2003 年 45 巻 1 号 p. 8-15
ストレプトゾトシンによって引き起こされる糖尿病モデルマウスは, 機械的刺激に対して, 対照群より低い閾値で反応を示すことが証明された. 一方, 熱刺激に対しては, 両群に差は認められなかった. 選択的P/Q型電位依存性カルシウムチャネル拮抗薬のω-アガトキシン (0.33-10pmol/マウス) を脊髄クモ膜下腔内投与すると, 機械的刺激による疼痛過敏が濃度依存的に抑制された. また, その抑制効果は特に低濃度において, 対照群よりも罹患群でより顕著に認められた. 選択的N型カルシウム拮抗薬のω-コノトキシン (0.33-10pmol/マゥス), および選択的L型カルシウム拮抗薬のカルシセプチン (1-10pmol/マウス) の罹患群における抑制効果は, 対照群と比べて有意に増加しなかった. モルヒネの鎮痛効果は, 罹患群と対照群との間に差異はみられなかった. これらの結果から, 脊髄レベルでの機械的刺激に対する知覚情報伝達において, 糖尿病マウスでは, P/Q型チャネルの役割に特異的な変化が起こっている可能性が示唆された.