日本視能訓練士協会誌
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一般講演
特発性黄斑前膜に対する検者の介入による視力の向上
花田 有里子前田 史篤春石 和子渡邊 一郎桐生 純一
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2012 年 41 巻 p. 171-176

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抄録

【目的】視力検査の際、“わからない”と答えた被検者に対して、検者が介入して回答を促すと、正答が続き視力の向上をみることがしばしばある。我々は黄斑前膜に対し、検者の介入による視力の向上について検討した。
【対象及び方法】対象は黄斑前膜39例(73.3±8.1歳)で、眼内レンズ挿入眼11例(75.6±9.6歳)を対照とした。黄斑前膜は土橋らの報告に基づき、面癒着型中心窩陥凹存在(11例)、面癒着型中心窩陥凹消失(10例)、面癒着型偽黄斑円孔(7例)、架橋型(11例)に分類した。
 被検者には視力測定前に他覚的あるいは前回の屈折値をもとに完全屈折矯正を行い、Landolt環の切れ目の方向を回答させ、3/5の基準をもって視力を判定した(介入前視力)。次いで、Landolt環の切れ目が明確でなくとも回答するよう答えを促し、得られた視力を介入後視力とした。分析では、左右各眼の内、先に測定した眼を対象とした。
【結果】介入前後の視力向上の平均値±標準偏差は、眼内レンズ挿入眼で0.04±0.06 logであった。黄斑前膜全体では0.10±0.08 log、分類別では面癒着型中心窩陥凹存在0.07±0.06 log、面癒着型中心窩陥凹消失0.14±0.11 log、面癒着型偽黄斑円孔0.12±0.07 log、架橋型0.07±0.07 logであり、面癒着型の中心窩陥凹消失と偽黄斑円孔で大きかった。
【結論】黄斑前膜がある被検者の視機能を最大限に引き出すためには、検者の適切な介入が必要であると思われる。

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© 2012 日本視能訓練士協会
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