日本視能訓練士協会誌
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一般講演
大きな中心暗点の症例に対するロービジョン訓練の試み
稲泉 令巳子山田 信也戸成 匡宏米澤 昴中村 桂子濵村 美恵子清水 みはる筒井 亜由美南 稔浩阿部 史絵真野 清佳松清 加奈菅澤 淳池田 恒彦
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2016 年 45 巻 p. 135-142

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抄録

【目的】大きな中心暗点を有するロービジョン患者にとって、周辺に残された視野の活用は非常に難しい。今回、偏心視の訓練と色の判別の工夫で、QOLを高めることができた症例を経験したので報告する。

【症例】27歳男性。錐体杆体ジストロフィーで身体障害者手帳2級を取得。RV=20cm 指数弁(矯正不能)、LV=(0.01)。視野は、両眼とも30~50度の中心暗点。

【方法】ロービジョン外来にて、有効視野の理解と偏心視獲得のための眼球運動訓練を指導し、家庭訓練を行った。同時に本人にあったオリジナルの色カードを作成し、誤認しやすい色を判別する方法を指導した。初診時より2ヵ月ごとに約15ヶ月間ロービジョン外来を受診し、訓練効果の確認と指導を行った。

【結果】訓練前は右眼の耳側視野のみを用いて見ていたが、患者本人が視野を理解し、意欲的に訓練することで、十分活用できていなかった視野を意識化し、左眼の耳側視野も使えるようになった。右眼から左眼への固視交代もスムーズにできるようになり、拡大読書器を用いての読み効率がよくなった。また、錐体の障害のため、色の判別は難しいが、配列を工夫した色カードを作成することにより、誤認しやすかった色も判別しやすくなった。

【結論】重篤な症例であっても、有効視野の意識化と偏心視訓練、色カードによる訓練などにより、視覚を用いた日常生活の改善の可能性が示唆された。

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© 2016 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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