29 巻 (1987) 4 号 p. 438-469
ラットにストロンチウムを経口投与し, 切歯の形成期エナメル質の石灰化進行像の変化を観察した。体重約100gのラットにSrCl2水溶液 (1.25%, 2%, 3%) を3~35日間飲ませ, 屠殺4時間前にテトラサイクリンを注射した。上顎切歯の縦断研磨片からマイクロラジオグラムと螢光顕微鏡法によるテトラサイクリンラベリング像を得, 一部の試料をエレクトロンマイクロプルーブで分析した。 (1) 石灰化度上昇の勾配は基質形成期と成熟期で, また後者では層によって異なる。 (2) 本実験条件では変化は主に成熟期に現われ, 外層, 中層での石灰化度上昇が抑制される。それに対し, 内層でのそれは正常に近く進行する。 (3) テトラサイクリンによるラベリングは, 最内層と内層では正常動物より基底側で, 中層では切端側で消失するが, 外層では低石灰化のままほとんど正常動物と同じ位置で消失する。 (4) 鉄の沈着は正常ではごく幅狭い最表層に限られるが, 実験動物では低石灰化に伴い深層にまで及ぶ。