歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Streptococcus mutans K1-R変異株の分離とその生物学的性状について
岸本 悦央森岡 俊夫
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1981 年 23 巻 2 号 p. 352-360

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抄録

Streptococcus mutans K1-R株をニトロソグアニジンで処理し変異株38株を分離した。これら変異株について多糖合成能, 壁付着能, 凝集能, 発育および糖発酵能を検索した結果, ガラス壁付着能と多糖合成能との間に最も高い相関が示された。またこれら変異株の壁付着性を比較すると, 全グルカン合成量に対するalkaline-soluble glucan比が50%程度まで低下した菌株には肉眼的に不透明な顆粒状の付着状態に変化がみられないが, それが20%まで低下すると透明感が付与された。またこの比が7%と低値になっても付着能は存在したが, 1%にまで低下すると付着能は欠落した。
一方, これら変異株についてハムスターでのウ蝕実験を行なったところalkaline-soluble glucan合成比の度合が必ずしもカリエス・スコアーに反映されるとは限らず, ウ蝕病巣の成立にはそれ以外の要因が関与している可能性が示唆された。またガラス壁付着能を保有する変異株はハムスター歯苔に定着することが認められた。
これらの結果は付着能を保有するS.mutans変異株は歯苔構成細菌として歯面に定着しうることから, これら変異株をウ蝕抑制の目的に用いうる可能性が示唆された。

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