1980 年 22 巻 4 号 p. 714-721
幼若エナメル質基質の硫酸化物質の本態と動的変化を検索するため, 35S一硫酸ナトリウムと3H-プロリンとをラットに投与し, ラベルされた幼若エナメル質の有機質をポリアクリルアミドゲル電気泳動, ゲル濾過クロマトグラフィー, 酵素消化を行って分析した。
その結果, 幼若エナメル質には, これに含まれる有機質の大部分を占めるエナメルタンパク質とは性質を異にする, 分子量14,000~16,000の硫酸化物質が存在し, 35S-硫酸の大部分はこの画分に取り込まれることがわかった。この硫酸化物質は, エナメルタンパク質よりも早い時期にエナメル質から消失し, その諸性質から酸性ムコ多糖ではなく, 硫酸化糖タンパク質である可能性が示唆された。