抄録
ネコの咬筋神経, 顎関節, 歯根膜を電気刺激することにより, 誘発される大脳皮質表面および深部電位を記録し, 三叉神経系固有感覚入力の大脳皮質投射部位 (層) の検索を行なった。咬筋神経刺激により, 大脳皮質表面で記録される誘発反応は, 大きな陽性波 (P) と, それに引きつづく陰性波 (N) より成り, これらは, 冠状回前方部および後部, そして外側S状回前方部で記録された。これに対し, 冠状回中央部では,(N) のみから成る誘発反応が記録された。歯根膜刺激の場合には, PNより成る大きな誘発反応は, 冠状回前方部で, 顎関節刺激の場合には, 冠状回後部でそれぞれ記録された。咬筋神経刺激による最大深部陰性波は, 冠状回前方部および外側S状回前方部において, 皮質表面から2.0~2.5mm深部で, 冠状回中央部では4.0~4.5mm深部, 冠状回後部では0.5~1.0mm深部で記録された。一方, 歯根膜刺激による最大深部陰性波は, 冠状回前方部および外側S状回前方部では, 深さ1.0~1, 5mm, 冠状回中央部では, 2.0~2.5mm, 冠状回後部では0.3~0.5mm深部で記録された。組織学的研究により, 咬筋および歯根膜入力の皮質内投射部位は, 冠状回前方部から中央部および外側S状回前方部においては, 3a野のIV~V層, 6aβ 野のV層に, 顎関節入力は, 3a野のIV~V層に, また, すべての固有感覚入力は, 冠状回後部においては, 3b野のII~III層に投射していることが判明した。