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Vol. 60 (2017) No. 8 p. 599-602

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http://doi.org/10.1241/johokanri.60.599

集会報告

集会報告 ACM SIGIR 2017:第40回 International ACM SIGIR conference on research and development in information retrieval

開催情報

  • 日程   2017年8月7日(月)~11日(金・祝)
  • 場所   京王プラザホテル(東京都新宿区)
  • 主催   ACM SIGIR

1. はじめに

1.1 ACM SIGIR

ACMは「Association for Computing Machinery」,SIGIR(シグアイアール)は「Special Interest Group on Information Retrieval」の略である。SIGIRは,計算機科学の学会であるACMの情報検索に関する分科会である1)

ACM SIGIRは年に1度,同名の研究集会(国際会議)を開催しており,国際会議としてのACM SIGIRは情報検索分野における最もメジャーな国際会議とみなされている。

1.2 ACM SIGIR 2017

ACM SIGIR 2017注1)(以下,SIGIR 2017)は今年で40周年にあたり,初の日本開催である。1はSIGIR 2017のロゴである。富士山とビル群が日本・東京を象徴し,カラフルな花火がダイバーシティ(多様性)と40周年の祝賀を表している。

総参加者は911名で,SIGIR史上最大の人数となった。国別でみると,日本,米国,中国からの参加者がトップ3であった。

論文投稿(フルペーパー)数は,中国と米国が他を大きく引き離してトップ2であり(採択数は米国の方が多かった),英国,シンガポール,ドイツ,オーストラリア,カナダ,日本と続く。投稿の多かったトピックトップ3は,「Recommender Systems(推薦システム)」「Text Representation(テキスト表現)」「Retrieval Models(検索モデル)」であった。

初日がチュートリアルと博士(ドクトラル)コンソーシアム,2~4日目が本会議(基調講演,口頭発表セッション,ポスター&デモセッション,企業トラック),最終日にワークショップという日程であった。

ジェネラルチェアは国立情報学研究所の神門典子教授,早稲田大学の酒井哲也教授,筑波大学の上保秀夫准教授である。筆者は組織委員の一人であり,広報・ソーシャル共同チェアを務めた。


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図1 SIGIR 2017 ロゴ

2. 初日

2.1 チュートリアル

全日3つ,半日4つの合計7つのチュートリアルが開催された。特筆すべきは「Neural Networks for Information Retrieval(NN4IR)」で,約250名(チュートリアル中最大)の事前参加登録があった。この人気は,情報検索はもちろん計算機関連の学会から世間一般にまで及ぶ,人工知能やニューラルネットワークのブームを反映していると思われる。

7つのチュートリアルのうち,3つがテスト・実験に関するもので,情報検索分野の特徴を表している。

2.2 博士(ドクトラル)コンソーシアム

博士コンソーシアムは博士課程の院生に,発表の機会と,研究者とのディスカッションや研究者からのアドバイスを得る機会を与えるもので,今回は9つの発表(採択率64%)が行われた。

3. 本会議

3.1 基調講演

基調講演はOkapi BM25(情報検索の1手法)で名高いStephen Robertson教授と,Yahoo Vice-President of ResearchのYoelle Maarek博士である。

Robertson教授の講演題目は「Forward to the past: Notes towards a pre-history of web search」で,Web検索に関して,Google以前から存在する,世間では見落とされがちな情報検索研究成果について言及するものであった。

Maarek博士は「Mail Search: It’s Getting Personal!」という題目で,メール検索がいかにWeb検索と異なるか,どのようにランキングするかなど,メール検索に関する研究成果を紹介した。

3.2 口頭発表セッション

78のフルペーパー(採択率22%)が口頭発表セッションで発表された。

セッションには,「Filtering and Recommending(フィルタリングと推薦)」と「Retrieval Models and Ranking(検索モデルとランキング)」がそれぞれ3セッション,「Document Representation and Content Analysis(文書表現と内容分析)」「Evaluation(評価)」「Search Interaction(サーチインタラクション)」が各2セッションあった。検索モデルとランキングや評価は情報検索のコアなトピックであり,フィルタリングと推薦,サーチインタラクションなどは近年のトレンドである。

他のセッションとして,「Conversations and Question Answering(会話と質問応答)」「Efficiency and Scalability(効率性とスケーラビリティー)」「Entities(エンティティー)」「Other Applications and Specialized Domains(他のアプリケーションと専門領域)」「Personalization and Privacy(パーソナライゼーションとプライバシー)」「Queries and Query Analysis(クエリとクエリ分析)」「Social(ソーシャル)」があった。

口頭発表セッションには,12の「TOIS paper」の発表もあった。これは,SIGIRと関係の深い「ACM Transactions on Information Systems(TOIS)」に掲載された論文を,SIGIRが主催する次の年のSIGIR,CHIIR,ICTIRの3つの会議の中から論文の著者が1つを選んで発表できるという今年始まったしくみによる。

3.3 ポスター&デモセッション

採択された121のショートペーパー(採択率30%)が,ポスターとして発表された。2017年は通常のショートペーパー(研究)に加えて「リソース」というカテゴリーがあった。内訳は研究が106,リソースが15であった。また,17のデモペーパー(採択率47%)がデモとして発表された。ポスターとデモは同じセッションの枠内で発表された。2はポスター&デモセッションの様子である。


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図2 ポスター&デモセッションの様子

3.4 企業トラック(SIRIP)

企業トラック(SIGIR Symposium on IR in Practice (SIRIP))では,2016年に続き,スタートアップやスピンオフに関する発表が奨励された。「Start-Ups and Beyond」「Start-up Research and Academic Collaboration」「Research at Large-scale Search Engines」の3セッションがあり,12の発表があった。

4. ワークショップ

最終日に6つの全日,2つの半日ワークショップがあった。事前登録者数が約180名と最大だったのは「Neu-IR’17: Neural Information Retrieval」であり,チュートリアルと同様,ニューラルネットワークに対する参加者の関心の高さを感じた。

5. 各賞

ベストペーパー賞はGoodwin氏らの「BitFunnel: Revisiting Signatures for Search」2)であった。インデックスの定番であるインバーテッドファイルに劣るとされてきたシグネチャーファイルを,検索エンジンBingに実装した技術についての研究である。他には学生ベストペーパー賞があり,さらに2017年からベストショートペーパー賞が新設された3)

10~12年前のSIGIRで発表された論文の中から10年以上たっても強い影響力を有する論文を選ぶTest of Time賞は,Teevan氏らのSIGIR 2005の論文「Personalizing search via automated analysis of interests and activities」4)に与えられた。

今年から,よい査読をした査読者にも賞が与えられることになり,「Outstanding Senior Reviewer」として8名,「Outstanding Reviewer」として29名が表彰された。

6. ソーシャルプログラム

バンケットは,8月9日にホテル椿山荘東京で行われた。あいにくの雨であったが,宴会場にはお寿司,かき氷,飴細工の屋台が出て,参加者に好評であった。

他のソーシャルプログラム(8月7~10日)として,情報検索分野の女性支援のための「Women in IR」,参加者と同伴者が軽食とアルコールで集う「ウエルカムレセプション」,学生がよろずアドバイスをもらえる「Students’ Luncheon」,学生を中心にカラオケで交流する「Students’ Get-Together」,性別だけでない多様なダイバーシティについて考える「Diversity & Inclusion Luncheon」,ACMの分科会としてのSIGIRの総会にあたる「SIGIR Business Meeting」などが行われた。

7. 併設イベント

SIGIRに先立ち,サマースクール The 3rd Asian Summer School in Information Access(ASSIA 2017)注2)が8月2日から5日に京都で開催された。学生や若手研究者・技術者を対象として,情報アクセスに関する世界一線級の研究者による最先端のトピックを含む9つの講義と,ポスター発表会,論文執筆に関するパネル討論などが行われた。参加者は講師を含め63名であり,うち半数以上は海外からの参加であった。

8. その他

東京都の支援による,東京観光,着付け,茶の湯などの海外からの来訪者・同伴者のためのプログラムが好評であった。無料の東京観光ツアーを受け付ける「Tokyo City Information Desk」に並ぶ列は,会議受け付けの列より長いこともあった。

託児サービスが企画されたが,残念ながら事前締め切りまでに申し込みがなかったため提供されなかった。しかし当日会場で託児サービスを利用したいという同伴者が現れ,ニーズを感じた。

9. おわりに

SIGIR 2017はSIGIR史上最大の参加者数を誇る会議となり,終了直後の参加者アンケートの満足度も非常に高かった。「過去最高の景色のチュートリアル」とTweetする参加者がいるなど,SIGIR 2017は会場からの景色(3)とともに記憶と記録に残る会議となるだろう。

2018年のSIGIR 2018注3)は米国のAnn Arbor(ミシガン州)である。トピックごとに査読が行われる予定で,「Search and Ranking」のような定番だけではなく,「Foundations and Future Directions(基礎と未来の方向性)」「Artificial Intelligence, Semantics, and Dialog(人工知能,セマンティクス,対話)」などの文言が新しい。SIGIRは伝統的でハードルが高いと感じている人も投稿などに挑戦してみてはいかがだろうか。


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図3 会場からの景色(都庁を望む)

謝辞

SIGIR 2017は以下の機関に協賛をしていただいた。この場を借りてお礼を申し上げる。ヤフー株式会社,Baidu,Alibaba Group,Amazon,Sogou,楽天,Wider Planet inc.,Microsoft Corporation,Yahoo Research,Google,IBM,eBay,NAVER Corporation,Huawei Technologies,Yandex,LINE Corporation,日立製作所,JASIST(Wiley Co.),Facebook,Morgan & Claypool Publishers,Springer,now publisher,東京都観光財団,NICT国際交流プログラム,KDDI財団,言語処理学会,国立情報学研究所,ACM SIGMOD 日本支部,情報処理学会,情報処理学会 データベースシステム研究会,情報処理学会 情報基礎とアクセス技術研究会,日本図書館情報学会,筑波大学知的コミュニティ基盤研究センター,日本データベース学会,電子情報通信学会,電子情報通信学会 データ工学研究専門委員会,人工知能学会。

(大阪市立大学 大学院創造都市研究科 村上晴美)

本文の注

注1)  SIGIR2017 The 40th International ACM SIGIR Conference on research and development in information retrieval : http://sigir.org/sigir2017/

注2)  ASSIA 2017 The 3rd Asian Summer School in Information Access (ASSIA 2017) : http://goassia.github.io/assia2017/

注3)  SIGIR 2018 Ann Arbor, Michigan - July 8-12 : http://sigir.org/sigir2018/

参考文献

1)  "About". SIGIR. http://sigir.org/general-information/about/, (accessed 2017-08-28).
2)  Goodwin, Bob. et al. "BitFunnel: Revisiting signatures for search". Proceedings of the 40th international ACM SIGIR conference on research and development in information retrieval. Tokyo, 2017-08-07/11. ACM SIGIR. ACM, 2017, p. 605-614.
3)  "Awards". SIGIR. http://sigir.org/sigir2017/program/awards/, (accessed 2017-08-28).
4)  Teevan, Jamie. et al. "Personalizing search via automated analysis of interests and activities". Proceedings of the 28th annual international ACM SIGIR conference on research and development in information retrieval. Salvador, Brazil, 2005-08-15/19. ACM SIGIR. ACM, 2005, p. 449-456.
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