抄録
Cocaineの発見以来, 数多くの合成局所麻酔薬が研究開発され, 少数のものが現在繁用されているが, いずれも理想的な局所麻酔薬の条件を満たすには不充分な点もかなり見られる。本研究は, 従来の局所麻酔薬の構造特異性に固執せず, 種々の化学構造の点から, 理想的な局所麻酔薬を開発することを目的とした。
今回は, 3-dialkylamino-1, 2-epoxypropaneに, NaOH存在下でphenolを作用させ, 1-dialkylamino-3-phenoxy-2-propanol (III) とし, さらに, 水酸基の誘導体として, phenylcarbamate, phenylthiocarbamate (IV) を合成した。分離精製はカラムクロマトグラフィーで, 確認はIRスペクトル測定およびC, H, N元素分析測定によった。これらの化合物のラセミ体の塩酸塩について, 局所麻酔作用, 急性毒性の検定を行なった。その結果, 一般に表面麻酔作用よりも浸潤麻酔作用の持続時間が長かった。一方, III群のaromaticaminoalcoholをIV群のphenylcarbamateなどに導くと, 表面, 浸潤麻酔作用とも持続時間が減少する傾向が認められた。急性毒性は, III群よりもIV群の誘導体の方が一般に低い値を示した。