歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Streptococcus mutans AHT株の管壁付着能変異株の分離と性状
古賀 敏比古井上 昌一
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1977 年 19 巻 1 号 p. 117-127

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抄録

本研究の目的は, Streptococcus mutansの有する齲蝕原性因子の解明に寄与するため, 様々に性状の変異した株を分離することにある。
S. mutans AHT-WT株をニトロソグアニジン処理して, スクロース培地中での管壁付着性および集落形態を異にする5タイプ25株の変異株を得た。M1, M2およびM13株で代表される3タイプの変異株は壁付着を全く示さなかった。M9タイプ株は付着量は少いが強固な付着性を示した。M35タイプ株は付着力の比較的弱い極めて多量の付着物を形成した。1N NaOH-可溶性菌体固着性グルカンの産生量は, 壁付着能を保持していた2タイプの変異株においてはWT株と同等であったが, 欠失株では極度に低下していた。水溶性グルカンの産生量は全てのタイプの変異株において増加していた。各変異株の示す壁付着能とglucosyltransferase活性およびグルカンによる菌体凝集との間に相関は認められなかった。
各性状において様々に異ったこれらの変異株は, 齲蝕原性因子の解明に資すると思われた。

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