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Vol. 60 (2017) No. 8 p. 574-582

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http://doi.org/10.1241/johokanri.60.574

記事

情報通信技術や機械学習を活用した精神疾患重症度評価への取り組み

著者抄録

すべての医学領域において,疾患の重症度の評価は重要である。しかし,精神科領域では疾患の重症度を反映するようなバイオマーカーが不足しており,診断,治療,さらに新薬の開発などで問題が生じている。近年,情報通信技術(ICT)の発展が目覚ましく,こういった問題の解決にICTを活用する試みが行われている。その一つにテレビ電話を用いた中央評価があり,評価者によるバイアスを取り除くには有効な手段である。しかし,評価尺度そのものにも妥当性,信頼性などの問題が含まれている。一歩先のアプローチとして,ウエアラブルデバイス等を用いた診断支援技術の開発が複数報告されている。PROMPT(Project for Objective Measures Using Computational Psychiatry Technology)は日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究として始まった。慶應義塾大学を中心に7社が参画し,それぞれの会社の技術を持ち寄り,複数のデバイスから得られる情報を基に精神症状を定量することを目指している。また,UNDERPIN(Understanding Psychiatric Illness through Natural Language Processing)では科学技術振興機構(JST)CRESTの援助の下,静岡大学とのコラボレーションによって自然言語処理を利用した言葉(話し言葉や書き言葉)に現れる精神症状の特徴量の抽出を行い,精神疾患の予防・早期介入が可能になるような技術開発を目指している。

1. はじめに

精神疾患は罹患(りかん)率が高く罹病期間も長いため,人々の生活の質(QOL)を低下せしめるものとして最も重要な疾患群である。世界保健機関(WHO)などが行う世界疾病負担(global burden of disease)調査によると,うつ病,不安症,統合失調症,躁(そう)うつ病,薬物依存などを含む精神疾患は,障害生存年数(Years Lived with Disability:YLD。障害の程度や期間がどのくらい生命の損失になるかの指標)において他の医学領域を押さえ第1位,22.9%を占める1)

わが国における同様の統計はないが,精神疾患の患者数はうつ病(95.8万人;2011年),統合失調症(受診者のみの推計で71.3万人;2011年),不安障害を中心に合計320.1万人と見積もられており2),認知症(462万人;2012年)3)も含めると,罹患者数は莫大である。経済的損失・費用も甚大で,うつ病は2.7兆円4),認知症は14.5兆円5)と見積もられている。しかし残念なことに,現在の医療をもってしても,精神疾患の克服には程遠いのが現状である。今後のさらなる精神疾患の病態解明,予防や早期発見,有効な治療など,多面的な研究開発が望まれる。

精神疾患の診断は基本的には患者と精神科医の会話によって行われる。患者がどのように感じているのか,どのように考えているのかを会話からとらえ,典型的な患者との類似性や,健常とみなされる範囲をどの程度逸脱しているのか,といった観点から診断がなされる。血液所見や画像所見などのバイオマーカーによって客観的な重症度評価が利用可能な他の医学領域と異なり,精神科医の経験や感覚に依存する部分がある。こういった判断の方法は,精神科医間の診断の不一致,治療開始基準の不明確さなど,さまざまな問題につながっている。

実際,国・地域あるいは精神科医間の診断の不一致を憂慮して,米国精神医学会では症状項目数を満たすことで診断を行うカテゴリー診断の基準(DSM: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)を開発したが,近年の改訂では,重症度を加味する「ディメンジョン診断(多元的診断)」という方法が一部に取り入れられた。ところが,米国国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health: NIMH)ではまったく別の「Research Domain Criteria(RDoC)」を提唱し研究費を投入するなど,今なお精神科診断は混沌(こんとん)とした状況にある。さらに,症状の重症度を評価する評価尺度の得点が不安定であることが影響して,新薬開発のための治験の失敗が相次いでおり,複数の巨大製薬企業が精神科領域から撤退するなど6),事態は深刻である。

一方で,近年,情報通信技術(ICT)やそれらを通じて得られる膨大なデータを解析する技術の発展が目覚ましい。精神科領域においても,このような技術を使って先に述べた重症度評価の困難さに対処する試みがなされるようになった。一つのアプローチとして,遠隔医療技術,具体的にはテレビ電話を用いた中央評価がある。さらに一歩先のアプローチとしてウエアラブルデバイスや機械学習を用いた症状の定量化などの試みがある。

本稿では,まず,評価尺度の限界について触れ,さらに遠隔医療を用いた中央評価(centralized rating)について述べる。その後,ウエアラブルデバイスや機械学習を用いた新しい試みについて,筆者らのグループが取り組んでいる,PROMPT,UNDERPINを含めていくつかの研究を紹介する。

2. 「評価尺度」による重症度評価とその限界

「評価尺度」とは,適切な治療や医療サポートを受けるために共通の数量的基準を用いて,臨床評価の根拠を得るツールであり,心理学,精神医学領域では非常に頻繁に用いられる。多くの評価尺度は,症状を数値化することで客観性を保証しようとするものであり,複数の項目に対する得点の合算で症状の強弱を表現する仕組みになっている。

患者自身による自記式のもの,家族など周囲の人間が行うもの,訓練を受けた評価者が面接を通じて評価するもの,一定の課題を用いて行うものなどがある。今までに数多くの評価尺度が開発されており,1990年から2006年までに国内で発表されたうつ症状を調査した510の研究をまとめた奥村らのレビューによると,利用率が6.5%以上の評価尺度は5つであったが,利用率が6.4%未満の尺度は50種類以上あった7)

一般に精神疾患の評価には,客観的に観察することのできない患者の心的内界において起きている現象をいかにとらえるかという問題を常に伴う。評価尺度にしばしば伴う問題としては,「妥当性(validity)」および「信頼性(reliability)」が挙げられる。妥当性とは,測ろうとしている症状をその尺度が正確に測れているか,すなわち,その評価尺度を用いた推論が,症状を評価するのに適切であるか,有用であるかを示す概念である。また信頼性とは,評価尺度がどの程度安定した結論を示すかという概念である。複数の評価者が同じ評価尺度を用いて患者の重症度を計測する際に,同じ得点が得られるか,というのはこの信頼性という概念に含まれる。この誤差を排除するために検査者は面接の訓練を繰り返すが,それでも個人差を完全に排除することはできない。

また評価尺度は,評価対象とするものによって分類すると,大まかに以下の4つのグループに分けることができる。

  • (1)精神疾患全般を対象として,精神症状全般の程度を評価するもの(社会機能を定量するものなど)
  • (2)特定の精神疾患を対象として,精神症状全般の程度を評価するもの(うつ病の重症度を評価するものなど。気分の評価,食欲,睡眠など種々の評価項目が含まれる)
  • (3)精神疾患全般を対象として,特定の症状の程度を評価するもの(自殺のリスクの評価を行うものなど)
  • (4)特定の精神疾患を対象として,特定の症状の程度を評価するもの(うつ病患者に生じる精神運動抑制の評価など)

この分類に関連して,評価尺度がもちうる限界点として時に問題になるのが,評価尺度における「次元性(dimensionality)」である。次元性とは,評価尺度の各項目が同じ1つの特性を測定しているのか否かを指す。評価尺度は,1つのdimension(次元)に評価項目を絞ったunidimensionalなものと,複数のdimensionをカバーするmultidimensionalなものとに分類できる。このdimensionalityはその精神疾患がいかなるものであるととらえているかに密接に関わっており,評価尺度の良しあしとは直接関係はないが,multidimensionalな評価尺度は,時にまったく違うタイプの患者を点数のうえでは同様に扱う可能性をはらんでおり,注意が必要である。たとえば,あるうつ病評価尺度が抑うつ気分,罪責感,身体症状の3次元をカバーしているときに,抑うつ気分が非常に強く他の症状はあまりない患者と,身体症状ばかりが目立つ患者が,点数のうえでは同じように評価される,などである。

他にも評価尺度の施行に関して,単純ではあるが大きな問題は,施行に時間がかかるという点である。多くの患者を診察する忙しい臨床現場で,客観性の高い評価尺度をしっかり行うとすると,それだけで30分以上かかってしまい,現実的ではない。また本来であれば,治療の経過とともに,頻回に状態の変化をとらえるべきであるが,特に認知機能の検査においては「練習効果」から,患者が設問を覚えてしまい,本来の検査施行の意味がなくなる,といった問題もある。

3. 遠隔医療を用いた中央評価

「遠隔医療(telemedicine)」は文字どおりtele(遠隔)でmedicine(医療)をする行為であり,一般に通信技術を活用し離れた2地点間で行う健康増進,医療,介護に資する行為すべてを指す8)。特に,遠隔で行う精神医療は「tele-psychiatry(遠隔精神医療)」と呼ばれる。精神科の外来診療は互いの顔を見ながらの面接が大きな比重を占めるため,テレビ電話を用いた遠隔医療が応用しやすい診療領域である。実際,海外ではテレビ電話を利用した精神科領域の治験や臨床が普及し,保険診療として認められている国もある9)

先に述べた評価者によるバイアスは,治験を担当する医療機関においてしばしば問題になる。治験では研究に参加する患者をリクルートせねばならず,なかなか目標症例数に達しない場合も多い。このようなリクルートのプレッシャーや,患者の治療経過を知っていることなどが,バイアスが生じる原因として指摘されている10)。たとえば,治験の組み入れ基準を満たすことに主眼を置くために,必ずしも重症度が高くない患者に対して,本来よりも重症度の高いスコアが無意識のうちに付けられることがある11)。その後,治験に参加した患者は,効果を検証しようとしている新薬と,(薬としての効果がない)偽薬に割り付けられるが,治験が開始されると同時に,(無意識のうちにつり上げられた点数ではなく)本来の評価がなされるため,評価尺度の点数は,双方とも減少する。結果として統計学的に,実薬と偽薬との差を証明しづらくなる。

そこで,海外を中心に利用されるようになったのが,遠隔医療(具体的にはテレビ電話)を用いた「中央評価」である。不要な情報を知らされていない評価者がテレビ電話を使って患者の評価を行う方法で,製薬企業の主催する治験のみならず医師主導型の臨床試験にも用いられている12)13)。通常の対面で行う評価と比べた遠隔評価の高い一致度は,すでに数多くの研究で証明されている14)。先に述べた理由から治験では偽薬によっても症状が改善する(かのようにみえる)患者の率が高く,そのことが治験を失敗に終わらしめることが指摘されているが,中央評価を用いることで,偽薬反応者が抑えられるとの報告もある15)

残念ながら,日本においては遠隔精神医療の活用はあまり進んでいない。遠隔精神医療は治験で評価者のバイアスを取り除くのに大変有効ではあるが,治験のみならず,専門性の高い臨床評価や治療においてトレーニングを積んだ評価者や治療者が不足していたり,都市圏に集中していたりすることから医療格差の是正が進まず,特に地域医療においては望ましい医療が受けられないunmet needs(いまだ満たされていない医療ニーズや,いまだ有効な治療方法がない医療ニーズ)がある。たとえば,超高齢社会において精緻な神経心理検査は認知症の診断に不可欠であるが,中央評価を行うことで検査者不足を解決できるかもしれない。また,うつ病や不安症に効果が証明されている認知行動療法も治療者が不足しており,地域差も大きいため,遠隔医療が有効な手段となりうる。他にも過疎化地域,引きこもりなど多くの問題を抱える日本の精神医療で,遠隔精神医療は問題解決のための重要な手段になりうる。

4. 新たな試み

4.1 J-INTEREST

このような社会要請に応えて,2016年12月より日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究注1)として「遠隔精神科医療の臨床研究エビデンスの蓄積を通じたガイドライン策定とデータ利活用に向けたデータベース構築」が慶應義塾大学を中心に,開始された。「J-INTEREST(Japanese Initiative for Diagnosis and Treatment Evaluation Research in Telepsychiatry)」注2)と名付けられたこの研究では,以下(1)から(3)の3つを主要な目標としている。

  • (1)精神科診療場面における遠隔診療の診断信頼性,有効性,安全性,利用者満足度について4つの臨床研究を通じて検討する。

  • A)高齢者に対する遠隔認知機能検査信頼性試験
  • B)2医療施設間で行ううつ病に対する遠隔認知行動療法Feasibility study
  • C)強迫・不安等に対する在宅認知行動療法のパイロットシングルアーム試験
  • D)海外在留邦人に対するコホート調査

  • (2)遠隔医療の長所を生かした臨床研究のデータベースの在り方について検討し,モデルを構築・運用する。

  • (3)前述の(1),(2)によって得られた知見を通じて,暫定版ガイドラインを策定し,定期的なアップデートが可能となるような仕組みを整える16)1)。

少しずつではあるが本邦でも遠隔精神科医療のエビデンスが蓄積されつつある17)18)。遠隔精神医療は技術的には日本でも容易に施行可能であるが,通常の保険診療としての請求ができず,ビジネスとして成立しづらいのが,現時点での主な普及の抑制要因になっている。今後の活用推進に期待したい。


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図1 J-INTEREST研究全体像

4.2 ウエアラブルデバイスや機械学習を用いた新しい試み

前章では,遠隔医療を用いた中央評価の活用について,評価者のバイアスを取り除くことでより正確な評価を行うアプローチについて紹介した。しかし,評価尺度そのものに限界があり,遠隔医療の導入ですべての問題の解決が望めるわけではない。

機械工学や情報工学の発達の恩恵によって,人が24時間装着していても,あるいは常時携帯していても負担に感じず,かつ有用なデータが取得可能なデバイスが開発され普及している。取得できる情報はさまざまで,活動量,睡眠量,心拍数,呼吸数,位置情報などがある。精神科領域においてもウエアラブルデバイスやスマートフォンから取得可能なデータを用いた先行研究が多く存在する。Doganら19)によるスマートフォンを用いた気分障害患者のモニタリング研究のシステマチックレビューでは,同定された28本の研究で,生理学的データ(心拍変異度),行動データ(電話の使用,身体活動,音声の特徴),環境データ(光への曝露,場所)を用いていた。これらの研究では,生理学的,行動,環境データを用いて気分の状態の推定を試みており,一定の精度で可能であることが報告されている。

たとえば,活動量の記録を基に双極性障害の気分との関連を検証したGrünerblらの研究20)では,うつ病の改善とともに活動量が増え,また躁病の改善とともに減少することを報告した。Gideonら21)は,構造化されたインタビューの録音音声から,気分の状態を同定する特徴量の抽出に成功したと報告している。また,Karamら22)は特に構造化しない会話録音の特徴から軽躁状態の判別を行うことが可能だったと報告している。Cohnら23)は患者の表情と声の解析を利用して,うつ病の発見を行うツールを開発している,これらの研究の多くはこのようなデバイスから得られる大量のデータを,機械学習を用いて解析し症状の予測を行っている。また,これらの研究のうちいくつかは,特定のパラメーターのみではなく,複数のパラメーターを組み合わせてより精度の高い気分の推定を行うことを目指している。

4.3 PROMPT

筆者らのグループでも,種々のセンサーから得られる情報を収集し,機械学習を利用して精神症状の定量化を目指すプロジェクトを2015年から進行中である。「PROMPT(Project for Objective Measures Using Computational Psychiatry Technology)」注3)と名付けたこの研究は,日本医療研究開発機構の「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業『ICTを活用した診療支援技術研究開発プロジェクト』(2015~2018年度)」の委託研究として,FRONTEOヘルスケア,日本マイクロソフト,オムロン,ソフトバンクなど国内7つの会社が参画している産学連携プロジェクトで,それぞれが自分たちの技術を持ち込み,診察場面における患者の声の調子,体動や表情の変化を定量化し,重症度と相関するような機械学習アルゴリズムを開発している。

診察場面で取得される上述のデータはクラウドに送られ,解析された後,診察室にリアルタイムにフィードバックされる。ウエアラブルデバイスを用いた日常生活の活動,睡眠等のモニタリングも合わせて行い,それらを診察室で「見える化」し,主治医と共有できるようなシステムの開発を目指している。ともすれば主治医の感覚や経験に頼りがちな(無論,経験や感覚は重要であり,それを否定しているわけではない)精神医療に,患者が,主治医と共有できるデータを提供することで,精神医療の新しい形が提供できるかもしれない(23)。


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図2 PROMPT研究開発全体像


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図3 集約的データ解析・実用化のイメージ図

4.4 自然言語処理を用いた試み

筆者らが手掛けている別プロジェクト「UNDERPIN(Understanding Psychiatric Illness through Natural Language Processing)」注4)は,科学技術振興機構(JST)CRESTの2016年度採択課題「自然言語処理による心の病の理解:未病で精神疾患を防ぐ」の一環として行っている。静岡大学とのコラボレーションによって,言葉に表れる精神症状の特徴量の抽出を行おうとするものである。たとえば,躁病においては,観念奔逸(かんねんほんいつ)と呼ばれる,思考が本筋から逸脱したり飛躍したりしてまとまらない状態が認められることがある。また,認知症においては,単語が思い出しづらくなるような語想起障害と呼ばれる状態が認められることがある。自然言語処理を利用し,このような特徴を発病前,あるいは早い段階で特定することで,精神疾患の早期発見・早期介入が可能になるような技術開発を目指しており,実際に海外でも類似の先行研究が報告されている24)。発病前段階での早期発見,早期介入に役立てることができる技術として今後の研究成果が期待される。

このような種々のデータに対して機械学習を行う試みは多く行われているが,これらの研究の問題点は,まだパイロット段階のものが多く,サンプル数が少ないこと,対照群として健常者のデータも収集した研究が少ないこと,単施設でのデータ収集にとどまること,精度の検証に際して1個抜き交差検証(データを1つ取り除いてそれ以外のデータでトレーニングを行い,取り除いてあったデータについて検証する。この行為を繰り返す検証方法)が用いられていることが多いこと,トレーニングを行ったのとは別のデータセットでの精度検証を行っている研究が少ないことなどが挙げられる。

これらの研究開発はまだ黎明(れいめい)期であり,今後のより大規模な科学的検証に耐えうる研究の進展が望まれる。そのような現状の中,これまでには行えなかった情報量にあふれた縦断的なデータの取得およびその解析が可能になっており,精神科領域における情報通信技術や機械学習を活用した研究への期待が高まっている。

5. おわりに

精神疾患は現代社会において,人類に最も負担を与えている疾患群の一つである。本稿では精神疾患の重症度評価の難しさを例として挙げ,従来の研究方法に限界が生じていることを述べた。ICTや解析技術の進歩とともに従来ではなしえなかった新しい形での研究開発が行われるようになっており,期待が高まっている。無論,ICTだけではすべての問題の解決には至れず,脳研究をはじめとした基礎医学的な病態解明は必須であるが,今回紹介した新しいアプローチも取り入れた集学的な取り組みによって,一刻も早い精神疾患の克服が望まれる。

執筆者略歴

  • 岸本 泰士郎(きしもと たいしろう) tkishimoto@keio.jp

2000年慶應義塾大学医学部卒業。精神科医・医学博士。国家公務員共済組合連合会立川病院,医療法人財団厚生協会大泉病院を経て,2009年よりThe Zucker Hillside Hospitalに留学。2012年Hofstra Northwell School of Medicine, Assistant Professor of Psychiatryに就任。2013年より慶應義塾大学医学部専任講師に就任,現在に至る。日本神経精神薬理学会評議員,日本臨床精神神経薬理学会評議員,日本遠隔医療学会理事等。精神科領域における情報工学等,他領域の技術の活用に積極的で,厚生労働省保健医療分野におけるAI活用推進懇談会構成員なども務める。

  • LIANG Kuo-ching(リョウ, コクケイ)

1999年カリフォルニア大学バークレー校電気工学部卒業。コロンビア大学で博士号を取得後,2008年よりメイヨークリニック,2011年より東京大学,2015年より慶應義塾大学で,医学・遺伝学研究における機械学習の応用に従事している。

  • 工藤 弘毅(くどう こうき)

2005年東京大学卒業,同大学院にて言語情報科学を専攻。2013年北里大学医学部卒業,東京都立松沢病院にて臨床研修修了。2015年慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室入局,現在は東京歯科大学市川総合病院勤務。精神科医,日本精神神経学会精神科用語検討委員会委員。関心領域は精神病理学,言語学。

  • 吉村 道孝(よしむら みちたか)

慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室 研究員 臨床心理士。生理心理アセスメントを専門とし,現職では精神疾患の症状評価,センシングの最適化を担当。

  • 田澤 雄基(たざわ ゆうき)

2014年慶應義塾大学医学部卒業。現在,精神科医・慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程。大学院では人工知能やIoTを活用した精神医学研究に従事。医学部在学時代にヘルスケアIT領域で起業し,売却した経験をもち,その経験を生かして現在では慶應義塾大学医学部の産学連携基盤推進プロジェクトを担当。他,東京都医師会で医療情報検討委員を務める。

  • 吉田 和生(よしだ かづなり)

2007年徳島大学卒業。精神科医・医学博士。慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室,医療法人財団厚生協会大泉病院を経て,2017年よりCentre for Addiction and Mental Health(CAMH)に留学し現在に至る。CAMHでは,精神科における薬理遺伝学/ゲノム薬理学分野における研究に従事する傍ら,日本遠隔医療学会会員として日本における遠隔医療に関する研究にも参画している。

本文の注

注1)  「ICT技術や人工知能(AI)等による利活用を見据えた,診療画像等データべース基盤構築に関する研究」として採択された。

注2)  J-INTEREST:http://www.i2lab.jp/j-interest/

注3)  PROMPT:http://www.i2lab.jp/prompt/

注4)  UNDERPIN:http://www.i2lab.jp/underpin/

参考文献

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