで,参加者から,基本的な医学文献の検索や読み解き方について学ぶ機会があればという要望をいただいた。そこで,定例会の前に,研究会の幹事メンバーを講師として45分間のプレセミナーを行うこととした。

第51回定例会のプレセミナーは,「Google,Yahoo! 検索エンジン使いこなし! & 論文評価指標 h-index,オルトメトリクスを知る」として,筆者が講師を務めた(1)。

毎日お世話になっている検索エンジンについて,ただ「ググる」だけでなく,その仕組みやタグ検索について司書の立場から解説した。さらに学術情報Google Scholar,論文評価指標「h-index」や今話題の論文を探すための指標「オルトメトリクス」についても紹介した。

参加者は16名で,バックグラウンドや年齢はさまざまであったが,アンケートでは,Googleの絞り込み検索や,オルトメトリクス日本版,文献管理ツール(ZoteroやMendeleyなど)に関心が高かったようだ。

ちなみに2017年6月に開催されるプレセミナー(第52回定例会)は,「PubMed誕生20周年記念回:はじめましてPubMed,もっとPubMed」と題して一般市民の医療情報へのアクセスの歴史を考え,さらに,初めて使う方,自己流で使っているがもっと活用したい方を対象にセミナーを行い,今後は要望の高い「論文の読み方のコツ」も取り上げる予定である。

図1 プレセミナーの様子

5. セミナー・フォーラムの開催

メディアドクター研究会では,定例会とは別にセミナー・フォーラムを不定期で開催している。参考のためにいくつか紹介させていただく。

2016年11月には,「メディアドクターフォーラム2016 オーストラリアと日本における医療健康報道」として,メディアドクター誕生に関わったAmanda Jane Wilson先生をお迎えしてセミナーを行った。

2017年2月18日には,第50回記念メディアドクター研究会 公開フォーラム「医療健康報道のこれまでとこれから」が開催された。医療者・ジャーナリスト,TVディレクターによるパネルディスカッションののち,約80名の参加者がグループに分かれて討議した。

2017年3月には,中学校でのメディアドクター演習授業「医療健康報道の読み解き方を考えよう」が行われた。簡易版メディアドクター指標による新聞記事比較を通じて,活発な議論によるアクティブ・ラーニングとしてヘルスリテラシーやメディアリテラシーを学ぶ機会の可能性を示唆するものだった。

6. おわりに

隔月に開催される定例会は,肩書を下ろして個人の立場で医学記事や情報を検証しつつ,医学・行政関係者,研究者の生の声を聞ける絶好の機会である。また,医療者はメディアの生の声を聞くことができ,ジャーナリストにとっては記事づくりの参考になり,それ以外の方にとっても,ヘルスリテラシーやメディアリテラシーを学べる場になっている。2017年8月に開催される第53回定例会は,大阪での開催を予定している。

メディアドクター指標の詳細を知りたい方,定例会に関心のある方は,Webサイト(http://www.mediadoctor.jp/)を参照されたい。

(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科/メディアドクター研究会 渡邊清高 医学図書館司書・ヘルスサイエンス情報専門員上級/メディアドクター研究会 佐藤正惠)

 
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