歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
エナメル叢の走査電子顕微鏡による観察
小高 鉄男
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1978 年 20 巻 4 号 p. 832-843

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抄録

エナメル葉とよく比較されるエナメル叢は, 低石灰化の部位あるいは有機質に富んだ部位として知られているが, その微細構造については不明瞭な点が少なくない。
著者はヒトの歯牙の横断研磨面を, 0.5%硫酸クロミウムまたは2%EDTAでetchingし, CO2の臨界点乾燥後, 走査査電子顕微鏡を用いて観察を行った。
エナメル叢は有機性の薄板からなる基底部 (または柄) と, エナメル小柱を包含した体部とに大別される。薄板は, 象牙細管の末端に連絡すると考えられる象牙質表面の小溝から立ち上り, エナメル象牙境付近ではエナメル小柱を貫抜き, やがてエナメル小柱の間を縫うように走行する。エナメル象牙境から40~60μm離れた地点で, 薄板はエナメル小柱の周囲を取り巻きながら分散する。エナメル叢の体部は薄板が分散した鞘状の膜と, それらの鞘に囲まれ, 比較的有機質に富むエナメル小柱の頭部と尾部とから構成される。一方, エナメル葉はエナメル質のどの部位でも, 有機性の膜構造を示すと考えられる。

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