2014 年 43 巻 p. 173-179
【目的】重症筋無力症(以下MG)の発症年齢は、一般的に小児や20~50歳代に多いと言われている。我々は高齢発症のMGを数例経験し、1例は他院にて両眼眼瞼下垂の手術既往があった。今回、過去10年間に経験したMG8例について臨床的特徴を検討したので報告する。
【対象と方法】対象は2003~2013年に当院を受診しMGと診断された8例である。それらに対し、年齢、主訴、瞼裂幅測定、上方注視負荷試験、眼位・眼球運動検査、抗アセチルコリンレセプター抗体(以下抗AChR抗体)の結果を調べた。
【結果】男女比は1:1、受診時年齢は36歳~87歳で、30歳代1例、50歳代1例、60歳代1例、70歳代3例、80歳代2例だった(平均68.5歳)。受診時の主訴は、「瞼が下がっている」が最も多く6例、「二重に見える」3例、「見えにくい」2例、「遠近感がない」1例等があり、症状は7例で突発性だった。全例に左右非対称の眼瞼下垂を認めた。眼球運動障害は4例に認め、障害筋は上直筋3例、下斜筋4例、外直筋1例、偏位量は5~25⊿だった。確定診断は抗AchR抗体陽性7例、残り1例は内科にて診断された。
【結論】当院におけるMGの発症年齢は、60歳以上の高齢者が75%を占めた。眼症状の発現は突発性で、眼瞼下垂の程度は軽度で左右非対称であった。眼球運動障害を半数に認め、偏位量の変動を認めた。日本でも近年高齢発症が増加している現状と一致しており、高齢者の眼瞼下垂で症状が突発性かつ複視を訴える症例では、MGも念頭に入れておく必要がある。