歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
ニホンザル (Macaca fuscata fuscata) のA. malarisについて
大塚 拓三
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1988 年 30 巻 4 号 p. 431-442

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抄録

ニホンザル30頭を用い, acryl樹脂脈管注入法によりA. malarisについて詳細に観察し, 他の哺乳動物のA. malarisと比較解剖学的考察を加えた。
ニホンザルの眼窩下動脈は通常2~4本に分岐し, それぞれ眼窩下溝を前走して, 眼窩下管に入っていた。本動脈のうち最内側のものは同名管に入る直前でA. malarisを派出するが, ときに, この経過中に眼動脈の下筋枝の枝と吻合していた。
A. malarisは上内側方やや後方へ上顎骨眼窩面を進み, 眼窩下神経枝, 眼窩下縁枝, 骨膜枝を派出し, 下斜筋起始の前に達し, 下鼻涙管枝と下斜筋枝を派出し, 涙骨上顎縫合にある小孔から上鼻涙管枝として骨中に入っていた。まれに本動脈は涙嚢枝を派出し, またこの枝が眼動脈の内側眼瞼動脈の同名枝と吻合するものを認めた。下鼻涙管枝は上顎骨体と上顎洞に枝を与え, 鼻涙管の外側をこれに沿って下走して鼻涙管動脈の下部を構成していた。上鼻涙管枝は内側方へ走り, 鼻涙管の外側を上走し, 鼻涙管動脈の上部を構成していた。
結論として, ニホンザルにおいてもA. malarisの存在を確認したが, 他の動物と異なり, 本動脈の主流は鼻涙管動脈を構成して終るといえる。

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