歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Streptococcus mutansの産生する溶菌酵素に関する研究
IV Streptococcus mutans AL7-1株による溶菌酵素産生のためのchemically defined mediumの調製
馬場 久衛鎌口 有秀
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1984 年 26 巻 3 号 p. 686-697

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抄録

幼児の歯垢より分離したStr.mtans AL 7-1株の産生する溶菌酵素の精製を容易にするため, 既知成分によって構成されるchemically defined mediumを作製し, これによる溶菌酵素の産生性を検討した。その結果, 本菌株の発育においても他のStr.mutms株と同様にL-システムならびにビタミン類が必須であり, また, 本菌株では特に炭酸ナトリウムの添加を必要とした。これらの結果を基礎として考案した21種のアミノ酸, グルコース, ビタミン類および数種の無機塩類を含有させた完全なchemi cally defined mediumにおいても, 本菌株は溶菌酵素を産生することが確認された。また, 本mediumにおいて溶菌酵素活性量はグルコースの増量に伴って増加するが, 菌の増殖に伴って産生される酸のために酵素が次第に不安定となることがわかった。そこで, 特に産生される酵素の活性量とその安定性とに関係する因子について, その最適組合わせを直交実験によって検討した結果, グルコースを0.5%, リン酸塩を0.08モルの濃度に添加し, initial pHを7.0に調整した培地で, 6時間培養したときに最も高い酵素活性量が得られることがわかった。さらに, 本mediumで得られた酵素をSephadex G75を用いて分画したものは, 従来のorganic mediumを用いて得られたものに比較して, 培地成分の混入はなく, 蛋白質量で1.9倍, 活性で10倍高いことが判明した。

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