歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Streptococcus mutans血清型a-gの菌体外物質の走査型電子顕微鏡観察
山本 光人林 敦子梅本 利彦辻 英喜磯村 公明高橋 秀文平田 健一並河 勇
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1983 年 25 巻 1 号 p. 20-30

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抄録

Streptococcus mutans血清型a-gの平滑面付着に重要な役割を演ずる不溶性菌体外多糖体を主とする菌体表層物質の存在状態を知る目的で, 乾燥法の異なる2種の試料を走査型電子顕微鏡で観察, 比較検討した。風乾試料の場合, スクロース加トリプチケース・ソイブロスでは, a~e血清型の菌表層に粘着性の強い莢膜様の菌体外多糖体が, fおよびg血清型では塊状の菌体外物質が観察された。また, スクロース無添加培地で発育したe~g血清型株には, 菌付着に関与すると思われる菌体外物質が認められた。
エタノール脱水試料では, スクロース加プロス培養したd血清型の菌表層は比較的滑沢で, b, d血清型では交差する多くの細糸から成る網状構造を介して細菌が集塊していた。プロスのみで培養した血清型では,網状構造物が認められたが, スクロース培養では網状構造物の他に塊状構造物が観察された。
以上の結果から, 本菌の平滑面付着に関与する菌体外多糖体の形態観察には風乾試料が適しており, 血清型によって菌体外多糖体の存在状態が異なることが示唆された。

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