日本視能訓練士協会誌
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シンポジウム II
「乳児内斜視をもっと知ろう!」
乳児内斜視の眼位変化
中川 真紀
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2009 年 38 巻 p. 107-114

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抄録

目的:乳児内斜視のうち、何らかの理由で手術を行わずに長期経過を観察できた症例の検討を行い、それらの経過および特徴を明らかにする。
方法:対象は1985年1月から2003年12月までの18年間に帝京大学病院眼科を受診した乳児内斜視のうち、手術を行わず4年以上眼位の自然経過を観察できた152例である。眼位の推移、交代性上斜位(以下、DVDと略す)および弱視の有無、屈折、両眼視機能ついて検討を行った。
結果:152例中117例(77.0%)で斜視角の減少がみられ、最終眼位は内斜視が81例(53.3%)(以下、内斜視群)、±5°未満が53例(34.9%)(以下、正位群)、外斜視が18例(11.8%)(以下、外斜視群)だった。初診時斜視角は外斜視群が内斜視群、正位群に比べて有意に小さかった(p<0.05, p<0.01)。斜視の特徴としては、DVDの合併が外斜視群、正位群が内斜視群に比べて有意に少なかった(p<0.01, p<0.05)。網膜正常対応は外斜視群、正位群、内斜視群の順に多く有意差があった。弱視の合併および眼位の動揺は各群間に有意差がなかった。屈折は+10.0Dから-8.25D(平均+2.42±2.30D)に分布し、+3.0D以上の遠視は152例中48例(31.6%)にみられた。
結論:今回の検討結果から、眼位の動揺がない、大角度の乳児内斜視に対しては積極的に手術を行ってよいと思われる。しかし、斜視角が比較的小さく、眼位に動揺がみられる場合はある程度経過を観察し、手術は慎重に検討すべきと考えられた。

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© 2009 日本視能訓練士協会
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