岡山医学会雑誌
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老年期せん妄状態の臨床的研究
河野 基樹
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1969 年 81 巻 11-12 号 p. 677-687

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抄録

明らかな脳器質的障害によって精神症状を示すものを除いた老年期せん妄状態について,臨床的に観察調査した.発生頻度は老年期精神疾患の9.5%であり,そのうちの35例について次の如き結果を得た.性格傾向は,内気,小心,神経質など内向的性格が21例中17例を占め,発症年月は,冬季においては35例中2例と極めて少なく,夏季には17例で全体の48.7%に達している.せん妄期間は平均29日で,転帰は,寛解24例,死亡7例,軽度の痴呆とか感情失禁など一部の症状を残して治癒したもの4例であった.
誘因により4群に分類すると, I.身体因によるせん妄群, II.心因によるせん妄群, III.心因,身体因によるせん妄群, IV.誘因の認められないせん妄群,となり, IIおよびIII群は女性が, 14例中13例と多くを占め,心因と女性のせん妄との関連がうかがわれた.
Weinsteinらの方法によるアミタール・テストにより,意識ないし見当識保持に関する予備能を検し,老年期せん妄の発症には,1) 性格的素因, 2) 身体因, 3) 心因(特に女性), 4) 予備能の減弱が重要な因子となることを述べて考察した.
治療にシチジンモノ燐酸を用い, 13例中7例と, 50%以上の有効率を認めた.

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