2016 年 45 巻 p. 79-86
【目的】注意欠如多動性障害(ADHD)児において、眼球運動および眼球運動発達検査(DEM)を測定し、読字に与える視覚的注意の影響を検討した。
【方法】対象はADHD児6例(6-7歳)、対照は健常児10名(6-7歳)であった。眼球運動の記録はEye Mark Recorder-9®(nac社)を用い、眼球運動のパターン、視標提示時の最大固視時間、saccade回数を求めた。読字に用いたDEMの数字配列は、テストAとBが等間隔、テストCが不等間隔であった。評価は、読字時間とエラー(読み飛ばし、読み加え)数を記録した後、各テスト表の80字あたりの読字時間(調整読字時間)を算出しDEM比率を求めた。
【結果】saccadeのパターンは両群にundershootをみとめた。最大固視時間はADHD群で短縮し、saccade回数はADHD群で有意に多かった(p < 0.01)。テストCの調整読字時間はADHD群で有意に延長した(p < 0.05)。エラーは、ADHD群で行の途中に起こす場合が有意に多かった(p < 0.05)。DEM比率は両群に有意差がなかった。
【結論】ADHD児はsaccadeの抑制に必要な固視時間が短く、視覚的注意の持続が困難となり、DEMテストCで調整読字時間が延長した。saccadeにおける固視時間とDEMテストCの調整読字時間を測定することはADHDのスクリーニングに有用と考えた。