Journal of Information Processing and Management
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2017 Volume 60 Issue 8 Pages 618

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編集後記

哲学者の故今道友信氏は弊誌50周年記念号の記事「情報倫理」(http://doi.org/10.1241/johokanri.50.649)において,インターネット上のやりとりを,神話の「隠れ蓑」の実現,と表現しています。

「互いに名前も素性もまったく知らせることもなく,メールアドレスやニックネームだけで情報を交わし,それをもとにしてさまざまの形の具体的行為にも及ぶ」からです。科学技術がこれまで実現できなかった唯一の魔法術である「隠れ蓑」。それが実現したことによって,「おのれを隠し通して常に人びとを脅迫し,不特定多数の相手に向けて許されない商いごとを語りかけること」ができるようになったと述べています。

今道氏は情報倫理教育が不可欠であるとしています。情報倫理の基本として自己規制だけでは不十分であり,「『人間の生命は自他ともに一回性現象であり,自己の行為は歴史的事実として世界に刻印される』という事実を意識せしめる教育は絶対に必要である」と述べています。「『情報次元におけるリセット可能性は現実の世界ではありえない』という「行為の歴史的一回性の重み」に言及しています。

あれから10年がたち,科学技術はさらに進歩を重ねました。科学技術の取り組みは,今や人間存在の根源に関わる哲学的な検討と無関係に行うことができないところまできています。わたしたちは,いま技術がどこまで進んでいるのか,何が課題となっているのか,どんな危険があるのかを知らずに過ごすことはできなくなりました。

今号は情報に関連した科学技術について,取り組みの現状と課題を解説する記事が並んでいます。ここで取り上げた各種の最新技術は,いずれも以前は不可能であったことを可能にする技術です。

前述の今道氏は,哲学を「おのれの魂の世話」と呼んでいます。「すべては人間として『よく生きる』ための憧憬(あこがれ)から湧き出る」という氏の結びの文言を,折に触れかみしめています。(KM)

次号予定

  • ●   衛星リモートセンシングで海洋空間を知る:水産資源の持続可能な利用のためのアプローチ
  • ●   医療情報の標準化:国内外の状況と展望
  • ●   生体内で働く分子ロボットの実現へ:情報媒体としてのDNA分子とDNAコンピューティング
  • ●   連載:「情報」とはなにか 第7回 情報×遊戯性 創造博物館のアトラクション的手法から考える

編集委員会

  • <委員長>小賀坂康志(科学技術振興機構)
  • <編集委員> 江草由佳(国立教育政策研究所)・岡安渉子(富士通㈱)・小河邦雄(大正製薬㈱)・清田陽司(㈱LIFULL)・山下正隆(旭化成㈱)
  • 住本研一・青山幸太・木村美実子・佐藤恵子・嶋田一義・坪井彩子・中村拓・火口正芳・福島俊一・森亮樹・山崎美和・余頃祐介(以上 科学技術振興機構)

編集事務局

  • 木村美実子(事務局長)・酒井加代子・大井喜久子・
  • 関根佳美(以上 科学技術振興機構)

版下作成・印刷

  • 昭和情報プロセス株式会社

発行

  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
  • 〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
  • 「情報管理」編集事務局
  • Tel. 03(5214)8406 Fax. 03(5214)8460
  • E-mail: joho-kan@jst.go.jp
  • http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/

 
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