歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
ラットの咀嚼と脳発達に関する組織学的, 行動学的研究
藤原 秀樹
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1990 年 32 巻 5 号 p. 495-508

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抄録

離乳後の幼若動物にとって咀嚼は口腔からの求心性刺激を豊富にもたらし脳発育を促進することが知られている。しかし, 咀嚼により脳発育が促進されるという組織学的証明はなされていない。さらに脳の生後発育に及ぼす咀嚼の影響に関する研究報告も少ない。本研究では, これらの点を明らかにするために, 一側の歯牙を2週齢目に摘出した片側咀嚼ラットを用いて, 咀嚼による脳発育の左右差を組織学的に検索し, さらに固形食群と粉末食群飼育ラットの迷路学習の成績を比較検討したものである。組織学的研究において, 4週齢片側咀嚼ラットの大脳の細胞分布密度に明らかな左右差が認められた。迷路学習においては, 4週齢ラットでは, 有意な差は認められなかったが, 8週齢ラットでは, 固形食群の方が優れていることがわかった。以上の結果から, 咀嚼に随伴する刺激が減少すると, 脳発育が遅延することが明らかとなり, 咀嚼の重要性が確認された。

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