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新引用索引ファイルEmerging Sources Citation Index(ESCI)の概要:Web of Science Core Collectionのジャーナル収録の強化と最新収録基準
安藤 聡子澤 綾子エドモンズ, マチルダ
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2017 年 60 巻 7 号 p. 502-511

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著者抄録

クラリベイト・アナリティクス社が提供する学術情報プラットフォーム「Web of Science」上の引用索引データベース「Web of Science Core Collection」に追加された,新しい引用索引ファイル「Emerging Sources Citation Index(ESCI)」を概説する。同時に引用索引の有用性検討の歴史を振り返るとともに,ESCIと従来のジャーナル引用索引であるScience Citation Index(SCI),Social Sciences Citation Index(SSCI)等との違いやインパクトファクターとの関係,ESCIの登場に伴う最新のジャーナル審査基準および審査プロセスの変更点を概説する。

1. はじめに

クラリベイト・アナリティクス社が提供している「Web of Science Core Collection」は世界中の研究コミュニティーにおいて,信頼できる学術情報データベースとして利用されている。また同時に研究分析の標準情報源でもある。60年に及ぶWeb of Science Core Collectionの一貫した収録の基本方針は,「学術コミュニティーにとって最適なデータベース」を構築することであり,常に進化し続けている学術コミュニティーの要望を実現する形で発展してきた。

最近の学術コミュニティーの進化を表現するキーワードとしては,研究の専門化と融合,グローバル化,オープン化などが挙げられる。本稿では,Web of Science Core Collectionへの機能や情報の追加と学術コミュニティーの変化への対応,および,2015年に追加されたEmerging Sources Citation Index(ESCI)の概要やESCIと従来の引用索引との違い,また関連する最新のジャーナル審査基準およびジャーナル審査プロセスの変更点を概説する。

2. Web of Science Core Collectionとは

Web of Science Core Collection(WoS Core Collection)は,多様な学術情報を幅広く提供しているプラットフォームである「Web of Science(WoS)」上で提供されているデータベースの中心をなす引用索引ファイル群である。世界で初めての実用化された引用索引「Science Citation Index(SCI)」が発展進化した,8つの引用索引ファイルの総称,それがWoS Core Collectionである(11)。

厳密にいえば,WoS Core Collectionには引用索引ファイルに加えて化学反応を収録した「Current Chemical Reactions」および化合物情報を収録した「Index Chemicus」が含まれるが,本稿では8つの引用索引ファイルのみを対象として扱う。また,プラットフォームであるWoSには,WoS Core Collectionの他に特許(Derwent Innovations Index),研究データ(Data Citation Index),各国・地域から独自に提供されたデータベース(Chinese Science Citation Index他),専門データベース(BIOSIS Citaion Index等)が多岐に登載されている。

前述したようにWoS Core Collectionは8つの引用索引ファイルで構成されているが,WoS上では,必要に応じて複数の引用索引ファイルの同時検索や,任意の引用索引ファイルのみを選択しての検索が可能である。これら8つの引用索引ファイルはSCIから始まり,順次追加されてきた。2017年7月現在,4つのジャーナル,2つの会議録,2つの専門書の引用索引ファイルで構成されている。

またWoS Core Collectionは,各種のデータベースの情報源となっている。具体的には「Journal Citation Reports(JCR)」はWoS Core Collectionの情報をジャーナル単位で集計したデータを収録したデータベース,「InCites Benchmarking」はWoS Core Collectionの論文単位の相対的な指標等を収録したデータベースであり,「Essential Science Indicators(ESI)」は,研究業績に関する統計情報と動向データを集積したユニークなデータベースである注1)

図1 Web of Scienceと Web of Science Core Collection
表1 Web of Science Core Collection 8つの引用索引ファイル
収録源 引用索引ファイル名 略称 収録
開始年
JCR対象
①自然科学分野ジャーナル Science Citation Index Expanded SCI-E 1900
②社会科学分野ジャーナル Social Sciences Citation Index SSCI 1900
③人文科学分野ジャーナル Arts & Humanities Citation Index A&HCI 1975 ×
会議録 科学分野 Conference Proceedings Citation Index - Science CPCI-S 1990 ×
社会科学分野 Conference Proceedings Citation Index - Social Science & Humanities CPCI-SSH 1990 ×
専門書 科学分野 Book Citation Index - Science BKCI-S 2005 ×
社会科学分野 Book Citation Index - Social Sciences & Humanities BKCI-SSH 2005 ×
④現在は特定の地域で注目されている/発展が期待される分野のジャーナル Emerging Sources Citation Index(*2017年中に2005年まで遡及予定) ESCI 2015
(*2005)
×

①~④は,ジャーナルを対象とするファイルで,そのうち①~③を「3Files」と呼ぶ。①と②はJournal Citation Reports(JCR)の対象となっている。JCRの対象については6章を参照されたい。

3. Web of Science Core Collectionと引用索引の開発

WoS Core Collectionは,ユージン・ガーフィールドが設立したInstitute for Scientific Information(ISI)社(現クラリベイト・アナリティクス社)注2)が1964年に提供を開始したSCIが発展したものである。ガーフィールドはSCI注3)の基礎となる引用索引の科学分野の情報検索への適応の可能性について1955年にScience誌1)に発表した情報科学者で,急増する学術情報から研究者が必要な情報を効率的に見いだす手段として,「引用索引」を考案した2)5)。また,研究が最先端であればあるほど概念がまだ「用語」として確立していないため,用語の情報検索のみでは不十分となる網羅性を引用索引で補完できることを証明した。そして引用索引の品質を保つためには,学術コミュニティーが必要とするジャーナルを対象とすることが重要であると考えていた。同時に学術コミュニティーは常に進化し,引用索引に収録すべきジャーナル群は常に流動的であるが故に,必要とされる最新のジャーナルを選択する方法が必要であると考えていた。その結果考案された指標の一つがインパクトファクター注4)であり,現在JCRでみることができる6)。またガーフィールドは引用データの研究評価への可能性についても早期から研究していた注5)

4. Emerging Sources Citation Index (ESCI)の概説

4.1 ESCIとは

WoS Core Collectionの新引用索引ファイルであるESCIは,2015年に追加された,ジャーナルを収録対象とする引用索引ファイルである。既存の①自然科学(Science Citation Index Expanded(SCI-E)),②社会科学(Social Sciences Citation Index(SSCI)),③人文科学(Arts & Humanities Citation Index(A&HCI))の3分野のジャーナルの引用索引ファイル(以下3Files)注6)とは別に,特定の地域や分野において学術コミュニティーで認知されている,今後さらなる存在感が期待されるジャーナルを収録している(具体的に収録するジャーナルについては「4.3 ESCIの収録基準」を参照)。当初の収録は5,000誌を予定していたが,多様な情報へのアクセスの充実を目指し,2017年中に7,500誌まで拡大すると同時に,2005年まで遡及(そきゅう)して収録する予定である。

4.2 ESCIの誕生とその背景

WoS Core Collectionの収録対象となるジャーナルは,1964年にSCIの提供を開始して以来,電子ジャーナルなどの学術流通に関する技術的進歩に合わせた基準等の追加はあったものの,一貫した基準を順守してきた7)8)。しかし,多様化した学術コミュニティーからは,急増する情報の中から高品質なデータのみを集めたデータベースと同時に,できるだけ多様なジャーナルを収録対象としたデータベースの提供,いわば質と量を同時に満たすことを求められるようになった。WoS Core Collectionの収録対象は初めてリリースした600誌から1万2,500誌(2017年5月現在)へと大きく成長した。ジャーナルの収録については継続的に専門部署が評価をし,新規収録および収録中止の判断を行っている。既存のジャーナル引用索引ファイル(3Files)の収録基準は国際性や引用などについて高い基準が設定されている(2)。言い換えると,学術コミュニティーの中で国際的に認められ,引用という形で一定の存在感のエビデンスが出て初めて,WoS Core Collectionへの収録を決定しているといえる。

WoS Core Collectionのジャーナル収録ポリシーは,「研究コミュニティーにとって最善のデータベースであること」「学術ジャーナルとしてふさわしいジャーナルをデータベースに収録すること」,そして「研究コミュニティーの興味や関心に適合するジャーナルを収録すること」の3点である。ジャーナルの基本的な発行基準から,編集の内容,著者や編集者の国際性,そして引用分析に至るまで2に示したすべての要素を考慮の対象にしている。一つの要素だけで決定することはなく,分野によって重視する要素は異なり,複数の要素を組み合わせて相互関係を検証することにより,ジャーナルの長所と短所を特定し評価を行っている。従来の評価結果に基づく,近年のWoS Core Collectionへの採択率は10~12%程度にとどまっており,毎年新規に収録されるジャーナルは250誌程度で推移している。

一方で,近年,世界中で急速に新興の学問領域が勃興してくるにしたがって,今は限定された地域での学術コミュニティーで認知されているようなジャーナル,すなわちWoS Core Collectionの中での引用実績はいまだ不十分であるが,潜在的な発展の可能性を秘めているジャーナルがイノベーションの観点などから重要性が増してきた。

そこでWoS Core Collectionのコンテンツチームは,従来とは別のジャーナル選択基準を適用した新引用索引ファイルESCIを創設して,現在は特定の地域においてのみ,その重要性が認知されているジャーナルや新しい注目分野のジャーナル群をそこに追加することで,質と量のバランスをとりながらWoS Core Collectionを学術コミュニティーが求める選択的で包括的なデータベースにできると考えた。

図2 Web of Science Core Collectionのジャーナル収録基準

4.3 ESCIの収録基準

ESCIの収録にあたっては,厳しい選定基準を適用した従来の3Filesと同様な検索を可能にすべきだと考えた。その結果,ESCIに収録するジャーナルは,質の維持と適切なジャーナルのコレクションのために,3Filesの収録基準の一部を適用することとした。具体的には,2中,◆印で示した5項目である。すなわち「査読誌であること」「独自性があり,学術コミュニティーの関心を反映していること」「書誌,抄録,引用文献が英語であること」「コンテンツが電子的に入手可能であること(XML,PDF等)」「出版倫理の基準にのっとっていること」である。なお,「電子的に入手可能」は,索引作成に必要なデータの取得が電子的に行えることを意味している。特にPDFではパスワード等のセキュリティー関係のすべての設定を外す必要がある。

現時点(2017年5月)までのESCIの採択率は,約60%まで上昇している。この採択率の高さは,採用している評価項目が3Filesに比べて限定的であるためと考えられる。

ESCIのジャーナルの評価は3Filesの評価を行うエディトリアル担当部署が,3Filesと同様に行っている。エディトリアル担当部署は中立で,独立した立場で評価を行う。そのため担当者は各専門分野における経歴はもちろん,情報科学分野における知識と経歴も必要である。

4.4 ESCIの索引

ESCIに収録されたジャーナルの索引は,3Filesとまったく同様に作成される。つまり,ジャーナルに含まれるすべてのレコードが収録され(Cover to Cover),各レコードについて全書誌事項に加え,全著者・全著者所属機関,助成金情報,引用情報などが収録される。また機関単位の検索を効率化する著者所属拡張等の機能も利用できる。したがって,各研究機関は,従来のジャーナルだけでなく新興のジャーナルに自機関からどのぐらい発表しているかなどをWoS上で検索することが可能になる。さらに3Filesに発表された研究が新興の研究にどのようなインパクトを与えているかなどの詳細な検討も可能になる。

なお,WoSには,WoS Core Collectionと同一の検索プラットフォームで検索することで,より多様な文脈から関連性の高い文献の検索を可能にしている4つのRegional Citation Indexがある。クラリベイト・アナリティクスはこれらの提供のみを行っている。これらは各国・地域の製作者による収録基準と方針で作成しているデータベースであり,ESCIで定義している,地域において認知されているジャーナルとは異なる。また索引内容についてもそれぞれの製作者の責任範囲で行い,WoS Core Collectionとは異なる。現在は,Chinese Science Citation Database(中国),KCI Korean Journal Database(韓国),Russian Science Citation Index(ロシア),SciELO Citation Index(ブラジル)が利用可能である。

5. Web of Science Core Collectionの収録ジャーナルの審査プロセスの変更

ESCIが加わったことで,ESCIへの収録の可否がいわば従来のジャーナル審査プロセスにおける予備審査の役割を果たすことになった。現在,3Filesへのジャーナル収録の審査申請を行うと,最初は,すべて自動的にESCIの審査に進む。ESCIの審査は半年以内の終了を目指している。

ESCIの審査を通過するとそのまま従来のジャーナル審査のプロセスに進む。審査は,発行頻度等さまざまな要因で必要な時間は異なるが,申請者は,エディトリアルに直接問い合わせることが可能である。ちなみに,現在までに収録申請したジャーナルはすべて,ESCIの審査も行っているので改めて申請する必要はない。

一度WoS Core Collectionに収録されたジャーナルは,定期的に再評価が行われる。これまでは基準を満たさなくなったジャーナルは収録を中止していたが,今後は3Filesの収録基準を満たさなくなった場合でも,ESCIの収録基準を満たしていればESCIの収録誌として収録され続けることになる。

6. ESCIとインパクトファクター

JCRは,WoS Core Collectionのデータを基にジャーナルの評価指標やジャーナル間の引用・被引用関係を収録したデータベースで,インパクトファクターはその中の一つの指標である。しかしESCI収録誌は,ジャーナルの評価指標の算出対象ではない。したがってインパクトファクターは付与されない。なお3Filesの収録誌の中でもSCI-E,SSCIの収録ジャーナルにのみインパクトファクターは付与され,人文学の引用索引ファイルであるA&HCIの収録誌にはインパクトファクターは付与されない(なぜなら,人文学における引用動向は,社会科学や自然科学とは異なるので,人文学のジャーナル評価については,引用が社会科学や自然科学ほど重視されないからである)。なおA&HCIに収録する人文学のジャーナルは,人文学の索引を作成するスタッフの協力の下,専門の編集者によって選択され,幅広い分野にわたる文化現象の複雑さを反映する引用索引ファイルを目指している。

最新のインパクトファクターは,2017年6月に公開されたJCRに収録されている2016年インパクトファクターであり,81か国に及ぶ約1万1,500誌に付与されている。

前述したようにESCIの収録誌にはインパクトファクターをはじめとするジャーナルの指標は付与されないが,ESCIの収録誌がSCI-E,SSCIのジャーナルを引用することによって,SCI-E,SSCIのジャーナルのインパクトファクターをはじめとするジャーナルの数々の評価指標に影響を与えることになる。

またESCI に収録されることによってWoS Core Collectionの自誌引用を含むデータが利用可能になるので,インパクトファクターのシミュレーションが可能になる注7)

7. Web of Science Core Collectionのジャーナル収録概要

ジャーナルの出版国分布でみると,現在3Filesの収録誌はヨーロッパおよび北米が87%を占め,アジア発のジャーナルは8%,ロシア,中南米,アフリカのジャーナルは合わせて5%にすぎない。一方ESCIの収録誌は,ヨーロッパ,北米のジャーナルの割合は69%に低下し,アジア発のジャーナルが15%を占めるとともに,新興国から出版されているジャーナルの割合が増えている。WoS Core Collectionの4つのジャーナル引用索引ファイル全体では,ヨーロッパ,北米のジャーナルの割合が81%,アジア発のジャーナルは10%を占める。

日本発のジャーナルについては,3Filesに収録されているのは247誌であるが,ESCIには現在すでに41誌が収録されており,また,58誌の追加が決定しているため,2017年中に少なくとも346誌に到達する。これに加え197誌が現在評価中であり,さらなる収録の拡張が期待される。2017年5月現在,WoS全体では日本のジャーナルは904誌が収録されており,2017年末には1,000誌の大台に到達する可能性が高い。

収録誌を分野別にみると,ESCIは,3Filesに比べて社会科学や人文科学のジャーナルの割合が高く,両分野で53%を占める。その結果ESCIを含めたWoS Core Collectionのジャーナルの分野構成は,社会科学や人文科学分野が3Filesでの27%から32%に増加していることから,WoS Core Collectionはより学際的で包括的な学術情報の収録源といえるだろう。

8. Web of Science Core Collectionの進化する学術コミュニティーへの対応

急速に増加する学術情報から効率的に必要な情報を入手するために,学術コミュニティーが学術データベースに求める機能を強化した近年の事例を紹介したい。

8.1 速報性

WoS Core Collectionはジャーナルデータを収録する場合,後世に残る形式が定まってから,つまり巻,号,ページ等が決定してから収録していた。しかし今後は,巻,号,ページが未定でも,最終的なDOIが定まった時点で収録する方針に変更した。この場合WoS Core CollectionのAccession Number注8)は保持され,その後,巻,号,ページ等を追加更新した形で収録される。この変更により情報が検索できるまでのタイムラグが小さくなることが期待できる。

8.2 オープンアクセス・オープンデータ

2011年から提供を開始したData Citation IndexとWoS Core Collectionとのリンクの強化がすでに進行中である。Data Citation Indexはオープンサイエンス,オープンデータの流れをくみ,論文執筆に用いた研究データリポジトリを収録した引用索引ファイルである。同時にオープンアクセスジャーナルのレコードについては,従来検索のみ可能であったが,現在はWoS Core Collectionからのダウンロードデータにオープンアクセスジャーナルのレコードである旨の情報が追加された。今後は論文単位のオープンアクセスの情報も追加する予定である。

8.3 相対指標と利用回数

研究コミュニティーの相対指標に対する注目度が高まっているが,相対指標へのアクセスの向上についても機能強化がされた。2014年からEssential Science Indicators(ESI)の中で特定されている,相対指標である高被引用論文(Highly Cited Papers)およびHot Papersをユーザーインターフェース上に表示して,絞り込み可能にしていたが,ダウンロードした場合も高被引用論文あるいはHot Papersのフラグが2017年6月に追加された。また引用という形で研究のインパクトが現れる前に研究者の興味を示す指標として「利用回数」を追加している。

9. おわりに

2017年6月,クラリベイト・アナリティクス社はブラウザの拡張機能としてWoSの検索窓の設定を可能にするとともに,2つの学術情報に関する発表を行った(34)。

一つがPublons社注9)の買収で,もう一つがImpactstoryへの助成である。Publons社はAndrew Prestonが2012年に設立した企業で,研究者の査読活動を支援するプラットフォームを提供している。査読は,ジャーナルを中心とした学術コミュニティーにとって必須でありながら,学術コミュニティーに果たす貢献を測る手段がなかった。どのようなジャーナルの査読をしているのかはジャーナルの指標を収録しているJCR等との親和性も高いことから,将来的には引用情報との統合等が期待される。

Impactstoryは質の高いオープンアクセスのDOIを収録したoaDOIを提供している。oaDOIはプレプリントリポジトリや出版者といった信頼できるオープンアクセス情報を収録している注10)。oaDOIの情報がWoS Core Collectionと融合することで,情報のオープン化に対応する学術コミュニティーに貢献できることが期待される。

図3 学術情報に関する発表
図4 Web of Science Core Collectionの検索窓

謝辞

この報告は2017年5月から6月にかけて,WoS Core CollectionおよびWoSのコンテンツ開発についての意見交換会における最新の紹介事項および参加者からの質疑応答等を基にまとめたものである。意見交換会には学会・研究機関・大学等の各セクターから多数の方が参加され,貴重なご意見をいただいた。参加された皆さまに改めてお礼申し上げる。

執筆者略歴

  • 安藤 聡子(あんどう さとこ) Satoko.ando@thomsonreuters.com

筑波大学第一学群自然学類卒業,図書館情報大学(現筑波大学)情報メディア研究科修了。協和発酵工業(現協和発酵キリン)にて知財調査および臨床試験支援に従事。2010年トムソン・ロイター(現クラリベイト・アナリティクス)入社。学術データの提供・分析・活用等を担当。学術情報事業部 シニア・データコンサルタント。

  • 澤 綾子(さわ あやこ) Ayako.sawa@clarivate.com

筑波大学大学院生命環境科学研究科修了。アップル・ジャパン(現Apple)にてMac・iPadなどを文教市場に販売するエデュケーション本部営業に従事。2011年トムソン・ロイター(現クラリベイト・アナリティクス)入社。研究機関や大学市場への学術情報営業を経て,学術情報事業部 研究支援マネージャー。

  • EDMUNDS, Mathilda(エドモンズ,マチルダ) mathilda.edmunds@clarivate.com

Temple University卒業。Drexel UniversityでMaster of Science in Information Systemsを修得後,2002年トムソン・サイエンティフィック(現クラリベイト・アナリティクス)入社。入社以来,一貫して学術情報,学術管理製品担当。2015年以降,Web of Science全体の幅広いコンテンツの収録評価全体の責任者。Director, Content Management。

本文の注
注1)  利用可能な引用索引ファイルおよび年代は,クラリベイト・アナリティクス社との契約により異なる。

注2)  ISI社は1958年にガーフィールドが創立。その後1992年にトムソン・サイエンティフィック社の傘下に入ったが,トムソン・サイエンティフィック社は2008年ロイター社と合併して,トムソン・ロイター社になった。2016年トムソン・ロイター社の知的財産・科学(Intellectual Property & Science)部門がトムソン・ロイター社から離れ,クラリベイト・アナリティクス社となったことによりクラリベイト・アナリティクス社の学術情報事業として存続している。

注3)  最初のSCIは5巻のプリント版からなる,約600の学術ジャーナルの引用索引であった。その後SCIは,Dialog等のオンラインベンダー等に供給されるとともに,1988年にCD-ROM版が発表された。1997年には 「Web of Science」としてWebで提供が開始された。なお,2015年までは,学術情報プラットフォームは「Web of Knowledge」いう名称で,「Web of Science」はプラットフォームではなく現行のWeb of Science Core Collectionという引用索引ファイルの総称と同義であった。2015年の呼称変更に伴い,プラットフォームはWeb of Science,引用索引ファイルはWeb of Science Core Collectionとなって現在に至る。

注4)  インパクトファクター:http://clarivate.jp/ssr/impact_factor/

注5)  最初の着想から実際の提供までの間に,ガーフィールドは引用索引の有用性や可能性について多様な研究を行っている9)。引用の有用性の代表的な例として,ノーベル賞受賞者予測として毎年9月に発表している引用栄誉賞が挙げられるが10),他にも引用索引の有用性の証明や,特定の分野であっても,適切なジャーナルを収集したデータベースが最も包括的で最も有用であることなどの検討を行った。研究評価や分析の実際の応用としては,1972年の米国国立科学財団による科学指標関連の報告書が最初である11)

注6)  Web of Science Core Collectionに収録されているジャーナルには,最大6つまでのWeb of Science分野が付与されている。3Filesは相互に重複がある。

注7)  ESCIが2005年までの収録遡及を終了する2017年末以降はシミュレーションの幅も広がり,2017年に発表された2016年インパクトファクターもシミュレーションが可能になる。

注8)  「WOS:」で始まる15ケタのWoS Core Collectionのレコード番号。UT番号とも称す。

注9)  Publons:https://publons.com/home/

注10)  Introducing oaDOI: resolve a DOI straight to OA:http://openaccessweek.org/profiles/blogs/introducing-oadoi-resolve-a-doi-straight-to-oa

参考文献
 
© 2017 Japan Science and Technology Agency
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