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Vol. 60 (2017) No. 6 p. 454-457

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http://doi.org/10.1241/johokanri.60.454

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情報界のトピックス

ドイツ主要大学がエルゼビアとの契約打ち切り

ドイツで,エルゼビアとの雑誌購読契約を打ち切る学術機関が相次いでいる。6月30日には,ベルリンの4大学(ベルリン自由大学,シャリテ医科大学,フンボルト大学ベルリン,ベルリン工科大学)が,2017年末のエルゼビアとの雑誌購読契約の更新をしないと発表した。また7月7日には,南部のバーデン=ヴュルテンベルク州の9大学が,同じように2017年末での契約終了を発表している。これはドイツが全国規模での電子ジャーナルライセンス締結を目指すDEALプロジェクトとエルゼビアの交渉が不調に終わったことを受けたもの。DEALプロジェクトは,ドイツ大学学長会議(HRK)の下で2016年から進められており,2017年に大手出版社との間で,全国規模のライセンス契約を締結することを目指していた。

しかしエルゼビアとの交渉は2016年12月に決裂し,約60の学術機関がエルゼビアの電子ジャーナルにアクセスできない事態になった(その後,アクセスは回復している)。それ以降も交渉が続けられたが,2017年3月に再び不調に終わったことがHRK,エルゼビア双方から発表されていた。今回,契約を更新しないことを決めた大学は,DEALに参加するすべての学術機関による電子ジャーナルへの永久的な全文アクセスや,ドイツの研究者による論文の自動的なオープンアクセス化,将来志向のシンプルな価格計算モデルに従った公正な価格設定といったDEALプロジェクトの目標を支持し,エルゼビアに対して継続的な交渉を求めていくとしている。

MicrosoftとGoogleで進む人工知能への取り組み

米Microsoftは7月12日,人工知能(AI)研究を専門とするラボ「Microsoft Research AI」を設立したと発表した。これは同社におけるAI研究のハブとなるもので,AIにおける特に難しい問題に取り組むとともに,製品やサービスへのAIの統合を加速することを目指す。また機械学習や,認知,自然言語処理など,別の分野へと進化してきた研究に統合的なアプローチで取り組むとしている。Microsoftは2016年9月に,AIを搭載した製品やサービスの開発部門「Microsoft AI and Research Group」を新設している。

一方,米Googleは7月11日,人工知能に取り組む初期段階のスタートアップ企業を対象とするベンチャーファンド「Gradient Ventures」を設立したことを発表した。Googleは同ファンドを通じて資金を提供するとともに,AI分野の専門家によるアドバイスも行う。アドバイザーには,Ray Kurzweil氏やPeter Norvig氏といったAI分野の世界的権威(ともにGoogleに在籍)や,野心的なプロジェクトを実施するGoogle傘下の企業「X」(旧称Google X)のAstro Teller氏などが名を連ねている。

トランプ政権下で揺れる「ネット中立性」

非営利団体「Internet Association」は,トランプ政権によるネット中立性見直しに反対するため,7月12日を「行動の日」(Day of Action)と定め,オンライン署名を呼びかけるとともに,ネット中立性について説明する動画を掲載した特設Webサイトを立ち上げた。この「行動の日」にはAirbnb,Dropbox,Creative Commonsや,米国図書館協会(ALA)も賛同した。ネット中立性とは,政府やインターネット接続業者(ISP)は,インターネット上のすべてのデータを平等に扱うべきであるとする原則のこと。オバマ政権下の2015年には米連邦通信委員会(FCC)において,ネット中立性のための規則「Open Internet Order」が採択され,ISPが合法なコンテンツやサービスを遮断したり,トラフィックを制限したり,逆に特定のトラフィックの優先化を禁じている。ところがトランプ政権下のFCCは,このネット中立性規則撤廃を目指した提案を4月に行い,パブリックコメントを求めていた。こうした動きに対して,Internet Associationは「オンライン上のイノベーションを妨げる」として反対している。

その後,米下院エネルギー・商業委員会が7月25日,ネット中立性の問題についての公聴会を9月に開催すると発表した。すでにFacebookやGoogle,AmazonといったIT企業や,Verizon,AT&Tなどの通信企業の最高経営責任者らに公聴会での証言を求めたとしている。

FASTR法案,米下院に提出

7月26日,米国下院に「科学技術研究成果公正アクセス法案(Fair Access to Science and Technology Research ACT:FASTR法案)」が超党派議員3名によって提出された。この法案は,連邦政府の資金援助を受けた研究成果へのパブリックアクセスを拡大させるためのもので,外部委託研究に年間1億ドル以上を支出する政府省庁・機関に対して,査読誌に掲載された論文の電子版を,発行から6か月以内に,誰でも無料でアクセスできる形で公開することを義務づけている。同法案は2013年に米上下両院に同時提出され,その後2015年に米国上院国土安全保障政府問題委員会で承認されている。連邦政府の資金援助を受けた研究成果へのパブリックアクセスを巡っては,2013年のオバマ政権下で,今回の法案とほぼ同様の目標を含む「方針覚書」が発表されており,すでに多くの政府機関が独自のパブリックアクセス方針を導入している。しかし,SPARC (Scholarly Publishing and Academic Resources Coalition)のエグゼクティブ・ディレクターであるHeather Joseph氏は同日発表した声明で,「国民の税金によって実施された研究にオープンアクセスを義務づけることが国の法律として明文化されることが重要だ」とコメントしている。

「モノのインターネット」のセキュリティーリスク

NRIセキュアテクノロジーズは,7月26日に発表した「サイバーセキュリティ傾向分析レポート2017」の中で,企業におけるIoT(モノのインターネット)機器への攻撃が大幅に増加していることを明らかにした。同レポートは,同社の情報セキュリティー対策サービスを通じて蓄積したデータに基づくセキュリティー動向分析。これによると2016年度は,同社のセキュリティーサービスによってブロックされた通信の半数近くがtelnetポートへの通信で,その件数は2015年度の約6.4倍に増加していたという。このtelnetポートへの外部からの通信は許可しないことが一般的であることから,同社では,アクセス制限が行われていないWebカメラやルーターなどのIoT機器を悪用して侵入を試みる通信の増加を指摘している。

IoTは企業・個人ともに急速に普及しており,ビジネスや生活を大きく変えるテクノロジー分野として注目されている。総務省が7月28日に発表した平成29年版情報通信白書でも,IoT技術が人工知能とともに経済成長に与えるインパクトについて,2030年には市場規模を271兆円,実質GDPを132兆円押し上げると試算している。しかし,2016年にはIoT機器を狙うマルウェア「Mirai」が登場するなど,IoTのセキュリティー問題が表面化している。情報処理推進機構(IPA)が2017年1月に公開した「情報セキュリティ10大脅威2017」でも,「個人」と「組織」の両方のカテゴリーでIoTのリスクが初めてランクインしている。

「5つ星オープンデータ」検索サービス公開

自治体のオープンデータ公開促進や施策の企画を行う株式会社B Inc.は7月14日,インターネットで公開されている民間や自治体の5つ星オープンデータをWeb標準のAPIである「SPARQL」を使用して検索できる「opendata.cc」をリリースしたと発表した。「5つ星オープンデータ」とは,Webの考案者であり,オープンデータを推進するTim Berners-Lee氏が提唱するオープンデータ形式のランク付けのうち,汎用性が最も高い最高ランクのデータ形式(Linked RDF)のこと。「opendata.cc」では,情報処理推進機構(IPA)によって構築された「共通語彙基盤」(個々の単語について表記・意味・データ構造を統一し,互いに意味が通じるようにするためのしくみ)のコア語彙を使用しているため,B Inc.が提供している「オープンデータプラットフォーム」で公開しているデータだけでなく,他の共通語彙基盤対応システム上のデータとの連携が可能だとしている。検索には,Web標準のAPIである「SPARQL」を使用する。

経産省,SNSやAIを利用した新経済指標を試験公表

経済産業省は7月19日,ビッグデータや人工知能(AI)技術,民間企業のPOSデータ等を活用した新しい経済指標を開発し,Webサイト「BigData-STATS」で試験公表し広く意見を募ることを発表した。新しい指標は,従来の統計よりも速報性・詳細性に優れており,グローバル化,IT化によって経済情勢の変化速度が速まる中で,政府・民間における迅速で正確な判断を可能にするとしている。今回公開されたのは,

  • (1)「SNS×AI景況感指数」(AIが景況感に関する書き込みを抽出し,ポジティブ/ネガティブ評価を行って算出),
  • (2)「SNS×AI鉱工業生産予測指数」(AIが仕事や景気に関する書き込みを抽出,その件数と株価等のオープンデータを組み合わせて,鉱工業生産指数を予測),
  • (3)「POS家電量販店動向指数」(全国約2,500店の家電大型専門店の売り上げ情報をPOSデータで収集・集計し,販売動向を日次でとらえる)

の3つ。各指標の調査周期は日次だが,現時点では週次で公表されている。新指標は,10月末までを1次公開期間として,「BigData-STATS」サイトでコメントを募集している。集まった意見を参考に,2018年1月から2次公開の実施を予定している。

Unicode 10.0正式リリース,「変体仮名」が追加に

文字コードの業界規格であるUnicodeを管理するUnicode Consortiumは6月20日,新バージョンのUnicode 10.0の正式リリースを発表した。新バージョンでは,日本の「変体仮名」を含む4言語8,518文字が追加された他,新たに56個の絵文字も追加された。また縦書きテキストレイアウトも追加されている。

「変体仮名」はひらがなの異体字で,小学校で教えられなくなった1900年以降はほとんど使われていないが,1947年以前は人名での使用が可能だったため,戸籍行政の場では文字コード標準化のニーズがあった。そのため2012年より,情報処理推進機構(IPA)の文字情報基盤整備事業において,変体仮名国際標準化に向けた取り組みが進められてきた。戸籍業務や学術研究に必要とされる文字について専門家による検討を重ねたうえで,2015年10月にUnicode Consortiumに対して変体仮名追加の提案を行っていた(こうした変体仮名標準化の経緯について詳しくは,本誌vol. 58 no.6の記事http://doi.org/10.1241/johokanri.58.438を参照)。一方,絵文字は現在さまざまなプラットフォームで広く使われているが,携帯電話が主流の時代には絵文字について統一的な文字コードがなかったため,文字化けが多発していた(この問題について詳しくは,本誌vol. 50 no.2の記事http://doi.org/10.1241/johokanri.50.67を参照)。2010年に発表されたUnicode 6.0で絵文字(海外ではEmoji)が初めてサポートされ,以後,さまざまなプラットフォームで共通して利用できるようになった。今回Unicode 10.0で追加された絵文字には,「ヨガのポーズ」や「魔法使い」「キリン」「ブロッコリー」「ギョーザ」「箸」などが含まれる。今後,各OSでの対応が進む予定。Appleは7月17日,新しい絵文字が年内にも同社のiOSやmacOSで使用できるようになると明らかにしている。

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