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図書紹介 『パッと見てピン!動作観察で利用者支援:理学療法士による20の提案』
田村 俊作
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60 巻 (2017) 9 号 p. 683

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書誌情報

  • JLA図書館実践シリーズ36 『パッと見てピン!動作観察で利用者支援:理学療法士による20の提案』
  • 結城俊也著
  • 日本図書館協会,2017年,B6判,183p.,1,700円(税別)
  • ISBN 978-4-8204-1706-4

すり足で小刻みに歩いている人がいる。椅子から立ち上がるのがつらそうな人がいる――街でよく見かける光景である。高齢者が増え,同時に,高齢者であれ障害者であれ,誰でも自由に散歩や買い物を楽しめる環境を整備しようという認識が普及してくると,誰に対しても開かれている公共の施設では,高齢者や障害者にも快適かつ安全に利用してもらえるような配慮がより一層求められることになる。公共図書館はそうした配慮が求められる施設の典型であろう。

本書の著者・結城俊也は理学療法士。長年リハビリテーションに携わってきた経験と知識を生かして,日常生活上の動作や運動の介助,病気の予防や危険の防止などにおいて,公共図書館が果たしうる役割や,利用者対応における注意点などについて発言をしている。『認知症予防におすすめ図書館利用術:フレッシュ脳の保ち方』(日外アソシエーツ 2017)という著書の他,各地の図書館関係の講演会で講師を務めている。本書はリハビリテーションの専門家によって書かれた,公共図書館員のための,動作観察に基づく利用者支援のための手引書である。

第1章「動作支援の必要性とからだの動き」では,動作観察の目的・意義と観察のポイントが簡潔に説明されている。観察のポイントでは,高齢者を中心に,利用者が館内でどんな姿勢で何をしているのか,そしてそのときにどんな危険があるのかを,図を交えてわかりやすく解説している。

第2章「生活機能障害を引き起こす代表的な疾患」では,病気に焦点を当てて,動作上の障害や困難を引き起こす代表的な病気を取り上げ,その主な症状を解説している。取り上げている病気は脳性麻痺(まひ),大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折,認知症,パニック症と多岐にわたる。また,素人にも理解できる範囲でわかりやすいように工夫した説明になっている。

第3章「歩行・移動・移乗介助の基礎知識」では,つえ,車椅子,歩行車・シルバーカーを取り上げて,それぞれの概要と,使用する人を介助する際の注意点を,図を用いて丁寧に説明している。

第4章「パッと見てピン!動作から導き出す配慮・20の提案」は本書の中心ともいえる章で,小刻みに歩いている,といった介助を必要としそうな動作上の特徴を20個挙げて,それぞれ,特徴的な現象,現象を生み出していると予想される病気,配慮する際のポイントを解説している。予想される病気は第2章で取り上げたものよりずっと広範囲なので,必要に応じてどんな病気か別に調べるとよいかもしれない。実際の場面で出会ったときに参照するのに便利なように,配慮すべき点,注意点が簡潔に整理され解説されている他,現象ごとに囲みでポイントがまとめられている。

第5章「チェックしよう!あなたの図書館の利用者支援力――設備面を中心に」では,入り口やカウンターといったエリアごとに,高齢者や障害者に配慮するための施設・設備の留意点が説明されている。

本書は実践の手引書であるから,単に読むだけでなく,手元に置いて,介助すべき現象に出会ったときに参照し,また,施設や設備を整備する際に役立てるのがよいだろう。また,本書で述べられていることは,単に公共図書館だけでなく,日常生活のさまざまな場面でも役立てることができそうである。

(慶應義塾大学名誉教授 田村俊作)

 
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